サンタクロース
あなたはサンタクロースを信じていますか?
私は…信じてる。
クラスのみんなからは、「もう高校生なんだからいい加減現実を見なさい」なんて言われてるけど…
きっと、そんなことなんてないよね。
今日は12月24日、高校の2学期最後の日。
「じゃあね、みんな!また来年もよろしくね!」
なんて声をかけられながら次々と教室から人がいなくなる一方で、私は1人、支度が遅れて取り残されていた。
なんだか…頭がふらふらして、スムーズに事を運べない。
「風邪…かなあ?」
違和感を感じながら、私は席を立った。
家に帰ると、すっかり頭の痛みはなくなっていた。
「えへへ…サンタさんのおかげかな♪」
自分の部屋の中に入って、そっと机の引き出しを開ける。
編みかけのマフラー。
1ヶ月前からずっと、何回も失敗しながら、ようやく最後の仕上げの段階まで来ていた。
まだ完成していないのは、私が心に決めたことがあったから。
本当は、もうあと10分もあればできたことだった。
だけどどうしても最後は、このクリスマスイブの日…今日に仕上げたかった。
「よーし、最後の一編みだぁ!」
大きく深呼吸して、もう少しで完成するマフラーを手に取る。
ところが、そこから先が動かなかった。
「完成したら…呼び出さなきゃいけないんだよね…」
そう、1ヶ月前に自分で立てた目標。
もしクリスマスイブまでにこのマフラーを完成させたら、あの彼に電話して、呼び出して、そして…
私はほほに手を当てる。自分で想像したというのに、なんだか恥ずかしくなった。
確かにあの時、ちゃんとそうするんだ!って決心していたのに…
今ごろになって、おじけづいている自分がいる。
「どうしよう…」
こうしている間にも、どんどん時間は過ぎていく。
このまま、次の日になってしまう…
叶わない想い。とても苦しい。
幼なじみの彼。ずっと前に私は思い切って、「好きな人はいないの?」と聞いたことがある。
「好きな人はいるよ」
確かに私の前でそう言っていた。
もしかしたら、もう遅いのかもしれない。もうとっくに気持ちを伝えて、今も2人きりでいるのかもしれない。
だけど…私だってあきらめられないよ。
「はぁ…」
ため息をついたところで何も変わらないのはわかっているのに…
動かすべき手が、ピクリとも動かない。
「どうしよう…」
と、その時だった。
暗くなりかけた窓の外が、一瞬閃光のような光を放った。
「な、何?」
同時に、私の意識が飛んでいくような感覚。
遠のく意識の中で、声が聞こえた。
『今日はクリスマスイブですよ、きっと奇跡は起こります。ガンバレ…』
私は、目を開けた。
場所は…ベッドの中だった。
頭のふらふらする感覚…
「え?これって…」
私がわけもわからないまま体を起こすと、
「お、気がついたか」
そこにいたのは…あの幼なじみの彼。
信じられなかった。
「な、何?なんでここに…」
「何が『なんでここに』だよ。おまえを学校の帰りに見かけて声をかけたら、いきなりぶっ倒れてんだからな。ここまで運んできたんだよ。感謝しろよ」
じゃあ、私が家に帰ってきてからのことって…夢だったの?
「でも、今日はクリスマスイブだし…予定はなかったの?」
「予定?あるわけねーって」
「だって好きな人がいるって前言ってたでしょ?」
「あ、あれか?それは、まあ…なんだな、そういう意味ではクリスマスイブの予定としては今果たしているかもな」
「え?」
「いや…なんでもない。お前こそどうなんだよ?」
「わ…私?私は…」
最高のクリスマスプレゼント。やっぱりサンタさんっているんだよ!
そう思いたい。そう信じたい。
「これ…俺にか?」
その証拠は…引き出しの中のマフラー。
編みかけのまま意識を失っていたのに、完成しているどころかかわいいラッピングまでされていた。
「うん…!えへへ…喜んでくれてよかった!」
窓の外には、私たちを祝福するような雪。
その向こうで、サンタさんが私を見て微笑んでいるように見えた。