クリスマスの奇跡・5
「とにかく・・・・さ、来てくれてうれしいよ」
「えっ、ほ、本当?」
「ああ、誰もいないからさ。ちょうど話し相手がほしかったんだ」
そして心の中とは別のことを言ってしまう。もしかしたら素直になれないのは俺の方なのかもしれない。
さらに、相原の返事が余計に俺を混乱させる。
「なーんだ・・・・」
相原はそう言って俺に背を向ける。
もしかしてのことを期待しつつ、俺はその言葉の意味を追求することにした。
「なーんだ・・・・って、なんだよ。他にどのような意味があるって言うんだ?」
いったん、会話が止まった。そんなに答えにくいということは、まさか…!
と思った時に、彼女は俺の方に振り向いてすぐに答えた。
「あんまり・・・・ないかな」
自分で仕掛けておきながらそんなことを言われると、俺も同意するしかない。
「そ、そうだろ?」
「う、うん・・・・」
無理をしている自分が、ここにいる。けれどそれを治すことのできないもどかしさ。
そんな自分がとても情けなく思えてきた。
なにせ俺はこの話題から遠ざけるがために、違う方向に話を進めてしまったのだから。
俺はレジに立ち、こう言った。
「さてと相原、何かいるか?ここはコンビニだからな、来たからには頼んでもらうぞ」
ここで俺は頭から危うく忘れかけていたバイトの店員となり、相原は客となった。
相原は軽く口元をほほえませたように、俺には見えた。
「もう・・・・河内君って、サービス業に向きすぎーっ。わかった、じゃあ今日は寒いから、あんまん一つ!ちょうだいっ」
ほめられてるんだか皮肉を言われているんだか、微妙にわからないので何も言えないのが一本取られたようで悔しい。
「わかった、あんまん一つだな」
相原にはかなわないな、と思いつつ俺は、レジの横になぜか一年中絶えずに置いてある、ガラスでできていて中が見えるようになっている保温ボックスの取っ手を引いた。
おっと、素手ではさすがに熱すぎる。挟むやつ挟むやつ・・・・と俺が探し始めた時、黙っているのが落ち着かないのか、相原はカウンターに両肘をついて話し掛けてきた。
「ねぇ、バイト、いつ終わるの?」
突然の質問に、俺はやっと見つけたはさみを落としそうになってしまった。
だって、やっぱり終わる時間を聞かれるのは、男としてはそれなりの期待はあるというもので・・・・うぬぼれすぎかもしれないけど。
「な、なんでそんなこと聞くんだよ」
「だ、だって・・・・どうせバイトが終わっても一人ぽっちなんでしょ?だから・・・・その、かわいそうな河内君と一緒にいてあげようかなーって、優しい私は思ったの」
俺の期待は、大はずれだった。ある意味合ってはいるが、これじゃ単に同情されているとしか思えない。実際にやっては下心が見え隠れしそうでまずいので、俺は自分の世界の中でだけがっくり頭を落とし、現実世界ではこんな言葉を発していた。
「なーに言ってるんだよ。別に頼みもしていないのに・・・・」
そうだよな、同情されるよりは一緒にいない方がまだマシさ。
しかしいつも一枚上手をいく相原は、俺を軽々と乗せてしまうことになる。
「あっ、そう。じゃあいい。一人で寂しく過ごしていれば?単なるお客の私はあんまん買って帰りまーす。じゃあねーっ!」
なんとそのまま帰ってしまう素振り。本当に実行されてしまうようで恐ろしくなった俺は、引き止めることしか選ぶ余地がなかった。