MILD 33
CONTRARINESS

 
 
 いつもの喫茶店。いつもの2人。
 またいつものように楽しく話して、いつものようにいつものところで別れる。
 少しばかりあまのじゃくなところがあるけれど、そんなところも受け入れられるからこそ、今まで「いつもどおり」の付き合いができたのだとも思う。
 そう、全てがいつもどおり…今日もそんな日が過ぎていくものだと思っていた。
 だけど、そんな日々が毎日続くわけがなく変化はあまりにも突然に、やってくる。
「私ね、彼氏ができそうなんだ」
 衝撃の一言だった。
 それは表面的なものだけではなく、もっと心の奥深い場所にも響き渡っていくような…
 今までも薄々とは気付いていたが、見ぬふりをしていた。しかし、今の言葉によって僕ははっきりと気付かされてしまったのだ。
 全てが「いつもどおり」…そう思い込んで、自分の気持ちをごまかしてきていたけど。
「…へぇ、よかったじゃん」
 しかしもうすでに手遅れなところまで来てしまっているのを、否定したくてもできなかった。
 そんな自分が言える言葉は、もうその一つしかなくなっていたのだった。
 さすがに感情をこめるまでの心の余裕はなかった。きっと、台詞を棒読みしたような声になっているのだろう。
 それを証明するかのように、心が詰まるような、重たい空気を一帯に感じる。
 そんな中、たった一言だけ、感情が入っているのかどうかもわからないような、どこか暗いトーンで聞こえてきた言葉があった。
「それだけなの?」
 それがどのような意味をもつのか、その言葉だけではつかみかねるものがあった。
 何も返す言葉が見つからず、結局その言葉で状況が変わることなく、ただ黙っていることしかできずにいた。
 僕はその時、あることに気付いた。
 彼女のまっすぐな視線…
 彼女の性格…
 僕がはっと、ある結論に達したとき、同時に彼女はこの雰囲気に耐えかねたのだろうか、
「そろそろ出ようか?」
 今の僕にとって、その笑顔は痛々しくさえ見えた。
 
 
 そのまま僕たちは、喫茶店を出る。
 冷たい、一陣の風が通り抜けていく時。
 彼女がくしゃみをした。
 それを見て、反射的に、自分は…

 いつもの喫茶店、いつもの2人。
 いつものように話して…
 ただこの後は、今日は違う。

 彼女をそっと抱きしめて…
「答えは、これで充分?」
 そんな問いかけに、彼女が小さくうなずいてくれた。