Under20,Over20 19
「いい天気だね。風も気持ちいいし」
風中の髪がひとつ何か動くたびになびき、前髪が乱れて顔に当たるたびに手でかきあげるというしぐさが、妙に色っぽく感じる。それほどのゆるやかな風が、公園の中に何度も流れていく。
「そうだな、それに公園になんてめったに来ないから、すごく新鮮だよ」
風中が『確かに似合わないかもね』と笑い出す。
その言い方はひどいんじゃないかと思っても、実際否定もできないので返す言葉もないのが悔しいところなのだが。
しかし、だからといってそのまま話を流してしまうというのもどうかとも思う。あまりにも自分が惨めすぎる気がする。
「うう…それはひどすぎるぞ、風中ぁ」
とりあえず笑い話にするというのも1つの手だと思い、おれはすがって助けを求めるように風中にそう訴えかけてみる。
「ふふ…冗談よ、冗談。よしよし、泣かないのっ」
どうやら風中も最初からそのつもりだったらしい…のだが。
その後彼女が何をするのかと思ったら、おれの頭を軽く2回、それこそなでるような感じでたたいたのだ。
どんな形とはいえいきなり風中に触れられたおれとしては、嬉しくなるというより驚きの方が大きかった。
「そ、それはちょっと風中、やりすぎじゃないか…?」
おれが言うと、風中は『あ…』と消え入るような小声で、自分が何をしていたのか気づいた様子だった。
でも恥ずかしいのは風中だけじゃない。おれだって当然、照れくさい。
本当に風中は無意識のうちに行動していたのだろうか。だとしたらこれからも気をつけなければならないのだろうか。最近の風中は妙なノリをすることが多くなったからな…意外と侮れないぞ。
「確かに…ちょ、ちょっとやりすぎちゃったかな、とは思ったけど…でも空下君も悪いよ。言わないでもらえれば気にしなくても済んだかもしれないのに…」
「そんなこと言われてもな…」
本気で困ってしまう。そのままツッコミなしっていうのもどうかと思うしな…
「も、もう…本気で悩まないでよ。恥ずかしいから簡単に話を流そうかと思ったのに」
見ると、風中の顔は本当にほんのりと紅色に染まっていた。
それはそうだろうな。おれだってまだのどの奥がつっかえているような、息苦しい違和感を感じている。
風中にも、いくらなんだってここまできたら意識してもらわないと逆に困る。つまりはおれに何も感じていないということになってしまうからな。
しかし最近、おれは風中の気持ちがわからなくなってきている。いや、わかっていればこんなにもずっと風中のことを考える必要もないのだが…
昨日と今日だけで、彼女には色々な表情を見せられて、おれは見事にかき乱されている。
特に気になるのは昨日だ。
そう、実は昨日おれは気づいていたことがあった。帰りに風中と一緒に残って課題をやっていたあの時のことだ。
風中はおれと話している時、ずっと自分に合わせて時には真剣に、時には笑顔に、そんな風にある程度好意を持っているような態度を見せてくれていたのだが…
ふと、横を向いてため息をついていたことが、何度かあったのだ。
それをおれがどう取るべきなのか、そこがわからないでいる。
今日、どうして風中がおれに付き合ってくれているのか、それさえもよくわからないのに…
とりあえず今のおれにできることは、少しでも話を盛り上げることだった。
「そうか、それはうかつだった。今度きっちりそのことを話題にしないとな」
「もう…怒るからね」
そう言いながらも表情はさほど言葉と相成ってはいないようだ。普通だったらその方が怖いともよく言われることだが、この雰囲気からして、いい方向に向かっているのではないか、と思う。
とりあえず、今は風中と2人の時間を楽しむことにしよう。そう思うことにした。
「ところで、レポートは持ってきたの?」
「ああ、もちろん。せっかく風中が手伝ってくれたんだ、忘れるわけないって。こうして提出できて風中にはホント感謝してるよ」
しかも今こうして2人でいられるのも、もとをたどればこのレポートがきっかけだし。神様にも感謝しなきゃな。
ところがこの後の風中の言葉によって、感謝の対象が違うところにあったこともさることながら、おれの懸念が的中してしまう、衝撃的な事実を知らされることになってしまった。