Under20,Over20 28
日は完全に沈み、外はきっと相当寒くなっているのだろう。
しかしそんなことはおかまいなしに、やってきているのは駅ビルの暖かい部屋の中。
高いところから望む光の協和は、学校からの夜景とはまた違って、ダイヤどころか満天の星空をさらに密集させて散りばめているような輝きを放っている感じで、幻想的とも言えるほどきれいな光景だった。
そんな中に、窓側で空いている、たった2人きりの席は用意されていた。
特におれもくるみも話し出すことなく、目の前に色とりどりの料理が運ばれてくる。
ほかのテーブルを見回してみると、子供連れやらカップルやらでにぎわっていて、さしずめ高級なファミレスという印象を受けた。
ホテルの中の店だから、一瞬普段着ではマズイんじゃないのか?とためらったものの、この雰囲気には一安心。堅苦しいのはおれには似合わない。
と、今はそんなことをのんきに考えている場合ではない。重苦しい雰囲気はまだ残っているのだ。
「お兄ちゃん、あのね…」
「言わなくてもいい。だいたいわかってるつもりだから」
「ごめんなさい、お兄ちゃん…」
おれはいったい今、何をするべきなのか…まったくわからなくて、どうしてもくるみに冷たい言葉をかけてしまう。
そう、全てはくるみの仕組んだイベントだった。
おれが風中を好きだということまで利用して、こんなことをしたのだ。
つまり、さっきの風中の態度の理由は、今日のこの誘いなど最初から聞いたことがなかったからということになる。当然、おれの「お兄さんは?」という言葉に反応を示せないのも無理は無い。
頭のいい風中のことだ。おそらくくるみの考えを大まかにも理解したのだろう、くるみに話を合わせたのかもしれない。
何も風中は今日のことについて知らなかった。なのにおれの家の前に来たということは、もしかして…
「…行っちゃうの?お兄ちゃん…」
そんなおれの思いを察したのだろう、立ち上がろうとしたその瞬間に、その言葉で動きを止められた。
振り向いた先のくるみの顔に、おれは驚いた。今にも泣き出しそうな表情だったのだ。
いつも笑ってばかりで、いつしか見失っていたくるみなりの悲しみや辛さ…
それを今までの分、一気に見せつけられた感覚だった。
「きゃ…きゃはははっ!私って…サイテーだねっ!」
やはりおれの考えていることがわかっているのか、そんな表情も一瞬で消え、普段と同じような振る舞いをする。
それはさらに、胸をしめつけられる思いだった。
昔から、いつのころからなのか…くるみはずっと、こうしてどの誰にも心配をかけさせないようにと笑っているのかと思うと…
このまま放っておけるはずも、なかった。
仕方の無いことだった。
たとえこのまま時間が経ち、風中がさらに誤解をするとしても。
それでも、この場を離れるわけにはいかなかった。
それは、今までくるみのことをまったくわかってやれなかったことへの戒め。
仮にもくるみはおれの前で初めて、弱さを見せているのだ。
ただのイトコかもしれない。
言ってみれば、赤の他人かもしれない。
しかし今までの19年間、いつも共にいたくるみを、おれは今悲しませているのだ。
もしかしたら、かなり前から、ずっと…
完全にくるみの心の底を察することができているわけではない。だけど、おれは…
たった今、確実にくるみの気持ちを知ってしまったのだ。