Under20,Over20 10
 
 
「あと、19歳から20歳になろうとしている子供のことに対しての心境も書き加えるといいかも」
 そんなわけで、おれは風中のレクチャーを受けながら、順調にレポートを進めていった。
 しかしどういう話なんだよ、これは…とツッコミを入れたくもなるけど、あえてそのことには触れないことにしておこう。
 …いや、すでに触れているようなものだけどな。
「なるほどね…おれももうそろそろ20歳だから、その気持ちはわかりそうだなあ」
 おれは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 ただ毎日をなんとなく過ごすという日常…このまま20歳を迎えて本当にいいのだろうかという念が沸いてくる。
 確かに20歳になることで、いろいろな『大人の特権』を手に入れることはできる。
 しかしそれは同時に、なんでも1人で責任を背負わなければならないという意味でもあるのだ。
 別に、だからといって10代である今、誰かに迷惑をかけていいってわけじゃないけど、改めてそう考えると、まだおれには荷が重過ぎるように感じてしまう。
「あ、空下君はもうすぐ誕生日なの?」
「そうだよ、12月24日の…あ、時間は今ちょうどピッタリだ」
 教室の一番前にある、黒板の上の、学校によくありがちな白地のアナログ時計…時間は、7時を指していた。
「へぇ、空下君クリスマスイブの日に生まれたんだ。空下君に似合わずロマンチックな日なんだね」
 風中もけっこう言うなあ。それでも憎めないところが風中の罪なところだ。
「似合わずってのだけ余計じゃないか?しかし大変なんだぜ、その日。いっつもくるみがおれの家に来て、ちょうど7時にハッピーバースデー!って。それまで料理の1つも食わせてくれないしさ。まるで家族の一員みたいに過ごすんだぜ」
 幸か不幸か、さらにその時間には教会の鐘が街中に響き渡るようになっている。くるみはそれを合図にするのだ。
「いい妹さんじゃない」
「まだゆーか」
 さんざん言われていやになってきていたネタだったが、しかし今回はさほど怒りは感じなかった。
 風中の冗談っぽい行動に、見とれてしまったのかつい吹き出してしまったのだ。
「…笑うところじゃないんじゃない?」
 代わりに、風中姫様の方がご機嫌ナナメになってしまったようだ。
「はいはい、お嬢様。私が悪うございました」
「ふふ、よろしい。これからも歯向ってはなりませんからね」
 風中はおれの言葉に同じように吹き出して、おれに合わせてきた。
 案外、風中もノリはいいらしい。ちょっとした一面を見つけた感じ。
 一応、おれの気にかけている人であるから、だいたいの性格はわかっていたつもりだけど…
 今さらながら、おれら2人っきりなんだよな…
「それにしても…夜景きれいだよね、ここ」
 風中がそうつぶやく。そう…時間はもう7時を回っているのだ。あたりはすでに闇に包まれていて、完全に静まり返っている。
 向こうの街の宝石みたいに光るイルミネーションは、おれが課題を始めた、まだ日が沈んでいない頃とは違って、力強く輝きを放っている。
 心に秘めた想いを打ち明けるには、最高のロケーションだ…なんてね。
 それができれば、おれだって苦労はしないよ。
「ああ…そういえばそうだな」
 せいぜい、今初めて知ったかのようなそぶりしかできないおれ。
 風中のその横顔に見とれ、それに気づいたのか彼女がおれの方を振り向く。
「どうしたの?」
 その普通な会話にも、あわてて目を背けてしまう。
「い、いや、なんでも」
 あーあ、情けないぜ。