MILD 22
PURE ENERGY・1
夏休み。それはこの暑苦しい中での束の間の休息。
プールとか海に行ったり、涼しい図書館で寝息をたてて怒られる。
そんな、学校とは違って、至って平凡(?)な日々。刺激的なことも何もない。
普通、夏休みと言ったらもっと楽しいものだと思うけど。
「あーあ、ヒマだな…これだったらまだ学校行ってたほうがマシかな…」
なんて、さびしいことを1人考えてみたり。
…実は僕は、この夏休みの前に苦い経験をしている。
『好きな人ができた』、彼女のあの言葉がつい昨日のことのように思えてならない。
僕は道の真ん中でふと立ち止まり、空を見上げる。
あの時も、今日のように空は青く澄みきっていたのだろうか。
もう、それさえも覚えていない。あの出来事はそれほどまでに僕に衝撃を与えた。
思い出におぼれそうになって、目から熱いものがこみあげてきそうになる。
辛い。
正直言って辛い。
でも僕の心は空回りするだけだ。いくらがんばって手をのばしても、彼女がつかみかえしてくれることは…ない。
ふぅ、とひとつため息をつく。そして、新たな決心をする。
悩んでいたって、何も解決しないのだ。
だから、ほんのちょっとだけでも前向きに歩いていこう。
いきなり立ち直ろうとしても、それは無理だろうけど。すぐに心までも回復するとは思えないけど。
いつまでも上を見上げて過去のことを振り返ってばかりじゃいけないんだ。
僕は空に向けていた視線を、前のほうに戻した。
…そして、驚いた。
「セーンパイっ!どーしたんですか、こんなところでボーッと突っ立って」
すぐ目の前に、僕より一回り小さい女の子が背伸びをして立っていたのだ。
いや、どーしたのかって聞かれてもな…正直に答えられるわけがないじゃないか。
「そんなにボーッとしてたか?」
「はい!」
「ははっ、断言されてしまったな」
ちなみに彼女は部活の後輩。いつも会うと決まってこんな風に、お互い楽しく会話をしている。
さっぱりとしてて、純粋で、笑顔がかわいい。
僕の後輩としてはもったいないほどだな、うん。
「センパイ、お暇そうですね」
僕の心を見透かしているのかどうなのか…彼女はそう言いかけてくる。
なんだかんだ言っても、昨日フラれた彼女も同じ部活だったしな…そういうのを感じ取っているとか。
しかし、どちらにしても平常心でいなければ。自分から認めてしまったら、それこそ悲しくなってしまう。
だからといってカモフラージュできるような話題もない…
とりあえず、ここは彼女に話を合わせることにした。
「まあな。ヒマでしょうがないんだ。…お、そうだ。会ったのも何かの縁だし、これからプールでも行かないか?」
うん、なかなかの出来だ。彼女のことだから、『まーた、センパイったら変なこと考えてるんでしょ!』とかテキトーにかわされて、ここらでバイバイって感じになるに違いない。
ところが。
「はい!よろこんでご一緒させていただきます!」
あ…あれ?話が妙な展開になっているような…
なんか、本当にうれしそうにぴょこぴょこと飛び跳ねているし。
しかも、『じゃああと1時間後にプールの前で待ってます!』だと。
確かに自分から言い出したことだから…NOとは言えない。
最初から決まっていたかのように、話はトントンと進んでしまっていた。
「楽しかったですね、プール!」
「あ、ああ…」
いまだに僕は彼女に生返事しかできないでいた。
(意外と体のバランスとかいいんだな…この子)
なんて、不謹慎なことを考えてしまったり。
実際、彼女の水着姿はかわいらしかった。
まわりの目が彼女に向けられていたのも事実。しかもその視線に気づいていないようだから余計に目立つと言うか、小悪魔と言うか。
その彼女と一緒にいるという優越感からなのか、そばにいるだけで幸せになってしまう自分もいて。
なんか、安心できる感じだ。
ん〜、いかんいかん。フラれたショックから逃げようとしているだけのような気がしてならない。
「あ、あの…」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
しまった。僕が考えていたその対象にいきなり声をかけられたから焦って変な返事をしてしまった。悟られてしまったか…?
そう僕は構えたが、どうやら彼女は気づいていないようだった。
それどころか表情が固くなっているのに逆に僕のほうが気づく。
夕日に赤く染まった顔で、僕を見て離さない。
そして、新しい日々の始まりを告げられる一言が彼女の口から…
「センパイは今…フリーですか?」
To Be Continued....