クリスマスの奇跡・1 
 
 
 クリスマス・・・・これを聞いて、真っ先に思い浮かぶのは何だろうか。
 本来、クリスマスというのはイエス・キリストの誕生の日。そこから西暦は始まり、人々はそれに従って年を数える。
 とは言っても仏教のはずである日本では、なぜかクリスマスをさもお祝い事のように人をにぎわす。これに、どういう意味があろうか。
 しかし、俺はそれも悪くはないと思うことがある。
 人として生きていれば、たとえ宗教の違いがあろうと、神様はいつでも見守ってくれるはずなのだから。
 そう、あの出来事もクリスマス・イブの時に・・・・
 
 俺、河内武史はとあるどこにでもある普通の公立の高校に通い続けてまもなく一年。そう、好奇心豊かなはずの高校一年生なのだ。
 しかしどうも自分にとって興味の沸くものがなく、結局はいつもただ机に向かって教科書を広げているだけの毎日に過ぎない。
 そして、何もしないうちにも時は光のように一瞬にして過ぎていく。気付いてみれば、すでに高校に入って二度目の終業式がとり行われようとしているところだった。
 その中、俺のような悩みを持たないこのクラスのメンバーたちは、呑気なことに冬休みの予定などを話し合っている。
 それに比べて俺は、それさえも見つけられずにいる。さらに冬休み中何もしないというのも辛いがために最後に選んだ答えはコンビニのバイトだった。
 ああ、自分で選んでおきながら、今となってはとても気が重い。おとなしく家で休んでいた方がよかったかと、少し後悔。
 そこに、どうしても俺には雑音にしか聞こえないところをかきわけるようにはっきりと響く男の声があった。
「はいはい、みんな静かに。出席を取るぞ。相原さん・・・・」
 おっと、どうやら自分の世界に入っているうちに担任が来ていたようだ。教室に入るなりすでに出席を取り始めている。
 そうだな、先生でも三十一歳にして独身なんだから(皮肉)これからでも自分のやりたいこと見つけられるよ、たぶん。と、俺はそんな先生を見て思っていた。
 おおっ、一度そう思うと誰にも止めさせないような、経験したことのない未知の力が沸いてくるような気がする。
 病は気から、それに似たように落ち込んでばかりじゃ進むものも進まない。もっとポジティブにいけば自分を変えることくらい簡単なことだ。
 そう考えてみると、なんだか未来が見えてきたような気がしてくる。よし、この勢いそのままに、それじゃはりきって・・・・!
 とそこへ、一人で盛り上がっているのを邪魔するかのように、誰かが俺を呼んでいた。
「河内君、河内武史君!」
 せっかく人が気持ちよくなってる時に誰だよ、と思ったが、その人物とは先生だった。そうだよな、まだ出席取ってるんだもんな。
 気付くと、回りの視線が俺一点に集中していることがわかった。まさか俺、クラスの全員に妄想の世界に入っているところを見られていたのか?だとしたらこれはすごく恥ずかしいことではないか。
 ひそかに笑い声が聞こえる中で、俺は適当に返事をすると同時に、俺は急にやる気がしぼんできた。おそらく一気に現実に戻されたからだと思う。いざ冷静に自分の状況を考えてみた時、そこまで挽回させるのは無理な話だと体のどこかで悟ったのかもしれない。
 そうさそうさ、どうせ俺は頭の中でいいように発展させるだけで何一つうまくなんていってはいないさ。なんて今度はネガティブなことを考えてしまった。
 でも、これから冬の長い休みを過ごすにあたって、本当にバイトだけで終わらせていいのかと思うことはある。
 例えばクリスマスに備えて誰か女の子を誘っておくとか・・・・いや、やっぱり無理だな。俺にそういうことをする勇気などあるわけがない。
 だいたい、その日は夕方五時半までバイトだ。会える時間などたかが知れてる。
 そして最後に当たるのはやはり『暇』という文字だけだ。悲しくなってくる。
 俺が友達の少なさを実感したその頃、出席はすでに終わりかけていた。
「渡辺君・・・・よし、全員出席、と。今日は終業式だから十五分後に体育館に集合のこと。遅れるなよ!じゃあホームルームを終わらせます」
 いつも係として号令をしているおなじみの人の声がかかると、もともと好き勝手にやっていた四十人はさらなる進化を遂げ、イスを引きずる音と共に、もはや手のつけようのない無法地帯と化してきた。
 この一年間、そういう俺たちを見てきた担任はすでにもうあきらめて黙って教室を出ていってしまうし、それが余計に悪循環を起こす。
 特にこの季節は寒いので、窓は閉め切り状態。ストーブをたいているということも手伝って二酸化炭素が充満してきたのだろう、俺は頭が痛くなりながらも、ため息をつきながら席にただ座っていた。
 そんな俺に声をかけてきたのは、あの子だった。