離れていく心・第4回

「私・・・・どうすればいいんだろう」
 卓也と一緒に写っているツーショットの写真を、理奈はあおむけになって両手をかざして手に持って見てみる。
 じっと見つめているだけでも、今では心が締め付けられるように、つらくなる。
 理奈は昨日のことを吐き出したいという意味合いも込めて深呼吸した。
 けれど、昨日のことが消えてくれるわけではない。
 卓也に責任はない。だけどできてしまった気まずさはある。
 言うならば、運命のいたずらというものかもしれない。
 その頃すでに時間は午前五時をまわり、日の出が近くなってきた。
 まわりに見える家も、だんだん太陽の色合いが強くなってくる。
 鳥は太陽の恵みを受ける手前だからか、いっそう元気にさえずりはじめている。
 風もさらに負けないくらい、木を揺らしている。
 トラックの音に混じって、電車も動きはじめている。線路のつぎ目の音がいやなことを忘れられるくらいではないけど、心地よい。
 ゴロンとあおむけになり、自然と目の向いた東の方をほおづえをしながらしばらく眺めていると、ちょうどそこには、太陽の一部が顔を出していた。
 起きてからしばらくたっているけど、やっぱり太陽はまぶしい。
 新しい一日の始まり、けれど理奈にとってそれは最悪なこと他ならない。
 鳥肌のたちそうな肌寒さを感じ、理奈は扇風機を止めた。
 とその時、ベッドが一度揺れた気がした。だが、それもそのはずだった。
「なにかあったの?」
 その声は扇風機の止まっていく音と共に、起き上がっているらしい音と一緒に上から聞こえてきた。予想が確かなら、たぶん窓ガラスの上の方に・・・・
 理奈の思っていたとおり、ベッドから五十センチ先のそこに窓の反射で理奈を見ている姉の顔が写っていた。いつも寝る前に話をする視線だ。
 明るいのでうっすらとしか見えないが、表情はだいたいわかる。
 目がしっかり開いている。どうやらけっこう前から起きていたらしい。
「起きてたの?お姉ちゃん」
「ん・・・・さっきあんたがガツッと頭ぶっけたときに」
「ごめん・・・・」
「かなり思い悩んでいるみたいじゃない。あんたにしては珍しいよ。今まであまりたいした悩みもなかったくせに」
 ひどい言い方だけど、本当のことだし反論は出来ない。
「うん・・・・」
 すると姉は一間おいて一言、
「ふーん。恋の悩み、それも重傷か」
 心臓が一回、激しく上下した。今までもそうだったけれど心の内がよめるのか、見事的中される。言う決心はいらなくて助かるけど。
 実際、姉は相談相手にぴったり。いつもまじめに聞いてくれて・・・・
 言葉遣いはちょっと悪いけど、尊敬してる。
「ねぇ、アドバイスしてくれる・・・・かな?」
 理奈は、今までのことを正直に、話せることすべてを話していた。
 今回の悩みは、簡単には解決しそうにもない。