Under20,Over20 25
昼に入っても雪が降ってきてもおかしくないほどの寒い中。
いよいよ直樹が大ピンチになってきているため、おれは直樹に昼食中、声をかけていた。
「というわけでだ、絶対誘うんだぞ。わかってるな?」
「ああ、わかってる。チャンスは今日までだからな」
何度となくおれが直樹にかけてやった言葉。しかし直樹はいまだ行動に移していない。
まあ気持ちはわからなくもないが、日付はすでに12月24日…
そう、くるみとの約束の日。
そして、おれの誕生日…
そんな日だというのに、人のために懸命になっているおれっていったいなんなのだろうか。
直樹のキューピッド役はゴメンだとは言っておきつつも、やはり気になってしまうのだから不思議なものだ。
これでくるみがいなくなったらなったで風中とそのお兄さんの中でおれが浮いてしまう存在になってしまうのだが、この際それは考えないことにした。
最悪、おれら4人の中に直樹が加わるということでいいんじゃないか、ともおれは言っておいた。
あまり人数が増えすぎるのもおれにとって不利な条件ではあったが…
なにせ、今のおれは風中と話をしていない状況なのだ。そう、このクリスマスイブを迎えるまで…
せっかくのチャンスなのだから、できるだけ人の少ないところでなんとかしたい。
というか、そうだよ…直樹のことばかりにとらわれて、肝心の自分のことを考えていなかったよ、おれ。
実に、おれのチャンスも今日しかないわけだ。
確信とはいかないまでも、今日を逃したら取り返しのつかないことになるのではないかと思っていた。
「とりあえず、今日おれとくるみは一緒に過ごすことになってる。もしそのことをくるみに突っ込まれたら、おれは承諾していると言ってくれ」
今日の予定のキャンセルを承諾していることはおれからくるみに話すのもいいかと思ったが、それではくるみに何を言われるかわかったものではない。約束、と言われている以上自分から切り出すことはムリだ。
そんなことをして神経を逆なですると、ますます直樹の立場が危うくなる。おれがそんなことを言ったその後に直樹が誘おうものなら、さっきの話はそういうことだったのかと、くるみが断りかねない。
くるみの場合そんなことはないかもしれないが、少なくとも直樹から直接聞いたほうが有利になることは変わりない。
しかしそんなおれがそうしていろいろと考えている中、当の本人であるはずの直樹は、どこか落ち着かない表情をしていた。
というよりは、ため息をつきそうな感じかもしれない。元気がない…もとい、覇気さえないように見えた。
「どうした?」
「あ、いや…まあ、緊張してるんだな、たぶん」
そうかもしれない。この期に及んでまでなぜか平静なおれの方が逆に異常だろう。
風中と話をすることさえなかったので一見ピンチかもしれないが、会うことが約束されているおれにとっては、多少は気が楽なのかもしれないが。
「まあ…頑張ってくれとしか言いようがないけどな」
そしてまだ先が見えない直樹に最終的にかけられる言葉は、得てしてそんなものだ。
「…悪かったな、迷惑かけて」
「なーに、いつも迷惑かけられっぱなしだっつの」
ちょっと冗談交じりでお互い苦笑いし、その後少し落ち着いた時、突然直樹が話を切り出してきた。
「ところで最後に一つ聞きたいんだけどな…」
その面持ちも、途端に目線をこちらに向けた、いかにも直樹の授業体勢のような感じになっていた。
おれが「ん?」と聞き返すと。
「風中さんのこと…どれくらい好きなんだ?」
「え…なんでそんなこと聞くんだよ」
とりあえずおれの正直な感想だった。あまりに突拍子で、そしてなぜ今なのかという疑問ばかりが浮かび、そのくらいしか会話を続ける術がなかった。
「ん?ちょっと気になったからさ…参考にしたいとも言うかな」
やはり何を今さら…とまた思ったが、ふと、おれは少し考えた。
すると、意外と「どのくらい好き」なのかが簡単に表現できない自分に気づいた。
すでに言っているつもりで、実は考えたこともなかった風中を意識した理由。
いや、もちろん気にかけていないというわけではない。今だって風中と会えることをすごく楽しみにしている。胸の高鳴りも感じる。
そうでもなければここまで風中と過ごした時の時間の短さを感じることはないはずだ。
自然と、おれはこんなことを口走っていた。
「今は…わからないから、その理由を知りたいだけなのかもしれないな」
それはその場しのぎの答えではなかった。間違ってはいない。
でも、100%の答えを返せたとも言いがたい。しかし今はそんな答えを返すだけで精一杯だった。
「そうか…わかったよ」
直樹は、どこか腑に落ちていないようだった。