Under20,Over20 12
薄暗い、遠くの方にありすぎる街灯を頼りに、おれと風中は、駅までの道をゆっくりと歩く。
今までもありそうで、でもなかったこの状況は、なんとなく全身がくすぐったく感じる。
肌寒いという表現だけでは到底足りることもない冬の夜の冷たさも、風中が隣にいるというだけで、緊張してしまって、汗まで吹き出しそうだ。
それでも、さっきの2人で同じ言葉を言ったのには、ある程度の張りつめていた自分の中の気持ちというか、そういうものが、少し和らいできているようではあった。
「ははは、まさか風中も同じことを言うとは思わなかったぜ」
「本当よね、笑っちゃうよね」
そう言っては、お互いに顔を見合わせながら、再び笑い合うという繰り返し。
吐く息は白く、たまたま街灯の真下で風中の口元から出るその白い息の向こう側の彼女の顔は、おれにとっては女神でも現れたのかと思うほど幻想的な雰囲気で、本当に寒いとだけしか思っていなかった冬も、改めて悪くないと本気で思う。
「な、何見てるの?」
風中が不思議そうにおれに言う。
というか、これはもしかして不審の目なのか?
「いや、風中がなんだかきれいだなって思ってさ」
あっ、しまった。ついどさくさにまぎれて変なことを言ってしまったぞ、おれ!
変なことといっても、まあおれの本音だってことに変わりはないのだが…
そのことに気づいたおれは、もう心臓が飛び跳ね踊るように動き、もはや自分自身でも止めることができなそうなくらいまでになっていた。
「えっ?」
それでも、一番驚いたのは風中のほうかもしれない。明らかにさっきよりも顔が変わっている。正面からおれの言葉を聞いた証拠。目を見開いているといった感じだ。
「いや、なんでもない!これは、えっと…」
今日はなんだか、焦ってばかりいるような気がする。
気まずいな…どうにかしないといけないかなあ。
冷たい風が、おれたちの間を通りぬけていく。
と、その時だった。
端の草むらのほうから、風による草のゆれとはまったく思えない、不自然な物音がしたのだ。
車が通っているような通りならその音でかき消されるということもあるが、静か過ぎるこの辺りでは、おれも肩が跳ね上がりそうなほど大きな音に聞こえた。
「きゃっ」
さらに驚くことは続いた。風中がおれの腕をつかんできたのだ。
おれはその時は完全に冷静を失った。まさか振り払うわけもいかない。
ちょうど街灯も近く、顔のパーツがなんとか見えるくらいの微妙な暗がりで風中の顔をのぞきこむと、彼女は目を閉じ、少し震えている。
この暗がりに、風中の怖がっている顔は、少し反則な気がする。
しばらくどうにもできない自分がもどかしく、そして情けない。
しがみつかれた時からというもの、おれと風中は立ち止まったまま、ただ時間だけが流れていった。
ふと、おれはさっき不自然に動いた草むらの方から、何かの気配を感じた。
「げっ、マジかよ…」
軽く声を出してしまい、おれはしまったと口をつぐむ。
幸いなことに、風中はおれの今のつぶやきを聞く余裕すらないようだ。どうやら、聞こえてはいなかったようだった。