Under20,Over20 16
「しかし、電車も一人でロクに乗れないようなおまえがバイトするって言ってもなあ…」
一応、おれも一方的に言われっぱなしではなんだか悔しい気がしたので、さりげなく皮肉ってみる。
それが、どうやらビンゴみたいだった。
「お、お兄ちゃん!いったいいつの話してるの!?そんな昔の話を引っ張り出さないでよ!」
「なんだ、ちゃんと聞いてるんじゃないか」
くるみは昔、本当に典型的なパターンで、小学生の頃に2家族で出かけようという話になった時も…
切符売り場でおれの前に並んでいたくるみがどうもゴタゴタやってるな…と思ったら、突然くるみが振り返り、「きっぷがかえない」だもんな。
驚いたものだ、行き先だって教えてもらってたし、その駅名だっておれが読めるくらいなのだから読み取れなかったはずもない。
くるみはおれに泣きそうな目で助けを求めてきたものだ。こんな簡単なことがなんでわからないかな…と思いつつも、後ろが詰まりかけていたので仕方なく助けていたが。
と、そんな昔の笑い話はさておき、現実に戻ってみると、くるみは妙に赤い顔で落ちつかない様子になっていた。そんなに恥ずかしかったのだろうか?
「違うってば!変なこと言わないでよ、お兄ちゃん!」
…どうやらおれは無意識のうちに言葉を口走っていたらしい。
まあでも、普段強気なくるみもひとつヒットするとこんなにも弱気になってしまうものなんだな。
なんだかちょっと久しぶりに優位に立てたような気がして嬉しい。
「う〜」
そして、可笑しかった。
「ま、それはともかくとしてだ…おまえがバイトねえ、いったいどこにそんな酔狂な雇い主がいるんだ?」
くるみとしてはとにかくで片付けられてしまうのは不本意なようで、少しふくれた顔をしたが、おれはあえて気づかないフリをする。せっかくの今の立場なのだから、もう少し楽しみたい。ちょっと悪趣味かもしれないけど。
ところが、くるみはおれに食いかかってくるどころか、何かに気づいたように一瞬にして真顔になった。
今の話の流れから結びつかないような顔をされたので、おれは上の立場になっていることも忘れ、戸惑ってしまった。
「どうかしたか?」
くるみは顔面でアクションをするだけで、話をなかなか進めようとしなかったので、しびれを切らしておれがそう言うと、
「なんでもないよっ!バイト先もヒ・ミ・ツ!」
とかのたまりやがった。
「なんだそりゃ、さんざん含んだ間を持たせておいてそれかよ。まさかそんなこと言っておいて本当は誰にも言えない変な仕事なんじゃないだろうな?」
まあ、それでもくるみに客がつくとは思えないが。
って、おれもどんな仕事を想像してるんだか…
このまま黙っているのも悔しいから言っておくことにした、ということにしておこう。うん。
「何言ってるのよ、健全なオ・シ・ゴ・トだよ!それともなに?お兄ちゃんが私を買ってくれるの?きゃはは、困っちゃうなっ」
くっ…こいつ、さっきから返答に困るようなことをじわじわと言ってくるな…
あ、ふっかけてるのはおれかもしれない。でも気にしておかないことにする。
ともあれ、実際おれのほうがくるみよりは生まれが数ヶ月早い。ここはその威厳で軽くあしらってみることにしよう。
「バーカ、誰がおまえみたいなオコサマなんて買うかよ」
「ふ〜んだ、じゃあ最初からそんなこと言わないでよね〜」
ん?もしかして軽くあしらわれてるのって…おれか?おれなのか?
その証拠に、おれの頭は完全に回らなくなり、何も言い返せなくなっている。
それに、くるみがどこからでもかかってこいと言わんばかりに腰に手を当てているし。
どうやらいつのまにかくるみにしてやられているらしい。というか、おれがくるみと口での勝負を挑んでしまった地点で間違ってたのかもしれないな。