Under20,Over20 21
レポートを出して学校の外に出ると、すでに太陽はおれの真正面から見えるほどになっていた。
まぶしくても、なぜか温かみさえ感じられるその色に、見下ろす街中が染まっている。
また夜景とは違ったよさがあるな。うん。
そしてこれは、今日1日が終わりかけているというしるしでもあった。
本当に、あっという間だった。今日ほど滝の流れのように早く1日を感じたことはない。
理由なんて、今更考えることもないけれど。わかっていても、その気持ちがおさえられないというものはあるものだ。
「ありがとうな。結局レポートの提出までつきあってもらっちゃったな」
「ううん、そんなこと、全然いいのに…」
うつむき加減の風中がとても気になりながらも、悔しいことに何も出来ないでいるおれは歩を進めるしかない。
そしてそのまま歩いていくと、道の真ん中にかまえる、まわりに比べてひときわ大きい木のところにさしかかる。
そう…桜の木だ。
風中とおれが初めて出会って、話した場所…
今は葉も花びらもすっかり散っていて、春のあの壮大な風景は、ひとかけらもない。
「散っちゃってるな…」
「うん、散っちゃってるね…」
お互い、同じ言葉を反芻する。
きっと、風中もおれと同じシーンを思い出しているのだろう。桜を見上げる悲しげな表情は、あの日とそっくりだ。
「私、自分の名字って大嫌い。風の中で桜が散っていってしまうなんて…残酷だよ。みんな…花びらの1枚1枚だって、大事な生き物なのに…」
風中が、おれのほうも見ずに語りだす。
そうか…彼女がこんなにも悩んでいるのは、自分の名前も重なっていたからなのか。
「ホントに…風中はやさしいんだな」
「そんなことないよ…むしろ、こんなこと考えてるなんてバカみたいだよね…」
おれが否定の首振りをすると、風中が小さく笑った。
しばらく、会話が止まる。
「空下君は…そういうことって考えたことなかったの?」
「正直言って、なかったな。ほら、風中と大学の入学式の時にここで会っただろ?その時から、意識はしはじめてたけど…」
「そうなんだ…でも、私はもっと早く…」
「え?何?」
「…ううん、なんでもない」
なんでもない割には、返答が少し遅れている。下を向いて小石を蹴飛ばし、再びどこか悲しげな表情。
雰囲気が悪い方向に流れていっているのは、間違いなかった。
かける言葉も見つからず、全身をかきむしりたくなるほどの自分のふがいなさを感じる。
「…そろそろ帰ろうか?」
そんな中言い出した、この風中の一言。
それは、今日最後の言葉だった。