Under20,Over20 8
 
 
「ふう…やっと1つ終わりか…」
 1人の教室。日の落ちるのが早い冬では、さっきまで明るいと思っていてもそれこそあっと言っている間にあたりは暗闇に包まれているものである。
 あ、いや…ちょっと言いすぎたかもしれないけど。
 でも実際窓の外を見てみると、すでに見下ろした先の街の明かりが目立って見えるほどになってきていた。
 まだ5時なのにな。本当に早いものだよ。
 しかし、夜景がきれいだってウワサは本当かもしれない。
 心が癒されるような…っていうか、こんな時に心を癒している場合ではないような気がするが。
 まだすべて終わらせたわけじゃないからな。夜景に見とれているヒマなんてないわけだからな。
 そう、今おれはやっと今回の授業の要約のレポートを終わらせたところだ。
 授業がすべて終わった時に、「昼メシ1回分な。カップラーメンはナシだぞ」と言って快くノートを貸してくれた直樹にはいろんな意味で涙が出る思いだ。
 さて、とにかくこれで一応、後はためていた課題を完成させることだけだが…
 いかんせん、今手元にあるやりかけのやつは、今日の朝に風中のものを参考にして書いたシロモノだ。この続きを書くには、もう一度その資料を見せてもらいたいところなのだが…その本人がこの場所にいるわけがないし。
 しかし、今書いている文章とて、そんなに枚数をこなしているわけじゃない。最初から書きなおしても、大したダメージは食らわないのだ。
 まあ、授業前のあの時間だけで書いたものだから、当然といえば当然なのだが。
 とにかく、自分1人でしのごの言っていても仕方がない。そんなヒマがあるなら、その分の文章を書けっていう話だ。
 おれはほほをたたき、新たな気持ちでレポート用紙に向かった。
 
「…ここは、主人公のゲルが子供を人質に取られて、泣き崩れた時の気持ちを考えるの。そうすれば、後で戻ってきた時の心境も書きやすいでしょう?」
「そうか、なるほど」
 あれから数十分後。
 おれの隣には、風中の姿があった。
 なぜここに風中がいるのか。
 それは1人で課題を始めようとしてとりかかるも、まったく手をつけられずにただ時間のみが川のせせらぎのようにゆっくりと流れていく、そんな時だった。
 突然、教室のドアが開いたのだ。
 びっくりするほどではなかったが、夜を迎えようとしている教室の中で1人でいるおれとしてはそれなりの音で、一瞬心臓が止まる思いだった。
 最初その人影が誰のものなのかわからなかったのだが、おれはその次に発されたその人の言葉で、一瞬にして理解をした。
「空下君?」
 ドアが突然開いた時よりも、体が飛び上がる勢いだった。