Under20,Over20 もう1つのepilogue
「な、なんだよそれ!マジかよ!」
「なんだよも何もない。本気も本気だ」
あの思い出のクリスマスイブから3ヶ月。
冬も完全に過ぎ去った、ありとあらゆる芽生えを身をもって感じる季節。
今日もいい陽気で、おれは晴れ晴れとした気分で、直樹と学校に向かっている。
…と、そんな時に聞かされた、またも直樹が言い出した衝撃の言葉だった。
「おまえ、くるみのこと好きじゃなかったのかよ!」
そうなのだ。もはや忘れかけていたその出来事、直樹がくるみを好きだったというのは、まったくのウソだと言い放ったのだ。
聞けば直樹は、くるみがおれに好意を持っていた事は前々から知っていたようで、おれを揺さぶるためにあえてウソを言ったのだという。
そうか、どうりで直樹がくるみのことを好きだと言った時、風中のことを執拗に聞いてきたんだな。
「それにな、くるみちゃんの方から言ってきたんだ。おれがくるみちゃんに修一のことが好きなんだろ、って言ったことがあったんだけどな、それでひらめいたらしい。おれの誘いを断ったことにしてくれ…ってな。まったく、『お兄ちゃんを意識させたい』なんて、うらやましいぞ、おい」
直樹はそう言いながら、おれのわき腹を肘でつつく。
ということはあの日、さらにくるみにはしてやられていたことになる。
結局、鈍感だったおれの負けなのかもしれない。…何に負けたのかはしらないけど。
「おはよう、空下君、永野君」
そして、いつかにも聞いたその言葉。
「おはよう…風中」
「もう桜の咲く季節だね」
「ああ、そうだな」
「ところでくるみちゃんは?」
「朝早くに用事があって先に行ってる」
「ふふふ…仲良くしてる?」
「まったく…からかうなよ」
あのクリスマスの日の後、風中から話を聞いた時、おれは驚いたものだ。
くるみに嫉妬して、桜の木の下で冷たい態度を取ってしまったこと…
今ではいい思い出になりつつある。
その証拠に、風中とは今では本当に自然に話ができるようになった。
顔を見るだけでおじけづいていたあの頃とは、大違いだ。
そういうところが、20歳になって成長したところかもしれない。
そう、おれは20歳になるという悩みの答えを、他にも大きく1つ、見出したのだ。
それは…
「あ…」
と、突然学校に近づいた頃、風中が何かに気づいたような声を出した。
「どうしたんだ、風中」
「永野君、私たちは先に行ってようよ」
「えっ、風中さん、なんで…って、ああ、そういうことか」
おれの言葉を無視され、2人して納得されてしまったら、当然面白くもなかった。
「なんなんだよ、直樹」
風中にはさすがに強くはあたれないので、直樹に問い詰めたのだが。
「あーあ、こいつがこの調子だと、先が思いやられるな」
「本当ね。それで私もけっこう大変な思いをしたんだから」
「そうだろうなあ」
またも2人で納得されてしまった。
「なんだよ、さっきから2人で言いたいこと言って…」
「じゃあ、先行ってようか」
わざとらしい大きな声、大きな身振りで、おれの話など2人とも聞かない構えらしい。
「おいコラ、待て…って!」
と言っている間に毎度のことながら、結局…いとも簡単に逃げられてしまった。
「まったく、なんなんだよ…」
学校の中の咲きかけの桜並木がおれをあざ笑っているように見えた時。
「そういうことか…」
おれは視線の先に、1人の人影を見つけた。
「あっ、お兄ちゃ…修一君!」
その人影が、おれのほうに振り向く。
それはまるで、風中と初めて出会ったあの入学式にも似て…
その子もやはり、上を見上げていた。
「くるみ…おはよう」
「うん、おはよっ!」
まだ違和感がある。
それは幼なじみから突然恋人へのステップアップをしてしまったことへのギャップ。
お互い、もう3ヶ月も経とうとしているのに、どこかぎこちなくなっている。
「桜、きれいだねっ!」
「あ、ああ…」
とは言うものの、やはりおれは瞬間、風中の言葉を思い出してしまう。
「なあ、くるみ。この桜の花びらってさ、咲いてもすぐに散っていってしまうだろ?それって、悲しいと思わないか?」
そんなおれの問いかけに、くるみは両手を広げ、大きく深呼吸をして答える。
「私はそうじゃないって思うなっ!たぶん、こんなきれいな桜を見せてもらっている私たちの中で生きてるんじゃないかって…きゃはは、な…なんだか恥ずかしいなっ!」
くるみの言葉に、うなずくおれがいた。
きっと、最初からくるみと一緒になるように、桜は見守ってくれていたんだなあ…と、今おれは思う。
そう、20歳になるという意味。
それは後ろばかりを向いていないで、前へ前へと進む最初の1歩なのだ。
この、また来年咲かせる桜のように…
一時でもいい、自分もこうして花咲く時が来るのなら…
少しでも、前を向いていこう。
決して、過去を後悔しないように。
それを、くるみは教えてくれた。
いつも明るいくるみは、ほら、こんなにも幸せそうじゃないか。
これから、もっとお互いを知ることで、さらに2人で幸せを分かち合いたい。
そして、その1歩はこれから…
「くるみ、20歳の誕生日おめでとう」
これから…どんな毎日が待っているのだろうか。
The end...
Written By mamoru