うさぎのはらのクリスマス


サンタクロースはいる?いない?

小さなその子の問いかけにホントの答えはたったのひとつー・・・





気の早い街中のイルミネーションに、やっと季節も追いついてきて。クリスマスの飾りつけも不自然では無くなってくると。どちらからともなく、子ども達の話題もクリスマスが中心になる。

探偵団の面々も、言わずもがな。クリスマスが近づくにつれ、ソワソワし始めてはいるけれど。話題といえば、貰うプレゼントの事に終始していた。

「何仏頂面してるの?」
面白そうに人の顔を覗き込むと、灰原は、「今時サンタクロースを信じてる子の方が珍しいのよ?」と笑った。

そりゃそうだよ。分かってるけどよ。オレがコイツらと実年齢が違わない頃も似た様な会話を繰り返してたハズだし。

むっとしながら「うるせー」と返すと。光彦の「歩美ちゃん?」との呼びかけが聞こえて。やけに心配そうだったから、思わず声のした方を振り向いた。


歩美は。その足を止めて、ほんの少し先の地面をじっと見詰めて。ふっと小さな溜息を吐いた。

「・・・歩美ちゃん?どうかしたの?」

江戸川コナンとして呼びかけると。顔を上げてにこっと笑う。・・・なんでもないの、と。

だけど、それが無理にした作り笑いなのは、歩美の笑顔を見慣れているヤツなら誰でも分かる事で。

「あの、私・・・忘れ物しちゃったから、学校に取りに戻るね。皆は先に帰ってて?」
そう言い残して元来た道に駆け出す。そんな歩美を止める事すら出来なかった。

「・・・信じてたんじゃない?彼女・・・」
「・・・・・・・どうしましょう・・・」
「歩美に悪いことしちまったよな・・・」

一瞬にして水をさされたかの様にしょげかえるヤツらに。「大丈夫だよ、オレ、ちょっと様子見てくっから。オメーら、先に帰ってろ」と声を掛けて。同じ方向へと駆け出した。


途中で完全に見失ってしまって。学校まで戻ったけれど、そこに歩美の姿は無かった。

学校じゃないのか・・・?

思いついて、眼鏡で歩美のバッジの反応を探ると、思ってもみない所に灯りが灯っていた。時々小さく動く所を見ると、落としたワケでも無さそうだ。

でも、なんでそんな所に?

不思議に思いながら、歩美の所へと急いだ。


探していた背中を見つけたのはやはり其処で。機械の故障でも何でも無かった。

向こう側に誰かが居るのだろうか。こっそり壁に身を隠している歩美ちゃんに、背後からそっと声を掛けると。びくっと驚いて振り向いて。相手がオレだと分かると、ふうっと溜息を吐いた。

「何見てるの?」と問い掛ければ、こっそりその身を隠したまま、そっと指を指す。その先には、小さな動物用のケージがあった。

「ここね、歩美が来てた幼稚園なの・・・。あれは、幼稚園で飼い始めたうさぎなの。まだ赤ちゃんなのよ。」
「ふうん?触りたいの?」

卒園生なら、まだ残っている先生に頼めば触らせてもらうくらい、なんて事無いんじゃない?と言うと。「違うの」とまた溜息を吐く。

「ほら、この間、歩美授業中に熱が出たから途中で帰ったでしょう?・・・その時にね、懐かしくなって・・・幼稚園の先生に会いたくなって、ちょっと寄り道しちゃったの。・・・その時にね、歩美の担任の先生だった日比野先生が、クリスマス会の練習だったのかな、ここで歌をね、クラスの子と練習してたの。」
「うん」
「コナン君知ってる?うさぎのはらのクリスマスって歌なんだけど」
「・・・知らないなあ」
「あのね、簡単に話すと、うさぎがサンタクロースに僕にもプレゼントを下さいってお願いしてる歌なんだけど」
「へえ、可愛い歌だね」
「うん、私も日比野先生に教えてもらったよ。すごく可愛いの。」

歩美の笑顔を見ると。その先生との思い出は大切な物なのだろう。

「それでね、年長さんの男の子がね、サンタクロースなんて居ないのに、そんな歌歌ってもしょーがないって言い出して。いるもんって言う子とケンカになっちゃってね。」
ああ、これくらいの年だとよくあるんだよな、と自分の幼かった頃を思い出す。
「・・・先に相手を突き飛ばした男の子が注意されたんだけど、その子、一番小さい組の子にね、サンタクロースなんていないんだって教えて回って・・・それがすごくショックだったの。私も、一番小さい組の時に、一番大きい組のお兄ちゃんに、サンタなんていないって言われて・・・だから・・・」

「・・・先生に相談しに来たの?」
「ううん・・・」
「じゃあ、その男の子に注意しに来た?」
「・・・ううん・・・」
「そう言われてた小さな子に、会いに来たの?」
「・・・・・・・・・・・わかんない・・・」

小さく、どうしてなのか分からない、と再び呟いて。歩美はまた口をつぐんでしまった。

「じゃあさ、歩美ちゃんは・・・サンタクロース、信じてる?」

一瞬走った動揺の表情は。紛れも無く真実は知っているのだろうといったモノで。ぐっと涙を堪えて、「・・・・・・・いるって・・・信じたい。・・・・・・いても良いじゃない、いてくれた方が素敵じゃない・・・」と答えた。

それは紛れも無く心からの言葉。



「うん・・・オレもそう思う。」

「コ、コナンく・・・」
肯定された自分の言葉に。涙腺が緩んで、いつもの歩美になった。泣き虫の・・・。


「どうしたい?」
「さ、サンタさんがいるかもしれないって、あの子達に思わせたい・・・」
「そうだね。どうしよう・・・阿笠博士にサンタクロースの格好をしてくれって頼むってのもアリだけど。それくらいは幼稚園の行事でもあるよね?」
「うん。今度の日曜日に、発表会と一緒にやるんだって・・・」

「それなら・・・大勢で考えた方が良い案も浮かぶんじゃないかしら?」

背後から聞こえた声に振り向くと。灰原も光彦も元太も揃って、そこに居た。
「オメーら・・・」
「抜け駆けはナシですよ、コナン君・・・!」
「そういう事ならよ、オレ達も協力出来るからよ」
「みんなぁ・・・」

泣き出した歩美に。目立ってはいけないからと、全員で阿笠博士の所へと急いだ。