Under20,Over20 29
 
 
「あっ…シャンパン、飲もうよ!」
 おれがまだここにいるということを伝えるなり、くるみはテーブルの上に置かれた、500mlくらいのシャンパンを手に持つ。
「おまえはまだ未成年なんじゃないのか。厳密に言えばおれも一応まだ20歳じゃないんだけどな」
 おれが言うと、
「何言ってるの、お兄ちゃんっ!私見てたんだからね〜お兄ちゃんがお酒飲んでるとこ。確か、この前にもスキを狙って自分の部屋で飲んでたじゃない」
 くるみが恐ろしいことを口走り始めた。
「な、なんでそれを…!」
 なにせ飲んだのはただの3度きり…まあどちらにしてもいけないことなのだが、いずれもくるみのいない真夜中に飲んでいた記憶がある。まさか、そこを観察されていたとは…恐ろしい以外の何物でもない。
 まさか盗聴されているわけないよな…と思いつつ、家が隣同士ならば窓から見えるという可能性も忘れていたことに気づく。
 ところが、恐ろしいことはさらに続いた。
「きゃはは!やっぱり飲んでたんだぁ〜!」
 …直後のその言葉に、おれは開いた口がふさがらなかった。
「く、くるみ…っ!」
「というわけで私も飲んで、いいよねっ!」
 ダメだ、と言える立場ではなかった。
「はいはい、好きにしてくれ」
 しかし、そんなやりとりも今はなぜか心地いい。
 そういえば去年も、おととしも、その前も…こんな感じのクリスマスイブを過ごしてきた。
 いつもと同じこの日を迎えることを、少しは望んでいたのかもしれない。
 それこそ格好も、ロケーションも、まったく違うけれど。
 なんだかんだ言って、くるみと一緒にいるというのは重要なファクターだったんだな。
 ただ、やはりそれでも頭の片隅で気になっていることはある。
「そういや、くるみさ…」
「ん?なーに?」
 よっぽど慣れていないのだろう、ぎこちない手つきでナイフとフォークを動かしながら、くるみは目線をおれのほうに向ける。
「直樹は…なんかおまえに言ってなかったか?」
 そう、今日の朝におれが直樹にアドバイスした言葉。
『絶対誘うんだぞ、わかってるな?』
『ああ、わかってる。チャンスは今日までだからな』
 結局あの後、直樹はくるみに声をかけたのだろうか。
 最終的に『他言無用』という約束は破ってしまうことになるわけだが、もうここまできたら時効だろう。
 くるみが今までその話題を出さないことが不思議だったのだ。聞かずにはいられなかった。
 それとも、本当に直樹がくるみに声をかけていないのか。
 それはそれでこの際、直樹の想いはしっかりと告げなければならない気がする。
「断ったの…」
 おれがいろいろな思いをはりめぐらせている中、くるみはナイフとフォークをテーブルに置き、おれの方をまっすぐ向いて、静かに言った。
「永野君のこと…知ってるんでしょ?きゃはは、断っちゃった!」
「なんだよ、それ…」
 おれは、考えるまでも無く…
「そんな軽々しく言えることかよ!」
 頭の中の何かが、ゴムが切れたようにはじけていた。