Under20,Over20 27
 
 
「あ…こ、こんばんはっ!」
 ようやくたっぷりと動きが止まった空間を打ち破ったのは、くるみだった。
 しかし、その言葉もどこかぎこちない。
 なぜだろうか。どちらにしても待ち合わせているのには変わりないのに…ここに来たとしても、おかしくなどないのに…
「こんばんは、くるみちゃん」
 そう、おれらの前にいるのは確かに風中の姿。しかし、風中も風中でどこかおかしい。なぜか、首をかしげていた。
 その原因は、今のおれにはわからない。ただ、ひとつだけ違和感を感じることは、あった。
「よお、風中…ところで、お兄さんは?」
 久しぶりに話すという緊張感以上の疑問に、おれは自然と風中に問い掛けていた。
 すると風中は一瞬「えっ?」というような驚いた顔をしているように見えた。
 それはきっと、しばらくおれと話をしていなかったのに、急に話し掛けられたという驚きからなのだろう。
 確かにおれ自身、よくこんなことができたと思っている。
「え、えっと…お兄ちゃん、それはね!」
 しかし、おかしいことは続いた。なぜか、その後の言葉をくるみが切り出したのだ。どうもくるみは何かを知っているらしい。
 もしかして、おれの予想は間違っているのだろうか。
「それは…」
 ところがくるみの声は次第に小さくなり、やがて聞こえなくなる。
 こんなくるみを見るのは、なかなか無かった。「いつものくるみらしくない」とおれは言いそうになったが、そんな冗談を飛ばせるような雰囲気ではなかった。
 そこに、おれにとって予想外の言葉が耳に入ってきた。
「…ごめんなさい。行けなくなったの、今日…」
 それは、風中が言い出した言葉だった。
 一瞬、ああそうなのかと納得しかけたおれだったが、おれは間隔を置いてやっと、事の重大さに気づいた。
 なにせ、今回のことをOKした理由のほとんど…いや全てが、風中が来るということを前提としたものだったのだ。
「い、行けなくなった!?」
「そ、そうなの…少し、都合がつかなくなって…」
 俗に言うドタキャンをされたことで、おれは平静を失い、頭がおかしくなりそうだった。
「よ、用事なら仕方ないよな…」
 冷静に物事を考えれば、用事ができたのは風中のせいではない。
 ただ、約束もしていたこの日に突然用事ができるとは、いったいどんな用事なのだろう…と気にはなったけれど。
 しかし聞くのは失礼だと思い、やめることにした。
「空下君、誕生日おめでとう。プレゼント用意したかったけれど、ゴタゴタしてしまって…ごめんなさい」
「いや、充分うれしいよ。ありがとう」
 忙しいだろうに…やっぱり風中は優しい。
 しかしおれはこの時、予感していた。
 このまま、風中はまた手の届かないところに行ってしまうのではないかと…
「2人だけになってしまったな」
 不安を吹き飛ばすつもりで、横にいるくるみに話し掛ける。
「う…うん、そうだねっ!」
 無理した笑い方だった。
 だてに、子供のころから付き合ってはいない。
 何かおれが知らないことがあるのは、間違い無かった。
 いや、ある程度の察しはついている。
 そして、きっと風中も関係している…
 そうでもなければ、今の会話がこんなにもぎこちなくなるわけがない。
 つまり、これが意味しているのは…
「空下様…お2人のご予約ですね、こちらの席へどうぞ」
 ホテルのレストランの中、ウエイトレスの言葉が、全てを物語っていた。