クリスマスの奇跡・8 
 
 
 まとめたはいいが、その言葉の意味があまりにも重すぎる。
 何だ、彼女は今、なんて言ったんだ?確か俺の彼女だって・・・・か、彼女!?という具合に、俺は今の今まで聞き覚えのない言葉にただ戸惑うしかなかった。
 いや、戸惑うどころの問題ではない。気がおかしくなりそうだ。
 しかもその影響は俺だけでなく、秋野にも大きな衝撃を与えていたようだ。立ち止まってほんのわずかも動く気配を見せない。
 そして、それを言った相原自身も。寒さからくるものよりも赤く、顔が染まり始めている。まるで血液が肌の皮一枚隔てて浮き出てきたかのようだ。
 しばらく三人して時が止まったかのような感覚を覚えたところで、再び時間を動かしたのは秋野からだった。
 秋野はぼうぜんとしながらも俺の肩を痛いくらいに強く何度にもわたってたたいた。
「・・・・や、やっぱりそうだったのか!お前もついにやったのか!」
 自分の歴史の中での今世紀最大の誤解に、俺は反論するまでに時間を要した。
「お、おい!秋野!」
 しかし秋野は相原の言葉があまりにも強烈すぎてか他のことが耳に入っていないらしい。
「いいよなぁ、こんなかわいい彼女に待っててもらって」
 さらには両手を大きく広げて自分の世界へ。確かに、俺もこんな場所でなければ即座に壊れていたかもしれない。
 でも、だからといってこのまま秋野の暴走を放っておくわけにもいかない。この後のバイトの引き継ぎもあることだし、最低でも運営ができる状態に戻ってもらわなければ。
「だからなぁ、俺は相原を彼女とは・・・・」
「わー、私、かわいいって言われたよ!」
 相原は、相変わらずマイペースで自分の道をひたすら進んでいる。この騒動の原因は、まだ俺を困らせるつもりでいるらしい。
 ただ、一つわかったことがある。相原と秋野に共通することが、時に人の話をそっちのけにすることだ。今でも俺が何か言ってもまったく聞いちゃいない。
 それで顔に血がのぼっていくのを、こんな時に限って正気に戻った秋野がこれまた妙に勘違いしてくるから嫌になる。
「おいおい、照れるなって。うん、けっこうお似合いだと俺は思うぜ」
 こいつめ・・・・いつも人の意見には否定的なのにこういう時だけ乗せようとしやがって。
「お前なあ、そうやって人をからかうのを面白がるなよな」
「そんなこと言っちゃって・・・・本当はうれしいんだろ?え?」
 秋野、ついにオヤジ化。ここまでくると俺ももう手がつけられない。
 早くバイトを上がりたい俺は、仕方なくこう言った。
「ああ、ああ、わかったよ。そうしといてくれよ。だからもういいだろ。俺はもう帰るぞ。じゃあな、後は頼むぞ」
「おう、まかしとけ。バイト仲間が今から幸せをつくろうとしてるんだ、協力しないわけにはいかないさ」
 くっ、ここは何を言われてもじっと我慢だ。自分の時間のために。
 俺は今までつけていたエプロン(実はこのコンビニ、私服の上にエプロン着用という手抜きさ)を取り外し、レジから出て、これ以上いろいろ言われないためにも速攻で自動ドアをくぐった。
「あーっ、待ってよー!」
 俺の後ろから相原の靴の音が、追ってくるようについてくる。
 こうして俺はようやく、コンビニを後にすることができたのだった。