Under20,Over20 13
しかしこれは…ひょっとするとひょっとするのか?
この辺りの不審者の情報は、かなりの真実味がある。もし今もその一つになろうとしているのなら…本気でシャレにならない。
おれは身構えた。ここでヘタに動揺を見せては、風中に余計に不安を与えるだけだ。
できる限り自然にしながら…といっても、風中に腕をつかまれている地点で自然でもないのだが、注意を草むらのほうに向けた。
『ミャーオ』
間髪入れずだった。気の抜けるような鳴き声と共に、その鳴き声の正体がくさむらから現れ、そして早足でどこかへかけ抜けて行ってしまった。
その『正体』に、おれもさすがに気づかないわけがなく、ふう、とため息をついた。
「なんだよ、まったく人騒がせな…風中、平気だよ。野良猫だったぜ、野良ネコ」
一気に緊張が抜けてしまった。おれは何をネコ相手に身構えていたんだか…今思い返すと恥ずかしいものがある。それは結果論かもしれないが、まあ大事がないだけよかった。
風中も今回ばかりはおれの声が聞こえたらしく、顔をこちらに向ける。
「そ、そうなの?」
ようやく風中は目を開けたようで、おれの視界に辺りを見まわすように首を左右に振っている動きが見て取れた。
「だからこの手…離してもらえないか?」
いくら誰もいないとは言え、この状況を保っているのは嬉しい反面、戸惑ってしまうのもある。
このままでいたいのも山々だけど、これじゃいつまで心臓が持つかわからない。
風中はおれなんかと違って、マジメで、そして純粋そうな女性だ。
おれでさえ気恥ずかしいのに、風中が我に返った時なんかどうなってしまうのか。
そのためにも早いところ手を打ったほうがいいと思ったのだ。
ところがだった。
風中が更に力を入れて、おれの腕を引っ張ってきたのだ。離してくれるものだと思っておれは軽く歩き始めていたのだが、その反動で強く風中のもとに引き戻されてしまった。
おれの考えていたこととまったく正反対の行動を起こしてきたのだ。
「か、風中?」
自分でも顔が熱くなっていくのがわかる。明らかに、動揺している。
しかし言葉をひねり出すようにやっとのことでおれが風中を呼んでも、風中の答える気配がない。
「違うんだぞ、これは野良ネコだって…」
やはり何も答えない。
おれもさすがに困った。これにはどう対処のしようもない。
再び、そのまま時の流れが止まる。
「帰らないと…ほら、両親とかが心配したりしないのか?」
普段のおれの行動からして人のことを心配するような言動をしているのは奇跡みたいなものだ。
自分自身でも変な気分がしているが、しかし風中の立場から考えるとそう言ってしまうのも普通かと思う。
時間はおそらく8時半を回っているだろう。ここまでの道のりと、立ち止まっているこの時間も含めて考えてみれば、そのくらいの時間にはなっているはずだ。
風中の家は、ここからもある程度遠い。まず間違いなく10時近くにはなる。
今日の放課後、おれと一緒にいたこれまでの間、家に連絡していたような様子もなかった。
もちろんおれだったら大した時間じゃない。実際のところどうなのかは知らないが、風中くらいの女性が出歩くような時間じゃない。勝手に思っているだけかもしれないが。
何よりも一番怖いのは、「人の娘をこんな遅い時間まで連れまわすなどとはけしからん!」という最悪な事態が起こってしまうのではないか、ということだ。
…って、さすがにそこまではありえないと思うが。
と、そんなことを考えて少しでも気を紛らわそうと試みていたものの、やはり風中はおれの腕を離してくれようとはしない。
「…何か言ってくれないの?」
はっとしておれは風中の顔を見る。それは風中の言葉だった。