My Graduation 
 
 
「おまえら、付き合ってるんじゃないのか?」
 そう言われた時、『違うよ!』と強く首を振っていた僕がいた。
 今思えば、わざわざそんなにも強調して否定していたのは、内心焦っていたからだったのかもしれない。
 それに気付いた時は、もう遅かったのか?
 そのウワサを気にしすぎて距離を置きすぎて、朝に挨拶さえしなくなっていた。
 そう、ウワサに振り回されたのは皮肉にも僕だけだったのだ。
 あの気軽に話せていた時に戻りたいけれど、だけど意識してしまった今はもうどうしようもなくて…
 1人で勝手にそんなことを思い込んで、相手は迷惑しているかもしれないということが、何よりも辛い。
 これだったら、まだあんなことを言われないまま…友達のままでよかったとも思った。
 
 
 そんな気持ちを胸に秘めたまま、迎えてしまった卒業式。
 慣れないスーツを着こんで、僕はあの子を探していた。
 見つけた時に広がる、忘れかけていた甘酸っぱい気持ち…
 やはり、僕の中でのあの子への想いは、廃れるどころかますます深まっている。
 告白…その言葉が昨日の夜から頭の中でぐるぐると渦巻いていた。
 手元には、彼女に渡すプレゼント。
 プレゼントなんてキザなことをしているな、と自分でも思ったけれど、あらかじめ用意しておくことで逃げてしまいたい自分の気持ちを封じ込めたいという思いがあった。
 卒業式が一通り終わった後に彼女に声をかけられて、僕は心を見透かされたような気がして、顔に熱が集中していった。
「写真撮らない?」
 きっと彼女は思い出を残すためにそう言ってきたのだろうが、とても僕はそんな気軽な気持ちではいられなかった。
 たぶん、その写真を撮っていた時の僕の顔は緊張していたに違いない。
 僕はここで覚悟を決めた。これはチャンス以外の何者でもない。おそらくこれは最初で最後の、彼女を呼び止める絶好の機会。
 僕は写真を撮り終わった後、彼女に声をかけることを決めた。
「あ、あのっ…!」
 と、その時だった。
 
 彼女の隣には、1人の男が…
 
 僕があの時、否定をせずに違うアクションを起こしていれば、何かが変わっただろうか…?
 でも、何もかもが遅かったのだ。もう少し気付くのが早ければ…
 今日は卒業式、僕にだけは彼女からも「卒業」しなければならない日となった。
 
 後で出来上がった写真を見てみると…
 僕と彼女の間には、ウワサを流された分だけの距離があるように見えた。