東の名探偵「工藤新一」のあまりに工藤新一な日常 <たまには…編>
くみくみねーちゃん
「いやあ工藤君!!全く君の推理にはいつも感心させられるよ」
「おかげで今回の事件もスピード解決だ。本当に君は日本警察の救世主だよ!」
バンバンと背中を叩かれて我に返る。
「いえいえ。」と上の空で答えつつ、警察関係者以外立ち入り禁止の黄色いテープを潜って外へと出た。
とたんに浴びせられる嬌声とフラッシュの嵐…
「工藤君!こっち向いてくださあい!」
「こっちも!こっちもお願いしまあすっ!!」
いつもの風景がそこにある。
彼らが求めるのは名探偵。蓄えた豊富な知識と何物をも逃さない洞察力を持つ…。そしてそれを背景に、柔軟性に富んだ推理力を発揮する真実の追究者だ。
常に正しい道を指し示す完璧さ。
揺るがない信念と前だけを見つめる真摯で純粋な思考。
オレがそうありたいと願ったホウムズのように…
彼らはオレをその「名探偵」と簡単に位置付ける。
しかし…
オレは果たして本当にそうなれたのだろうか…
「疲れてるんじゃない?」
そう言ったのは幼馴染の女の子。心配そうな顔をして。そんな表情をさせようとは1度だって思ったことなどなかったのに。
探偵に…名探偵になるんだ!と誓ったのはいつの頃だったろう。
それは多分に父さんが推理小説家であったことに起因しているはずだった。
勿論血のつながった父親にせよ、自分以外の人間に己の先行きを左右されるなどまっぴらだったが、警察からの要請を受けてたびたび現場へ赴くその姿は子ども心に強い憧れを持たせるものに違いはなかった。
誰も気付くことのない「真実」
光輝くようなそのただひとつのものをどこにあろうとまごうことなく捉える本物の探偵。
そうなりたいと祈るほどに願ったのはもう随分昔のはずだ。
小学生の頃はよく現場に連れて行ってくれた父さんは、オレが中学生になったあたりから…
そう。それはたぶん「探偵になりたい」という希望が漠然とした夢などというものではなく、将来の明確な目標となった頃にあたる。
そのあたりから父さんはオレを現実の事件からシャットアウトしてしまったのだ。
「実際の事件はね。人と人との感情の…。ほんの少しの摩擦から起きるものなんだよ。ただの謎解きのゲーム感覚ならもうやめなさい」
どうしてか?と尋ねた時に返った応えはこうした簡単なものだった。
その時はそれが何の理由になるのか解らなかった。
罪を暴くと言った意味での誇らしさは、法とか良識とかに裏打ちされた非の打ち所のないもののはずだ。
犯した罪は償われて当然。被害者がいるのならなおさら。罪を隠して何食わぬ顔で今まで通りの…。いや。その犯罪で得たたぶんその人間にとってより快適になったはずの生活を送ろうなんて虫が良すぎるではないか。
その時に犯罪者から提示される謎を解くその作業を、追い詰めるスリルとして味わって何がいけないというのか。
そう思った。
なのに。
いつしか感じるようになった後ろめたさはなんなのだ。
見えてしまう罪を犯した者の思考。
実際の現場に出て触れる生の人間の想いの不可思議さ。
例えば殺人事件で言うならば…
殺された者も殺した者も人間なのだというあまりに簡単で明瞭なその事実。
オレの求めた「真実」と言うものは本当にただひとつのものなのか?
もうそんなことでさえ今の自分には解らなくなってきているというのに…。
簡単に世の人は言うのだ。「工藤新一は名探偵だ」と…
「お疲れさまだったね」
「いえ。また難事件があればこの工藤新一にご依頼を」
「頼りにしてるよ。さあ。送っていこう」
「あ…。いえ。今日は…」
「ん?何かあるのかね?」
「…ええ。まあ…」
「だが新一君。この報道陣の中をどうやって…」
「そうですね…」
目を辺りに移すと、その表情が変わったのを見て取った複数のカメラのフラッシュが再び眩く光る。
「こっそり抜け出しますよ。こんな特殊な場所にでもいなければボクはただの一介の高校生に過ぎないんですから」
「何を言っとるんだね。君の卓越した頭脳にはいつも感服してるんだよ。」
最初、偶然乗り合せたロスへ向かう飛行機の中で起こった殺人事件で顔を合わせた時は、「あの工藤優作の高校生になった息子」という目でしか見ていなかった警部も今ではこうである。
あれからどれほど自分が変われたかなんて少しも実感はない。
変わったのは周囲の目だけだ。
こうして事件を解く度に美化された虚像だけが一人歩きしていく。
警部の言葉に苦笑を返す。
「新一君?」
「…いえ。じゃあ。高木刑事にお願いしてみようかな…」
「ん?」
「ボク制服できてますから。このブレザーと目立つネクタイだけ交換してしまえば…。きっとみなさん見間違えちゃいますよ」
「そうかなあ」
「本ででも顔隠しながら裏口からパトカーで出てくだされば…。きっとね」
いたずらっぽくウインクして見せると困った子だとでも言うように微笑んで、それでも「高木くん!」と呼び寄せてくれた。
そんな風にしてやっと得たひとりの時間を今。オレは人気のない電車の車両で過ごしている。
こんなことをしているのなら、さっさとパトカーで送ってもらって家で寛いだほうがよさそうなものだ。
そうは思ったが、今日はあの家でひとりでいるのがイヤだった。静かで落ち着くことのできる環境を与えてくれるそこは、つまらないコトでさえ深く深く考えてしまいそうだったから。
今日あったこと。
昨日あったこと。
その前のこと…
自分がしたこと。
相手がどう反応したか
それを自分がどう思ったか…
どう考えたか
どう感じたか
これから自分は何をすべきか
頭を振って自分を取り戻す。
こんなところでさえ落ちて行きそうになる弱い自分の精神に笑いがこぼれた。
目を閉じて線路と車輪の作る音に耳を傾ける。
規則正しいそれは鼓動にも似て何故だかとても落ち着いた。
強くなりたい。
切なくなるほどそう思う。
でも今は。
とても疲れてしまったから。
今日だけ…
そうたまには…
薄れていく意識の中で「カッコつけてないで早く帰ってきなさいよ」と誰かが言ったような気がした。
くぬぎより
うわああああ!新一にーちゃんだあああvvvv
くーねーちゃんのサイト、「こなんくんのへや」で、1412とった記念にいただきましたvvv
910番に1412番・・・なぜだかくーねーちゃんとこではキリ番踏みまくり状態のくぬぎvvv
うう、幸せモード全開ですvvv
で、「たまには・・・」(ぎゃらりぃ4に入ってます)の、物議をかもした(?)新一にーちゃんにお話をつけてくださいましたvvv
そう・・・あのイラストは、こんな新一にーちゃんの心境を表していたつもりだったんですね(^^;
(決して脱いでいたのではないんです(^^;)ただただ疲れていたんです〜)