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雨は嫌い。

ちいさい頃
大好きな人を初めて失ったあの日
大粒の雨が私を濡らしたから。



肩に打ちつける雨音は叫び
窓を伝う雨の雫は涙になる



とっても、とっても大好きだったのに
何故いなくなってしまったの?


幼い心はそれを雨の所為にした。


――この雨が、連れて行ってしまったの。




あの日から降り続く。

時には心を凍らせるように冷たく
時にはあざ笑うかのように激しく

何度も何度もまるで襲いかかるように、
残酷な雨。



全身を打たれ、びしょ濡れのままで歩き続けた。

これが自らの運命なのだと
雨宿りさえせずに諦めようとしていた。



…そんな時、

少し離れた場所から
差し掛けられている傘に
ふと気が付いた。



「もしも、あの中に飛び込めたなら。」
迷いと希望に揺れた。


だけど。

この傘さえも無くしたら
もう、立ち上がる事さえきっと出来ない。


恐怖に怯え、逃げだし、傘に背を向けて
また降りしきる雨に身を沈める。



けれど、
雨音に混じって
遠くから優しい響きが背中を叩いた。



呼んでいるの?



耳を済ましてみる。

雨音が邪魔をする。

…聞こえない…!



思わず降り返ると

雨雲の隙間から眩しい一筋の光が
傘を照らして囁いていた。



「止まない雨は無いんですよ」








雨は嫌いだなんて
もう、呟かない。



この傘の中で。
あなたと一緒なら。






<アトガキ>
「残酷で冷たい雨」になってしまいましたが…
機会があれば「優しい雨」なお話も考えたいですねv

2003.05.30  Writting by, yu-ka W's Cafe


背景素材こちらからお借りしました

<感想>
佐藤さんの…悲しい雨……きっと、辿り付くのは高木君の傍らへ……ですね!

お題提出者なので、遠慮なく頂いて来ましたv
素敵な詩を頂いて、もう、感謝感激雨あられ(?)です。
「雨」のお題にして良かった(るんっ♪)

2003.7.16 石礫