MILD 20
SUMMER FESTIVAL

 いつもだったら静かな一本道。
 そこが、今日は道の両わきに、明かりがともっている。
 1年に1度しかかざられないちょうちんが、雰囲気をいっそう盛り上げてくれる。
 そう…今日は夏祭り。
 私はずっとこの日を、待ちつづけていた。
 なぜなら、私は今日…
 その時、私の後ろから私を呼ぶ声があった。
「よう!お、浴衣か?かわいいじゃん」
「あ、ありがとう…」
 私は突然肩をたたかれて声をかけられたのにびっくりしつつも、とっさに返事を返す。
 だけど、それは期待していた声ではなかった。
 私が、本当に声をかけてほしかったのは…
「なあ、おまえもそう思うだろ?」
 声をかけてきた人の後ろから現れた、ちょっとおとなしそうな男の子。
 私の胸が、トクンと鳴る。
「そ、そうかもしれないね…」
 彼が、私にようやく聞こえるくらいの声でつぶやく。
 ちょっとは…意識してくれてるのかなあ?
 それとも、ただ話を合わせているだけとか…
 私は、嬉しい反面、そんな心配を抱いていた。
 
 
 そう…私は彼に、一方通行の想いを抱えている。
 今までも彼にいろいろと話しかけてみたけれど、いつも彼から反応が返ってこないのだ。
 だからたぶん…一方通行。
「ね、綿あめ〜!お祭りの醍醐味だよね〜。一緒に買わない?」
「う、うん…そうしようか」
 私の気持ち、伝わってるかな?
 いつも私の考えることは、そういうことばかり。
 綿あめを買うことでみんなと一歩抜け出して、彼と肩を並べて、いつもと雰囲気の違う、でも慣れた道を歩く。
 それだけでも、私はよかった。
 少しでも、彼に近づきたいから…
「あ、花火もうそろそろあがるね!」
 グループのうちの一人が、そう言い出す。
 このお祭りのメイン、15分間だけの花火。
 そっか…もうそろそろなんだ…
「ね、ねえ…一緒に…見ない?」
 私は、覚悟を決めて最後にこう付け加えてみた。
「2人きりで…」
 すると、彼は…
 
 
「きれいだね〜花火!」
 私は、彼のほうを笑顔で振り向く。
 彼も、「うん」と、私だけにうなずいてくれる。
 彼の横顔が花火にてらされるたびに、私の心はときめく。
 しかし、本当にびっくりした。
『2人きりで…』
 私が、そう言った彼の返事は、
『も、もちろんだよ。だってさ…』
『な、何?』
 少しだけ、彼の顔が私からそむけられたが、その後また向き直ってこう言ったのだ。
『君のこと、ずっと好きだったから』
 私の中で、すべての時間が止まった感覚だった。
 顔が、熱くなっていくことだけは、ゆっくりと感じていた。
『浴衣姿にドキドキして…ぜんぜん声をかけられなかったんだ。ごめん…』
 そう、暗い中でもわかるくらいに恥ずかしそうにうつむく彼。
 一瞬の沈黙。
『は、花火見に行こうか…?』
 どちらからともなく、私たちは花火会場に向かっていた。
 そして、今。
 ずっと、抱いていた想い。それは、彼も同じ…
 初めて、共有できた瞬間。
 手は、ギュッとつながれたままだ。改めて彼の恋人になれたんだという感覚。
 そして、次の花火が大きく開かれた時…
 まるで言葉を交わしていたかのように、私たちの目が同時に合う。
 真剣な目で…目を閉じて…
 花火も、お祭りも、私たちのこれからを見守っていてくれそうな気がした。