その後姿に
「おお、金田一!」
小さな背中を見送る俺に、背後から聞きなれた声が呼びかけた。
「剣持のおっさん・・・」
名を呼びながら振り返ると、おっさんは随分疲れた様子だった。
「何してんだ、こんな所で。」
「それはこっちの台詞だろー?」
「年の瀬だからな、非番だからと家でゴロゴロしているくらいなら、と買い物に付き合わされたんだ。」
そう言いながら、ほら、とジャケットを見せる。なるほど、いつものスーツ姿とは程遠い。折角米花まで出かけるんだからと着させられたんだ、アイツの趣味だけど俺にはどうも窮屈で、とおっさんは肩を竦めた。
「そっか・・・」
「こんな格好をしていても、させられる事は同じなんだがな・・・」
まあ、そんな所だろう。付き合うと言っても、大方荷物持ちだ。アドバイスなんて、される事はあっても求められる事は無いだろう。さっきのアイツと違って、俺たちはそういう扱いをされる側の人間だ。もっとも、真面目にアドバイスを求められても困るのだが。
「それよりお前、あのちびっこ探偵と知り合いだったのか?」
「ん?おっさんあの子知ってんの?」
「知ってるも何も・・・同じ一課に目暮ってのが居るんだが・・・その警部のトコによく出入りしてるんだよ。ほら、前に話しただろ。」
「あれ?『目暮警部』んトコのお抱えは『工藤新一』じゃなかったっけ?」
流石に自分とは違う形ではあるが、騒がれていた同い年の探偵の事は、新聞やテレビなどで知っている。おっさんからも、その活躍ぶりはよく聞いてたし。俺も、そういう風に世間に公表してしまえば良いのに、と言われたけど・・・。そういうのはガラじゃない。そんな大々的に扱われたら、おちおちコンビニで立ち読みも出来やしない。まあ、アイツはそんな真似はしないだろうけど。
「それがな、何だか難しい事件を追って姿を消してるとかで今は居ないんだ。で、それと入れ替わる様に現場でチョロチョロし始めたのがあの子だそうだ。目暮はあまり気にかけていない様だが、鑑識のトメさんや目暮の下の佐藤君なんかは随分可愛がってる。」
ふうん、とその背を見る。
「そっか・・・」
姿形が美しいというだけなら、明智警視もそうだ。
まあ、もっとも、明智警視の場合は、口を開けば出来すぎで砂を吐きそうなくらいの過去の自慢話を聞かされるワケだけど。
「アイツの棘は自分自身に刺さってそうだよな・・・」
綺麗な花には棘がある。ただ、アイツの棘は内側に向かっている、そんな感じがした。
「・・・なあなあ、おっさん、・・・アイツさー、やっぱ将来警官目指してるわけ?」
あんな小さな頃からか?と剣持のおっさんは苦い笑みをこぼしながら、ああ、でも、と続けた。
「佐藤君から、刑事にならないかと誘った事があると聞いたな・・・。」
「・・・へえ?それで、アイツ、何て答えたの?」
「おいおい、あの子がそんな年齢になった頃には・・・」
「いーから。何て答えたか聞かせてよ。」
ふ、と一呼吸置いて。おっさんは少し戸惑いながら口を開いた。
「・・・探偵になるんだと、はっきり断られたらしい・・・」
「・・・探偵・・・」
「・・・・・・まあ、あんな小さな子だ。その内他にやりたい事が見つかって、なりたい物も変っていくんだろうけどな。」
ふと零した苦い笑み。おっさんにもそんな覚えがあるのだろう。でも。
「なるんだ、じゃなくて、もうなってんじゃん・・・」
「へ?」
そっか。
そうだな・・・。
刑事だと、管轄とかしがらみとか、色々あるだろうけど。アイツにはそんなもの、似合わないよな・・・。もっと、自由に謎を解く為に、あちこち飛び回ってる方が、アイツらしい。
いつか、何かの事件でアイツと再会した時には・・・アイツの「大切な人」の写真、拝ませてもらえるかなー・・・。アイツなら持ってそーだし。俺も、美雪の写真見せて、それで二人で幼馴染の女の子について話すんだ。結構、普通の話とかもしてみたいよな。食い物とか、読んだ小説とか、何気ない日常の話。・・・・・・それから、何であんな事になってんのかも。
・・・同じ探偵として、アイツの事件に首を突っ込む事はしないし、されたがらないだろうけど。事情があるみたいだし、差し支えなかったらで良い。聞かせてもらえれば。
最初は嫌がるかな・・・今日みたいに・・・。でも、応援するくらい、良いよな?
「頑張れよ、工藤・・・」
今はもう見えない背中に、囁くようにエールを送った。
あとがき
はい、2002年のリレーのおまけのラストです^^;
お間抜けな事に、既に書き終えてアップしていたつもりでいてうっかりしていました、すいません><;当時のままの書き出しに眩暈を感じてしまいましたので、改めて書き直しさせていただいてました。
読まれていない方の為に補足しますと、コナンくんと彼の遭遇というリレーだったんですね。もう、説明するよりそちらを読んでいただいた方が早いという^^;
金田一君、好きなんですよvで、リレーで出しちゃいまして。でも、明智警視も剣持警部も好きなので、ちらっとでも出したかったという…そんなオマケの部分です。
そちらのリレーのお話を先に読まれていない方には「なんだ?なんだ??」だと思うんですけれども…。くーねーがアップしてくれてますので、そちらをどぞ。
2001年が事件モノ、02年が日常生活モノ、03年が謎解きモノ…と来て、今年は日常生活かと思ったのですが、今年も事件モノです。…快ちゃんモノ=事件モノというのはちょっと違うかもしれませんが…。快ちゃんVSコナン君の図式が成立するはず…その予定、です…^^;