Under20,Over20 30
まわりの客が、店員が、外の美しい夜景までもが、一斉におれとくるみの方に視線を向けている感覚がしていた。
しかし、そんなことはもはや関係無かった。
「おまえは、直樹のことを考えてそんなことを言っているのか!?なんだよそれ、ひどいのにも程があるぞ!」
息苦しい。
でもこれはきっと、単に大声を張り上げたからという理由だけではないはずだ。
もっと理由はあるんだ。
だけど今はそんなことを考えていられる余地が無い。
これではあまりにも直樹がかわいそうで。
いや、むしろ今までおれが見てきたくるみはウソだったのか、というショックの方が大きいかもしれない。
いつだって笑顔を絶やさずに、誰とでも仲良くなれて、どこか子供っぽい行動は、実を言えばけっこうほほえましかったり…
そんなくるみを、いつも見てきたというのに…
すべて、ウソだったのか?
「だって…」
それでもくるみはおれから顔をそらさないままに言った。
「だって、いつものようにお兄ちゃんの誕生日に一緒にいたかったから…一緒にお祝いしたかったから…」
それからというもの、やっとのことで重苦しい雰囲気は取り除いたというのに、またもとの状態に逆戻りしてしまった。
もちろんおれがそもそもの原因だけれど。
このまま、黙って見過ごすわけには行かなかった。
心の奥のどこかで、直樹を手助けすることによる焦りも感じていた。
おれの想いが、暗闇の中をさまよっている。
ただ1つ、言えることは…
くるみを、意識していること。
「そろそろ…行こっか」
食事も終わり、くるみのその一言でおれらは席を立った。
「8500円になります」
というキャッシャーの異常なる金額の発言に、おれはしぶしぶとサイフを取り出そうとすると、
「私が、払うんだよっ!」
そう言いながら、くるみは10000円札を1枚、カウンターに置く。
おれはその時ふと、1週間前のことを思い出していた。
『いったいどこにそんな酔狂な雇い主がいるんだ?』
そう、くるみがバイトに行くということを知った、あの日…
間を置いて、くるみはこう言っていた。
『なんでもないよっ!バイト先もヒ・ミ・ツっ!』
あくまで、おれの予想に過ぎないが…
クリスマスイブでのこういう場所は、普通予約が取りにくいはずだ。
つまり、くるみは… 今日の分のお金を用意する傍ら、ここのレストランのコネを取るために、ここで働いていたのではないだろうか。
それなら、最高なはずの窓側の席を取れるのも…
バイトに行く時、あんなにも格好を整えていたのも…
すべて、説明がつく。
もはや、確信にも近かった。
おつりを受け取ったくるみは、おれに…
「展望台、行かない?」
そう、告げていた。