クリスマスの奇跡・12 
 
 
「なんだよ、その包み」
「私・・・・実はね、せっかくのクリスマスだから、一応、ちょっとしたプレゼントを・・・・」
 次に俺が言った言葉はもはや反射的なもの…パブロフの犬のようなものになってしまった。
「え、まさか俺にか?」
 すると相原は恥ずかしそうに俺のことを上目遣いで見ながらうなずくと、すぐにうつむいてしまった。
 しかしうつむいたままでも相原は答えた。
「うん・・・・そうだよ。私、壁とか空気に話す趣味なんて、ないもん」
「そりゃそうだ。とりあえずありがとうな。開けてもいいか?」
 俺は相原にその確認を取ると、手渡されたその包みを丁寧に取り除いた。
 そして箱のふたを開けた時、そこには手の形に黄色い毛糸で何一つ狂いもなく丁寧に編まれているものが二つ、重ねられて入っていた。
「どう?手袋、作ってみたの」
 相原がそう言ううちにも、俺はそのうちの一つを手に取り、性格に似合わず素直にうまいと思っていた。既製品と言ってもわからないくらい完璧に見える。
「へー、よくできてるな」
 そして、もしかしたら相原はこれを渡したいがために持ってきたんでは、というような想像が勝手に俺の中で流れはじめていた。
 そうだとしたら、これはなんて幸せなことだろう。俺のために頑張ってくれていたかと思うと、余計に相原のことが気になって仕方なくなりそうだ。
 しかし相原の答えは案の定、それとはまったく逆のことだった。しかも俺の想像の世界が顔に出てしまっていたのか、またも俺の考えを見破ってだ。
「あ、あのね河内君、勘違いしないでよ。ちょっと勉強中だからついでに作ってみただけだからね!」
 とてもその言い方が相原らしいだけに、悲しいことだが俺は今の言葉に間違いはないと信じ込んでいた。
「ついでか・・・・ま、そんなもんだよな」
 もうほとんどあきらめながら俺はうなだれてそう言ったのだった。
 だがまだこの期に及んで相原は言葉を付け加えてくる。
「えっ、それだけ・・・・?」
 しかし俺はそれを聞き流そうとしていた。
「ん?俺、何か悪いこと言ったか?」
「う、ううん。何も・・・・あ、そうだそうだ、ちょっとはめてみてよ!」
 なんだかごまかされているような気がするけど、俺は相原の言われるがままに、その黄色い手袋をはめていた。
 そして俺はとんでもない、奇跡にも近いようなことに気付いた。
 なにせその手袋のサイズがまるで計っていたかのようにピッタリもピッタリ、寸分の狂いもないくらいにちょうどいい大きさになっていたのだ。
「よかった、間違ってなかったみたい。きっとあの時のサイズ合わせがうまく・・・・あっ!」
 そして相原はそう言いかけると、余計なことを話してしまったというような感じに、口を両手で覆ってしまった。
 俺もそういうことをされて気にならないわけがなく、突っ込んで聞いてみる事にした。
「おい、どうしたんだよ?今、相原何か変なこと言ってたか?」
 言い終わる前から相原の口からははすでに、否定の意見が飛び出していた。
「な、なんでもない!」
「いや、でも『あの時』って・・・・」
「ほ、本当になんでもないってばっ!もー、これじゃ終業式の時の立場と逆じゃない!情けないなぁ・・・・ああっ!」
 すると相原はまた口を押さえた。一人で勝手に動揺しているようだが、俺もいい加減その態度が不審に思えてきた。
 きっとサイズ合わせがうまく・・・・そして終業式の話の時に相原は口を押さえている。そして、ついでに作ってみただけという手袋・・・・
 何か思い当たる節はないか、考えられることはないか、そう思っていた。
 俺はここ数日のことをさかのぼってみた。
 そして終業式の日の出来事で、俺は一つひらめいたことがあった。
 そう、相原と二人で話していた時に・・・・

『それにしても河内君、すごく顔冷たかったよ。手なんかもっと冷たいんじゃなーい?』
『お、おい!なにすんだよ!』
『河内君の手って、実は小さかったんだね。ほら、私と同じくらい』
『大きなお世話だ!』

 そうだよ、相原はその時急に、俺の手のことを調べていたんじゃないか。
 そうか、ならば相原の行動にも説明がつく。
 そうでなかったらわざわざ、一つ一つの言葉に動揺などしないはずだ。素直にその時に計ったんだって、相原なら言えるはずだから。