MILD 27
BEST FRIEND
秋のある日の夕暮れ、僕は部活で遅くなり、学校の閉まる6時ギリギリまで、学校に残っていた。
その帰りだった。
人影もまばらな通学路、夕日の沈む手前で、制服で判断するに、女をおぶっている男の姿が見えた。
そして下ろした途端、言い合いをしている。
…その2人が誰なのか、遠くで見ていた僕だったが、想像はついた。
となると、きっとおぶられていた女の方がタヌキ寝入りでもしていたのだろう。
それで、男の方が「なんでそんなことをしたんだ」と問いつめているというところだろうか。それも容易に見当はついた。
いつもあの2人はそんな感じだから。
たとえ単なる幼なじみから、恋人同士になっても…
僕はあの2人とは、もう数年の付き合いになろうかという腐れ縁だった。
羨ましい、と正直思う。彼女にあんなに好きになってもらえるなんて…羨ましいという以上の感情はありえない。
今では、本当にそれだけ。
そう…少し前までは、それだけではなかったのだ。
…僕にはつい最近まで、メールフレンドがいた。
その相手こそが今、男と言い合いをしている彼女だった。
“実はおれ…好きな人がいるんだ。近すぎて、言えないけど…”
それが、最初のメール。
悪いと思いつつも、彼女のメールアドレスは彼女の幼なじみのあの男の携帯電話を見させてもらった。
違う誰かに送るように見せかけて、偶然を装うようにカモフラージュしたこのメール。
もちろん、返事がなければきっぱりあきらめるつもりだった。
僕だとは気付いてほしくなかった。少なくともその時は。
だから、文面も徹底して普段の自分の書き方と違うようにした。
だけど、書いている言葉は本当のこと…
僕のそんなメールに対して、彼女はどこの誰かも分からないはずなのに応援してくれた。
ただ…そうしてもらえた理由は、僕の気持ちとは相反するものだったのだ。
“私も同じなんだ。幼なじみがいてね、近い存在すぎて言えないの…”
…彼女の幼なじみにあてはまるのは、あいつしかいないから。
そして僕にとっても同じように近い存在。
複雑な心境だった。
そして、修学旅行を翌日に控えた日のこと。
その男から、その彼女が好きなのだと聞かされた。
僕は戸惑ったけれど…
やはり、一緒にいた時間が違いすぎて、もはや僕の取り入るスキはなさそうだった。
そして僕は、何も言わないで…
今まで彼女との間をつないでいた携帯電話…僕は、そいつにそれを貸し出してしまっていた。
「これを彼女に見せろよ」
たった一言だけ、言葉をかけた。
それは彼に僕の彼女への想いを暴露していることになるわけだが、僕は不思議と落ち着いていた。
そうして、僕は自分自身でこの気持ちにケリをつけたのだ。
そして今、僕の目の前では予想通りの光景が繰り広げられている。
…もう彼は、この事実を彼女に話したのだろうか。
いや、すでに話しているとしても、まだ話していないとしても。
きっとあの2人だったら、大丈夫だろう。
それは、本人たちの次に保証できる。
「がんばれよ…せっかく2人の時間を作ってやってるんだからな」
僕は彼らに背を向け、そして今までの楽しかった彼女との時間の記録…やりとりしていたメールフォルダの削除ボタンを押した。
今までの思い出を否定するかのように、それはほんの一瞬で消えていった。