MILD 25
MAIL FRIEND

 
 
『今日も好きな人と話すことができたんだよ。あなたのおかげだね』
「メール送信、っと…」
 携帯電話の画面の中の紙飛行機が、どこの誰だかわからない人のもとへと飛んでいく。
 それを確認した私は、大きく息をついた。
 誰だかわからない人にお礼を言うなんて、ちょっと照れくさいけど…
 でも、こんなにも気軽に私の恋の相談ができる人がいるというのは嬉しいし、何より心強い。
「もともとはこれ、間違いメールから始まったんだよね…」
 メールを送ったり受け取ったりするたびに、きっかけになった最初のメールを思い出す。
『実はおれ、好きな人がいるんだよ。あまりに近すぎて、言えないんだけどさ…』
 違う誰かに返事をしようとして、間違えたんだと思う。いきなり知らないメールが届いて、しかも内容が内容だけに、驚いたのを覚えてる。
 だけど私は、それ以上に感じるものがあった。
「あまりに近すぎて言えない…私と、同じだ…」
 それが、彼とのメールのやり取りの始まり。
 今はそれが逆転してしまって、私ばかり話を聞いてもらってしまっているんだけど。
 でも彼は、そんな私に親身になってアドバイスしてくれる。
 もちろん、それは今でも…
「あっ、もう返事来た…」
 この着信音を聞くのも、もう何度目なのだろう。
 すぐに見たって、文章は変わらないはずなのに、なぜかつい焦って見てしまう。
『僕のおかげなんて、そんなことないよ。きみが頑張っただけさ。そろそろ僕も君に負けないようにしなきゃいけないよな』
 …返事がくるたびに、どこか安心するのはなぜだろう。
 そんなことを考えながら、私はまたすぐに返事をしようと、携帯電話のふたを開いた。
 きれいな夜空の下、クラスメイトと一緒に百万ドルの夜景を見ながら書く返事。
 それは、もちろん…
『うん、そうだね。もうそろそろそっちも修学旅行の頃じゃない?その時に頑張っちゃおうよ!あ、そういえば言い忘れてたけど…今、私は修学旅行中なんだ〜!いいでしょ。あなたより先にうまくいっちゃったらごめんね!』
 そう、私は今、修学旅行の真っ最中。
 これを送った後に私は、アプローチをかけるつもりでいる。
 せっかく今まで応援してくれているのに、何もしないなんて、メールの相手にも申し訳ないから。
 でも、悪い結果になったら、きっともうメールなんてできない。
 だから…
「メール…」
 これが最後のメールとなっても。
「そうしん…」
 私は後悔しない。
 ボタンに手をかけた。
 その時だった。
「こんな時にメールなんて、いったい誰とだ?」
「わわっ!な…いつからそこにいたのよっ!」
 いきなり声をかけてきたのは…これからアプローチしようと思っていた幼なじみの人。
 そして同時に、はずみで私はメール送信のボタンを押していた。
「んー、そうだな」
 私は、声が出なくなった。
 …彼の携帯電話が、鳴っている。
 そしてポケットから取り出し、メール画面も見ないままに…
 
「偶然だな、僕も修学旅行中なんだ…と答えられるくらい、かな」