MILD 18
RAINNING DANCE -COMMING SUMMER!-

「すっごーい!上手なんだね!」
 私なりの、精一杯の照れ隠しのつもりだった。
「えっ?そ、そんなことないですよ…」
 無表情で答える彼。
 私に対する、彼の丁寧な言葉が寂しい。
 私は学校のあとあまりにヒマなのでゲームセンターに来ていた。
 で今、1人の男の子に声をかけているってわけ。
「ねえ、このアイテムって何?もしかして無敵になるのとか?」
 今私の中でもひそかにブレイク中の、ひたすら地下を掘り進んでいくというパズルゲームの画面を指差し、とにかく彼に話し掛ける。
「ん?い、いえ…ちょっと僕にも…わかりません」
 ゲームに夢中になっているのか、彼は私の言葉を適当に流しているように思えた。
 しかもそんなことを言ってたのが悪かったのか…私が来てからあっという間にゲームオーバーになってしまった。
「あっ、もしかして…邪魔だった…かな」
「いえ、どうせ僕もこれくらいしかできませんし」
 一瞬、彼の言葉とは裏腹に、冷たい空気が流れてくるように私は感じた。
「え、えっと…これから用事はあるの?」
 この雰囲気を少しでも緩和しようと、私は言葉を続ける。
「あ、ちょっと今は…帰らないといけないので」
「そうなんだ…ごめんね」
 1つおじぎをして、彼はそのまま帰っていってしまった。
 
 
 私は世間で言う、『コギャル』の類に入っているかもしれない。
 もっとも、その呼ばれ方は好きじゃない。
 髪の毛を茶色に染めて、日サロに行って体を焼いたり、耳にピアスをしたり…
 今の時間にしかできないことを、たくさんやっておきたい。
 あ、でももちろん人に迷惑をかけるようなことはしないけどね…
 とにかく、そうすることで自分を満足させたかった。
 でも彼と出会ったあの日から一週間…
 私の心は窓の外で降っている梅雨の雨のように、放っておくと湿ってしまいそうだった。
 彼とそれからゲームセンターで会うことがあっても、ほとんど私から一方的に話し掛けるばかりで、彼から積極的に話し掛けてはくれない。
 私は、悩んでいた。
 この気持ちが彼のことを『好き』な感情なのかどうかは、正直言ってまだわからない。
 でも仲良くなりたいという気持ちに変わりはない。
 静かに降り続ける雨の音さえも気になって、毎晩眠れない夜が続いていた。
 
 
 あるどしゃぶりの日のゲームセンターの中に、私は入っていった。
 私の中のちっぽけかもしれない決意を胸に、彼を探し回る。
 彼は今日も…あのパズルゲームの前にいた。
 私の姿に気づかずに、黙々と真剣にゲームを進めている。
 私は邪魔を承知で、空いていた彼の隣の台のイスに座った。
 ふと、彼が私の姿に気づく。
 そしてその手が…止まった。
「おはよっ!なんだか今日は私、体が軽いような気がするなあ…ん?どうしたの?」
 私はわざとらしく、彼に尋ねてみる。
「いや、どうしたって…その髪…」
 どうやらかなり驚いたらしくて、今までやっていたゲームも何も手をつけないままゲームオーバーになってしまっていた。
「あっ、これ?どう、似合う?」
 そう…私は少しでも彼に気を引いてもらおうと、髪を黒く染め直したのだ。
 もちろんピアスも取って…それにしても本当にピアスを取るだけでこんなに体が軽くなるとは思わなかったなあ…
「に、似合うけど…なんでこんなこと?」
「だって…なかなか私と話してくれないし、もしかしてこういう格好が苦手なのかなーって思ってみたりして」
 彼との間にまた冷たい風が吹いてしまわないように、少しでも私は明るくおどけてみせる。
「どう…かな?」
 もう一度彼に聞きなおす私。
 うー、緊張するなあ。すぐ答えて欲しいなあ…
「え、えっと、なんというか…前からその…きれいな人だとは思ってたけど…」
 しかし予想していなかった言葉に、私は緊張を通り越す。
「えっ?今…なんて言ったの?」
「きれいな人だって…僕、女の人と話すのとか、苦手で…」
「なーんだ、そういうことだったんだ!」
 心配した私がバカみたい。
 外のどしゃぶりはすでにおさまって、晴れ間が見えはじめていた。
 そう、もうすぐ夏がやってくる。
 この先彼とどうなっていくのか…それはわからないけど、とにかく険悪な関係にはならないみたい。
 そうそう、このあと私、彼に黒い髪もいいといってくれたんだよね…
 たまには黒くするのも…いいかな?
 私はそう思いながら、彼に笑いかけていた。