離れていく心・第14回
理奈は、三度皆島海岸にやってきた。
今度は、二度と来たくないなんて言わない。
由紀だってあんなこと言うには、そうとうの覚悟が必要だったはず。理奈もそれに負けていられないと思ったから、ここに来た。
今回来た理由、それは『あの時卓也と一緒にいたのは誰か』ということ。
今日はいないかもしれない。けれど、くじけるわけにはいかない。
由紀が理奈に正直なことを言ってくれたように・・・・
理奈はあの場面を見てしまった時と同じ時間、同じ場所で卓也が現われるのを待った。
神社でのあの卓也の胸の中を、忘れることはない。
しかし、なんだかその時より心が離れていく気がしてならない。
理奈は待ちながらそんなことを考えていた。
すると・・・・
「なにやってんだ、こんなところで」
理奈の後ろから、聞き覚えのある声と共に、肩をたたかれる感触が伝わってきた。
実際に見る前から、誰かというのはわかっていた。
しかし改めて振り返ってみると、それこそ驚きは最高潮になった。
「た、卓也・・・・?」
この頃の偶然の重なりすぎ、タイミングのよすぎをすごいと思うと同時に、なんだか理奈は恐ろしくなってきた。
神社の時でもそう。あんなことが簡単に起こるものではない。
あるとすれば、恋愛小説くらいのものだ。
前にも同じようなことを思ったような気がするけど・・・・気のせいなのだろうか。
とにかく今、理奈の目の前には卓也がいる。
なにか話し掛けたほうがいいんじゃないか、理奈はそう思っていた。
けれど、何から話していけばいいのか・・・・沈黙はそこから作り出された。
ところが、理奈の気持ちが先走っているうちに、次に口を開いたのは卓也だった。
「偶然だな、こんなところで会うなんて」
「う、うん・・・・」
そのころには、卓也の顔を普通に見ることができなくなっていた。
「どうかしたのか?顔色が悪いぞ」
理奈のその行動には、さすがの卓也も心配してくれた。
「そ、そんなことないよ!」
「そうか?でもこの頃、いつもそんな返事ばっかだよな。なんか悩みごとか?」
その卓也の言葉に、理奈は内心、焦った。
昨日の自分が言った言葉にそっくりで、しかも、その話の内容が目の前にいる人のことなのだから。
なんだか見透かされているような気がした。
「な、悩みごとだなんて。こんな私が、悩みなんか持ってると思える?」
けっこう苦しい言い訳だと自分でも思っていたけれど、
「そういや・・・・そうだよな」
やはり変わらず卓也が単純だったのが良かった。なんとか切り抜けた。
それに、理奈が思っていたほど卓也は深く考えていたわけではなかったらしい。
「とにかく、こんなところにいちゃ暑いぞ。そこにでも入って涼もうぜ」
と、卓也は海の家の方を指差した。
「え、でも、そこじゃなくっても・・・・」
さすがに卓也の誘いとはいえ、もう少しでこづかい日の理奈にとっては少々きつい。
しかし、卓也はそれ以前の言葉を発した。
「俺は顔パスだから、安心しろって」
「え、どういうこと?」
なぜ顔パスなのか。なぜそれなら平気なのか。それがわからなかった。
「来ればわかるさ」
理奈は卓也の言うとおり、ついていくことにした。