東西高校生名探偵の通話記録。
「オウ、悪ぃ、昼間電話掛かってきてたんだな。今気がついて」
「ああ、あの件やったらもうエエんや。それより何や?」
そんな会話から始まった、真夜中の電話。この時点では、大阪、東京間の距離は全く感じられなかったと言えよう。
「―てなワケで、昨日今日・・・まあ、正味1日かな、あちこちしてたんだよ。」
掻い摘んで1日分の行動を話すと、電話の向こうの彼は「そいつは難儀やったなァ」と茶化す様に笑った。ついでに言ってしまうとその笑ったタイミングも良くなかった。電話だけに相手の表情の移り変わりがチェック出来ない事もこの場合、西の高校生探偵に不幸をもたらした要因の一つと言えよう。
「オメーも出てたぜ・・・その小説に。」
「オレの事やから、オトコマエのエエ役やったやろ?」
「どーだか・・・。ああ、一応オメ−にも容疑が掛かるトコだったんだぜ。」
「そ、そーなんか?何で?」
「・・・深読みすればの話だけどな。」
「解けたんやろ?」
「んー・・・まあ、な。」
「何や、浮かへん返事やな・・・」
「・・・別に、推理自体はその時の状況が全て出揃ってしまった状態なら簡単なんだ。その人の所に行かせようという意図から、途中で切った物語は、わざと条件を欠いたものだったんだけどな。でも、博士にも蘭にも、灰原にも不可能な状況が、彼にだけは『用意されたシチュエーション』とでも言えるべき状況だったんだよ。」
「ほぉ・・・聞かせて貰おか。」
「話を最後まで読んでしまえば明確以外の何物でも無いんだ。誰もが触れられる事を気にしない場所。つまり、受付だな。外から屋内に入るんだ、コートなんてかさばる物を立食パーティになんて持ち込む人間は居ない。当然、受付で脱ぐ事になる。その時、ちょっと手伝ってやれば、彼には可能だろ?園子の場合はコートを脱がせた後、背中に貼り付けてショールを羽織るのを手伝えば、ショールの下に紙が隠れていたのも簡単に説明がつく。光彦にはオレ達が軽装だし、室内は暖かいと思うから、と脱ぐ事を勧めて、いざ入ったら少し寒いから風邪をひいてもいけないし、ともう一度羽織らせてしまえば良い。その時に貼り付ければ良いんだ。」
「ほー・・・なら、何でわざわざお前に見られる危険を冒してまで二人を選んだんや?おかしいやないか、お前の身代わりとはいえ、阿笠っちゅージイさんは一応『事件を何度か解決した事のある名探偵』扱いなんやろ?」
「それを言えば貼り付けられた本人である園子もそうだろ。まあ、はっきりとした事は言えねーけどよ・・・警察の関係者は皆『自分が貼られていたら日本警察の威信に関わる』って背後を気にしてただろうし、そういう意味では僅かな人数しか居ないものの、部外者のオレ達は格好の標的だったんだろうな。下手に身内に貼り付けて、自分にも疑いが掛かるのは避けたかっただろうし。」
「まあ、そんなトコやろなー・・・。でもそれやったらあの高木っちゅー刑事にも出来たんと違うか?」
「バーロ、探偵団を迎え入れたのは千葉刑事だけだったんだ。その場に居ない高木刑事には光彦の背中に貼り付けるなんて事、出来っこねーよ。」
「・・・オウ・・・」
「ちなみに、会場内が最初寒かったのは、光彦の『1』より先に、園子の『2』が表に出ない様にする為さ。園子が白馬を見かけた所為で、実際は『1』より先に『2』が見つかっちまったけどな。」
「ほか・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・何や、どうかしたんか?何黙っとんのや・・・」
「・・・・・・・・・・・・・で?オメーが貰ったのか?」
「な、何をや?」
「『大切なものの本当の姿』だっけか?」
「なな、な、何を言うて・・・」
「今更とぼけてんじゃねーよ、これって先週の事だろ。オメーがいきなりこっちに来て、要領を得ないままにあちこち連れまわすから、妙だなとは思ってたんだ。」
「・・・た、たまには工藤と二人で出かけたい思ただけで、何でそんな言われ様されなアカンのや。」
「・・・・・・・・・あくまでとぼけるつもりか、テメー・・・」
「そない言うたかて、知らんモンは知らん・・・」
「オメ−、一つだけ大きなミスやらかしてたぞ。」
「え?」
「オメ−の携帯は黒のストレートタイプ。オレのは白のフリッパータイプ。どーやって間違えるっつーんだよ。」
「あ・・・!あれは今度工藤と同ンなじのに買い換えよかと思て・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・あ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・オメーもほんっと犯人には向かねーよな・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・やっぱあん時だな?」
「知らん!オレは何も知らへんっ!」
「着信履歴探ったら、受けた覚えのねー蘭からの着信が記録されてたぞ。ちなみに言わなくても分かるだろーが、しっかりと『着信通話』でな。」
「・・・・・・」
「・・・どーしても教えねーつもりだったらもう良い。」
「そ、そか?」
「ああ、そーだ。オメ−は何も伝言受けてねーか?何か預かったりとか。」
「・・・え?」
「実は、オレの大切な人に辿り着く問題って事で、その小説がキーワードになってたんだ。」
「そーやったんか。」
「んで、オレが辿り着く面々が皆「一番」なんだよ。」
「皆が皆一番やったら話にならへんやないか・・・。」
「ああ、でもその法則から行くと、オメーは1番じゃねーよ。」
「え?お前の大切な人やろ?」
「だからだよ。」
「1番や無ぉて、特別〜・・・っちゅーんやろ!」
「いや?・・・2番だな。」
「に!?」
「いや、オレ自身はもっと後ろでも良いんだけどよ、仕方ねーよなー2番しかねーんだから。」
「な、何でや!?」
「さあなー。オメ−の胸に聞けよ。じゃーな。」
こうして通話は一方的に切られた。
その晩、大阪では二番、二番、と呟きながら、携帯を耳にあてたまま血の気の引いた西の高校生探偵の姿があったという。