瞳の先に

すぺしゃるさんくす
くーねーvvv


 

初夏の街並み
若い緑がそれを縁取り爽やかな印象を与えて。
香る風
思いきり吸いこめばココロが軽くなるようだ。

オレの生まれた季節は
オレが一番スキな季節でもある。

 

 

思い通りにいかないコトなんていくらでもあった。
些細なことから。
我慢がならないことまで。それこそホントにいくらでも…

人間16年も生きてくればそんなものも結構積み重なるものだ。
その経てきた年数も今日で17となる。

誕生日など特に感慨はないけれど。
性格からか周りが放っておいてくれなくて。
今年も幼馴染のあいつがパーティーと称してどんちゃん騒ぎを計画してくれているらしい…

明確な目的ナシで生きてきた16年はそれはそれで楽しかったけれど。
この1年は頓に。
手に入れたいモノができたから。
そこに謎があるのに気付いてしまったから。
時間の流れがまるでこれまでとは違う…そんな日々を過ごすことになった。
まるで扉を開いて新しい世界に踏み出したように。

そんな中で出会った奴は…
オレとは正反対の立場にありながら不思議と同じ視点。似た境遇を分け合っていたりして。
オレのかまいたい衝動をひどく刺激した。

これまでだって自分の考え通りに物事が運ばないなんてことは日常茶飯事だった。
それにイラついたり。しかたないかと諦めたり。なんとかならないかとジタバタしてみたり。そんな風に生きてきたはずだった。
それが経験というものだし。それを踏まえて人間大きくなっていくものだって。そんなこと解ってたはずだったのに。

けれど。

表の学生としての顔ならともかく。
白い怪盗としてのオレに我慢させるなんざいい度胸してやがる…

 

 

久しぶりに少し足を延ばして来てみたそこは。日の光のもと本当になんでもない街角にあった。
以前必要に駆られて調べた住所地はそこで探偵事務所を営んでいる「有名な探偵」のおかげですぐに知れたし。
大きくその名前が書かれた街路に面した窓のおかげでますます迷いようがなかった。

立ち止まり見上げてみる。

さて。どうしようか…

1度は正攻法で。
2度目はちょっと捻った手を使って誘ってみたがモノの見事に撥ね付けられた相手だ。

ふん。

オレさま相手にそこまで邪険に断りを入れるとは全く度胸がいいのを通りすぎて無謀というものだよ?名探偵。

 

「エッグ」の件ですっかり世話(?)になったオレは。
借りたモノはちゃんと返しましょうな精神で折り良く訪れる自分の誕生日にかの名探偵を招待するのを心ひそかに誓っていたんだけど…
イロイロ事情がある身としては素直に応じてくれるはずもなく。
思いきりいぶかしまれた挙句…蹴られた。

ちゃんと正直に名乗ったのに。

すごーく楽しみにしてたのに。

どうしてくれよう。
ひとの好意を踏みにじる悪いコにはそれ相応のオシオキが必要だよね。うん。

見上げた先の窓には人影は映らず。目指す相手がいるかはここからは定かではなかった。

 

青子には「ひとり増えるかも」と既に言ってある。
そうさ。
ホントに真正面。隠し事ナシで招待するつもりだったんだ。

あの時。
目の前で消え失せたオレを。律儀にも鳩たちを空に見送って見せた奴は。
なんとも言いがたい瞳をしていた。
どうしてそんな瞳をしてるんだとすぐさま問いただしたいほどに…

探偵に…。それこそ「名」と冠するまでの上等な探偵に。
あんな簡単なマジックがバレていないはずはない。
なのに奴は。まるで本当にオレが空へ飛び立ったと心底思っていたがごとくその姿勢を崩さなかった。

 

ドロボーなんかには興味がワカナイってか?
だから敢えて追おうとも思わない?

なんだか悔しい。一課専門だなんて…んーなのアリかよ。
かのホームズだってドロボーも相手にしてたじゃんかよ。
あー。
フラれてからなんだかんだと考え続けでいい加減煮詰まってきたかも…
もううだうだしてないで拉致して連れてっちゃうか。

もう1度お目当ての窓に目をやってみる。
やはり姿は見えなかった。

 

 

next→