Under20,Over20 22
 
 
 あれから1週間がたとうとしている。
 木々には飾りが施され、音楽もオルゴールのような音色をした静かな曲が流れ、神聖な雰囲気を演出している。いよいよ街中もいかにも、と言わんばかりのクリスマス一色になっていた。
 そしてそんな中、今年の学校ももう少しで終わる。
 皮肉にもその日は実に、そのメインイベントの日…すなわちおれの誕生日の日でもあるのだが。
 しかし過ぎ行く日常はこれといって何か変わるわけでもなく…むしろただ惰性のごとく日々を消化しているような気さえする。
 特に挙げるとすれば、せいぜい冬休みの過ごし方がどうのこうのという話題が聞こえるくらいだろうか。
 ただ、おれ個人のことで言わせてもらえば、大きく変わったことがひとつある。
 それは…1週間前のあの桜の木の下での話をして以降、風中がおれを露骨に避けている気がするのだ。
 いや、これはおそらく気のせいではないだろう。
 たまに偶然目が合った時も、おれが声をかけようと思うまでのわずかな時間のうちに、風中の視線はおれから外れ、別のところに向いてしまうのだ。
 それでも朝と毎回の講義終了時には、同じクラスゆえに顔を合わせることもある。しかし最近、風中の口からは「おはよう」「さようなら」くらいしか聞いたことがないのだ。
 しかもその声は上ずっているというか、かすれているというか…まるで初対面くらいに他人行儀なのだ。
 まあもともと他人であるわけだし、他人行儀なのは不思議なことではないのだけど…ともかく、少なくとも以前のような付き合いがなくなってしまったのは事実だ。
 もともとおれにとって風中は手の届かない存在だった。
 そんな風に自分に言い聞かせても…
 そう、わかっていたつもりでも…
 こんなにも風中を意識して、ため息をついている自分がいる。
 それはこの前に2人きりになれたという幸せから一変、突然話すことさえなくなってしまったギャップからの、一時的なショックなのかもしれないけれど。
 どちらにしても、いつまでこうして風中と今みたいな関係を続けるのだろうか。
 このまま引きずっていくのは、イヤだな…
 それが、今のおれの一番の悩みどころだった。
 なにせ、完全な対処法があるわけでもないのだ。それどころか、切り口さえ見えないでいる。
 よく『時間が解決する』というのも聞くけれど、これはそういう問題ではないと思う。むしろ時間が経てば経つほど余計に悪化してしまうのではないだろうか。
 思い立ったが吉日。
 どうやら今のおれは、その言葉を信じたほうがいいらしい。
 そうだ…考えるより行動に移さなければ何も始まらない。
 次々と人が集まる大学の朝の教室の中、おれはタイミングよく、そう決意した瞬間に風中の姿を見つけた。
 声をかけようと、おれは意識的にうなずいて、立ち上がった…と、その時だった。
「よお、元気にやってるか?うむ、お迎えご苦労ご苦労」
 先にかけられてしまった声…それは期待とはあまりにかけ離れた、明らかに太いものだった。
 …どうやら一旦決心したこの気持ちは、しばらくおあずけになってしまうようだ。
「直樹…お前、なんて間の悪い…」
「ん?なんか言ったか?」
 いたって普段通りの態度で今の言葉を発した本人…直樹が、おれに聞き返してきた。
 まったくもっておれの今の状況を察知していないようだ。変なところでカンがきくくせに、こういう時だけ気がつかないとは…なんて都合のいい奴なんだ。
「ところで、時に修一、ちょっと相談があるんだ。付き合ってくれるよな?」
 しかもあろうことか勝手に話を進めてるよ、おい。
 正直言って、あまり乗り気ではないのだが…
 しかし、おれはどこか直樹の顔つきが真剣なように見えた。
 本当のところそうなのかどうかはわからないが、『相談がある』と言っている以上、何かを思いつめている…と言ったら言い過ぎかもしれないが、考えているという点ではあながち間違っていないのだろうと思う。
 とりあえず、自分のことをさておいて、素直に直樹の話を聞くことにした。どうせ今からでは風中に声をかけようにも、心構えができていない。
 おれはひとつうなずいて、直樹に聞く意思を伝えた。
 すると直樹は、そのおれの行動を確認しているにもかかわらず、ためらっているのか、少し間をあけた。
「修一、あのな…」
「なんだよ、もったいつけるなよ。どうした?」
「実は、くるみちゃんのことが好きなのかもしれないんだ」
 あまりの衝撃に、声も出なかった。