Under20,Over20 24
「そういえばお兄ちゃん、ちょっと話があるんだ!」
おれの方が疲れてしまいそうな威勢のよさで、何も知らないでいるくるみが言う。
「なんだよ、くるみ…なんかお前の話っていい話題じゃなさそうなんだよなあ…」
「失礼なことを言わないでよね〜うら若き乙女に」
「乙女ってガラかよ、まったく…ま、いいや。どういう話なんだ?」
今までの経験から察するにこのままくるみに合わせていると話が進まないのが目に見えていたので、おれは学習して一気に本題に迫ることにした。
「クリスマスイブ…お兄ちゃんの誕生日だけど、その日…予定、あいてるよね?」
なぜかその言葉がとぎれとぎれだったのも気になったが、それ以上におれは一瞬、他のことでためらいを覚えていた。
ここ最近あまりにも環境がめまぐるしく変わって忘れかけていたが、そうだ…もうすぐクリスマスイブになるんだよな。
クリスマスイブ…できれば風中を誘いたい。
しかし、今の状態では声をかけることさえ難しい…
さしずめ、くるみは今年も毎回恒例のクリスマスパーティーをおれの家で開催しようと思っているのだろうが…
「…里美ちゃんも誘ったんだよ」
「えっ!なんだって!?」
しまった、と思った。つい風中の名前が出てきたことに動揺して大声を張り上げてしまった。
それはもう、自分の声が教室の壁に跳ね返ってくるのを確認できるほどだった。
「やっぱりそうだったんだっ!お兄ちゃん、里美ちゃんのこと好きだった…んっ!」
「バカ、声がでかい!」
危うくクラスの面々への大発表をかますところだった。
頭で考えるより先に手が動いたのは自分の体に感謝と言うか、おれはくるみの口を反射的にふさいでいたのだった。
そういえばこれもまた忘れていたが、考えてみれば風中と以前デートできたのだって、レポート書きに協力して欲しいと頼んだくるみが発端だったのだ。
くるみがおれの気持ちに気づいていても、不思議なことではなかった。
「ふふひいほ、ほ、ほひいひゃん…」
あ、しまった。くるみの口をふさいだまま考え事をしてしまった。
よほど苦しいらしい、目を閉じて、猫が壁をひっかくような手の動きをさせている。
めったにくるみがもがいている表情など見ないので…まあ、見る機会などそうそうあるわけがないのだが、そのままにしておこうと思ったものの、さすがに悪趣味なので素直に解放してやることにする。
「思い出した。くるみがそもそもの発端だったんだな」
その言葉だけでおれが何を言いたかったのかが通じるかどうか不安だったものの、くるみはどうやら理解しているようだった。
「ふうっ…そうだよ、お兄ちゃん。最初はね、ちゃんと課題のことが心配で里美ちゃんに頼んだんだけど、もしかしてって思ったらホントにそうなんだもん、びっくりしちゃった!」
「要するに、楽しんでるんだろ」
「あったりー!すっごく楽しいの!」
だめだ…言い訳をするつもりが微塵もないらしい。開き直っているどころか、さも当然のごとく認めているくるみは、無神経なんだかなんなんだか…
「とにかく…お兄ちゃん、しようよ!」
この言葉だけ聞くとかなり意味深に感じてしまう…と考えてしまったことは置いておいて、当然、今回の誘いに行きたいことは行きたいと思っている。
しかし、躊躇してしまうのは、一つ気になることがあったからだった。
「風中は一人で来るのか?それじゃ風中が浮いてしまうんじゃないか?」
おれとくるみはいとこなので特に知らない間柄でもないし、というかむしろ知りすぎているくらいでまだ問題はないのだが、そこに風中が入ってくるというのはどうなのだろうか。
もちろんくるみもおれも共通の知り合いだし、いいのかもしれないが、風中が一人で入ってくるというのはおかしいと思ってしまった。
もしかしたらその当日、今の関係からして雰囲気が重くなってしまうんじゃないかと不安になっているだけかもしれないけれど。
「あ…お兄さんも一緒に来るみたいだよ!」
「お兄さんか…そうなのか」
そのお兄さんも随分とその日、おヒマなことで。少し失礼かもしれないけど。
まあ、でもありがたいことではある。そのおかげで風中と普通に会えるわけだ。2対2ならまだいいかもしれない。
「OK、わかったよ。今回もキッチリやらかしてくれ」
「ホント?やった!絶対だからね、お兄ちゃん!」
しかし、ここであることにおれは気づいた。
はて、何かを忘れているような?
…そうだ。
クリスマスイブにくるみをおれが持っていってしまうということは、直樹が…