おしえて。 --Teach.2
 
 
「ううー、さむーい…」
 お布団のぬくもりが、すごく心地良い。
 突然寒くなったなぁ、と起きているのか寝ているのか分からないようなまどろみの中でうっすらと考えたりする。
「でも、時間だもんなぁ…」
 起きる時のいつものわたしのヒトリゴト。声に出さないと、起きられないから。
 
「んー、眠い…」
 12月になって寒い日が続くけど、それを超えるくらい眠気が強くて。
 やっぱり、朝のまどろみが少し足りなかったみたい。
「ボケボケしてんな、相変わらず」
 そんな頭がはっきりしていないわたしの耳に、イヤミな声が通った。
 そこにいたのは、なぜか小学生の時から高校生の今までずっと付き合いのある、幼なじみというより悪友のような存在のアイツ。
 わたしの弱いところをとことん突いてきて、わたしを困らせる嫌なヤツ。
「仕方ないでしょ、冬で寒いから起きられないんだもん」
「なに言ってんだ…夏は暑さでボケボケしてるくせに」
「うう…いいじゃない、女の子らしくてカワイイでしょ?」
 アイツは何も言わないでわたしを見てきたかと思うと、首を振りながらわざとらしくため息としか感じられない息の吐き方をしつつ、足を進める。
「な、何か言いなさいよ!」
 言ったわたしの方が恥ずかしい。
 きっとこういう風に女の子の扱い方を心得てないから、彼女の一つもできないんだよ。
 わたしがそう心の中でつぶやいた…つもりが、少し声に出てしまったらしく。
「…何か余計なこと言わなかったか?」
「別にー。朝からわたしが構ってあげているくらいだから、よっぽど相手する人がいないんだなーって」
「何バカなこと言ってるんだか…ほら、行くぞ」
 涼しい顔して、よく言うよ。
 そんな冷静な対処をされると余裕を見せられているようで嫌な感じ。
 そう言いながらも、置いていかれそうになるので駆け足でついていくわたし。
 結局わたしがどう思おうが、いつも何をするにも、アイツ主導になってしまう。
 少し考えればついていく必要はないはずなのに、流されるように行ってしまう。
 そんなわたし自身の行動も、よくわからなかった。
「バカなことって何よ、彼女くらい作ったらどうなの?」
 アイツのちょっと後ろを、追いかけるようについていくわたし。
 あまりにもわたしが置いていかれて、打ち負かされているままで終わりたくなかったので、せめて口だけでも追いついてみる。
「そんなに彼女を作って欲しいと思ってるのか?」
「当たり前じゃないの、毎日楽しくなるでしょ?わたしがつるんであげなきゃいけない時間も減るし」
「…じゃあ、どうすればいいのかおしえてくれよ」
 アイツの歩く足が突然止まったので、後ろを歩いていたわたしはその背中にぶつかった。
 と思ったのが一瞬。だけど、違っていることにすぐ気付いた。
「何で急に振り向いて止まるの、鼻ぶつけた…」
 背中だと思っていたわたしは、それだけ言うのに精一杯だった。
 突然のこととはいえ胸に飛び込む形になったなんて、ごまかしたくて。
 アイツの背丈は改めて見ると、当たり前だけどわたしが見上げなければならないくらいに大きい。
 それを意識してしまうと、すごく不覚なことだけど、わたしの顔が勝手に熱くなっていく。
「彼女なんていたことないからな。どうせなら練習に付き合ってくれよ」
「何勝手なこと言ってるのよ!わたしの気持ちを考えないで言ってるの?」
「…じゃあ、こっちの気持ちも考えて欲しいもんだ」
 わたしが何も言えなくなったことをいいことに…
 包み込まれるように、わたしの体が簡単にアイツの胸におさまってしまう。
 ずるいよ。これじゃ、わたしが手のひらで遊ばれてるみたい。
 なんでホント、わたしの弱いところをいつもいつも突いてくるの?
 どうしていっつも、コイツに主導権を握られなきゃいけないの?
 でも、この暖かさはいつまでも感じていたい…と思ってしまう。
 それは、朝のまどろみの続きをしているよう。
 
 だから、このままこうしてて。そしてお布団の中なんか超えるくらいの。
 
 あなたのぬくもりを、おしえて。
 
 

          

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