Under20,Over20 23
考えてみれば、ありえない話でもない。
確かに1週間前、直樹がそれらしいことをほのめかしていた時があったのを、おれは思い出した。
『そうかそうか、学内恋愛大いに結構。まあがんばってくれ。こっちもこっちなりにやらせてもらう』
『あれ、初耳だな?直樹も女に興味があったのか』
『おれがホモみたいな言い方をするなって。それに今の言葉だって深い意味はないんだぞ。これからのことだ、これから。変な意味に取るなよな…』
あの時の言葉…あれはくるみのことだったのか。
「なんたってかわいいからな、くるみちゃんは。仲のいい修一らを見て、けっこう妬けたんだからな」
衝撃発言をそんなに気軽に言われたってなあ…おれにはなんともしようがないんだが。
というか、なんともしようがないんじゃない。あまりに突然だったから、頭を回そうにも回らないのだ。
いったい直樹はあいつのどこに惚れたんだか…と、疑問に思いながらいると、
「あのいつも明るいくるみちゃんがな、自分も楽しくしてくれそうな気がするんだ。というかな、昔に戻れる感じでな…」
瞬間、自分の考えていたことをよまれてしまったのかと思って小さく体が跳ね上がる。
その妙なカンのよさを、もっと有効に使えよ…とは思いつつも。
いつになく直樹は真剣な表情でいて、とてもおどける雰囲気ではなかった。
それはもう、顔つきまでりりしく見えるくらいで、話を流すことなどもっての外な感じだった。
人は誰かを好きになる…たまたま直樹にとってその人が、くるみになっただけに過ぎないのだ。
誰にも止める権利などない。
自分のことも片付けていないのに偉そうに語るのも、どうかとは思うけれど…
なんだかまるで自分に言い聞かせているみたいで。
「よかったじゃないか、直樹。くるみのことはおれのことなど気にしないで、好きに持ってけ」
本当に…何をやっているんだろうな、おれは。直樹だってこんなに前向きに考えているのに。
今のおれは、完全に後ろを向いてしまっている。
「そうかそうか!サンキュ!そのうち修一をアニキと呼ばせてもらうことになるかもな!」
「気持ち悪いから、それだけはやめろ」
だいたいくるみとおれはいとこなわけだし、別におれは兄というわけでもない。
ただそれ以上に直樹のキャラが壊れはじめているというのが、鳥肌が立ってしまうほど怖いぞ。
しかし、そうだったのか。直樹がくるみのことを好きだったとは…
おれも相当な鈍感だよな…もしかしたら自分のことでさえも見えていないことがあるのだろうか。
と、おれ自身で言っておいて、少し笑ってしまった自分がいるのに気づく。
自分で否定しているのでは、元も子もない。
「お兄ちゃん、おはよっ!」
おっと、なんだかんだと考えているうちに、ご当人の登場だ。
「直樹のお姫様のおなりだ」
直樹がおれの言葉に固まる。少し面白かった。
「うるさいぞ、そこ。いいか、一切他言は無用だからな」
「わかってるよ、心配すんな。直樹のキューピッド役なんてまっぴらゴメンだ」
そうは言ったものの、直樹には悪いが黙っていられるだろうかなあ…ちょっと自信はないかもしれない。
直樹は直接話すのに照れがあるのか、場を離れていた。
変な奴だよ。つい最近まではくるみとおれを目の前でからかっていたくせに。
「何を話してたの〜?」
横からくるみが聞いてきた。
「いや、なんでも。いつものバカな話」
とりあえず、開口一番バラさなかったことだけでもほっと胸をなでおろす。
そんな、いつもと変わった朝が始まっていた。