「決意」
byはすみ
「組織のアジトが分かったぜ」
それまで、何を言っても大した反応を見せなかった哀が、初めて顔色を変えた。
「組織のアジトが?」
「ああ、ここだよ」
仮の名を江戸川コナンと名乗る探偵、工藤新一が、地図を広げて“ある場所”を指さす。
宮野志保という本名を持つ灰原哀は、コナンが指さしたところに視線を移した。
「何よ、ここ。横須賀じゃない」
哀は少し驚いた口調でコナンの顔を見上げる。
「何か変なのか?」
「別に変じゃないけど…。ここから近いわね」
「そうか?」
“近い”という言葉に、コナンは怪訝な表情をした。
「近いわよ。本拠地ってくらいだから、海外にあったとしても驚かない覚悟はしていたわよ?」
哀はさらりとコナンの言葉に返答した。
「海外ねぇ…。んなとこにあっちゃ、俺たちからは、手も足も出ねぇよ」
「当たり前じゃない。簡単に手出しできるようなところに、組織が巣くってるとは思わないわ」
哀の言葉に、その場はしばし沈黙に包まれた…。
「それもそうだよな…」
「そうよ」
哀はそう言って、ふいっとパソコンの方に移動した。
横須賀の地図やら写真やらが掲載されている、恐らくどこかのホームページなんだろう。
哀がキーボードを打つリズムは、軽快に部屋に響いた。
「これがその場所の詳しい情報よ。もっとも、組織のことなんか、微塵も書いてないけどね」
哀がそう言って、何枚かの紙の束を渡す。
「なるほど?このビルの地下が本拠地ってことか」
「みたいね。どうする?情報を集める?」
「……決まってんじゃねぇか。乗り込もうぜ、そこに」
コナンの言葉に、哀は目を見開いた。
「……何言ってるのよ、あなた」
コナンの目は輝いていた。
無謀。
無知。
恐ろしさを、分かっていないのね、工藤君。
「行こうぜ、すぐにでも!」
そう言うと、コナンは立ち上がろうとする。
哀は呆れた表情でそれを止めた。
「バカじゃないの?殺されたいわけ?」
「大丈夫だって。俺が何とかしてやっから」
…何が大丈夫なのか、さっぱり分からない。
そんなんだから、いつも危険が付いて回るのよ。
哀はコナンを突き飛ばした。
「あなただけで…」
「いでっ! 何すんだよ、灰原っ」
しりもちを付いたコナンの言葉を、哀は聞かずに、うつむいたまま続ける。
「あなただけで、どうにかなる相手じゃないのよ!」
キッと顔を上げた。
表情とは正反対に、心が震えていることを、あなたは分かっているの?
私が今、どんな想いで喋っているのか、あなたは知っているの?
「死ぬわよ、あなた。組織は手加減なんか知らないわ。分かってるの!?」
哀の唇からは、言葉が止まらずに飛び出る。
どうして、こんなに言葉が出てくるんだろう。
このままじゃ、止まらなくなる。
でも。
それでも、絶対に行って欲しくない。
だって…。
そのまま、哀は崩れるように座り込んだ。
「じゃあ…」
しばらく黙っていたコナンが口を開く。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ」
哀が弾かれたようにコナンを見た。
「このままじゃ、何も変わらないだろ!?」
「……行かないで」
哀がコナンの方に倒れるようにしてすがりついた。
「……え?」
「行ったら……、殺されるわ」
いつもの哀らしかぬ言動。
「灰原…?」
「もう嫌よ。私に関わった人間が殺されるなんて、もう沢山だわ!これ以上、人が死ぬなんて嫌なのよ…」
哀は首を激しく左右に振った。
毎日のように見る悪夢。
あれが現実になったら?
私はあの夢の中で、みんなが死んでいくところを眺めている。
何も出来ずに。
そして、銃口が自分に向いたところで、目が覚める。
私が関わったばっかりに、消えていく命。
助けられなくて、目の前で飛び散る鮮血が、やけにリアルで。
自分の死よりも、みんなの死の方が恐ろしく感じられた。
自分に銃口が向くときよりも、みんなに銃口が向くときの方が恐かった。
そして訪れる死。
それが現実になるなるかもしれないと、あなたは分からないの?
私がどれだけそのことに、不安と恐怖を抱えているのか、あなたは分かってないわ。
ポン、と、哀の頭に手が置かれた。
「まだ、俺が死ぬなんて決まってねぇだろ?」
コナンがそう言って笑った。
「大丈夫。俺は絶対死なねぇよ」
何処にそんな根拠があるって言うの?
そう思うのに、何故かとても安心する。…だけど。
「俺を信じろ、灰原」
…誰かが言っていた。その言葉。
いいえ。
“誰か”じゃない。
彼は……私を騙していた…張本人は……。
『俺を信じろ』
そう言ったのは、………………。
「駄目よ!無理だわ。私、人を信じることなんか出来ない!」
信じていたかった。
なのに、騙されていたことにも気付かなくて。
殺人に加担していたなんて。
独りだった私の支えになった言葉が、まさか…まさか彼の言葉だったなんてね。
そして、幸か不幸か、彼のおかげで私はここにいる。
とてつもなく辛い罪悪感を背負って。
…ねぇ?……ジン。
信じろ、なんて無理に決まっている。
人間なんか、信じられない。
「灰原、頼む。俺は、絶対に死なない」
コナンはそう言って、強く哀の手を握った。
強い光の宿った瞳。
真実を導き出す、鋭くて、時には優しい…そんな瞳。
「だから、俺を信じてくれ」
ジンとは違う。
優しさの伺える瞳。
もう一度、信じてみる?
人間という物を。
いいえ。
…“工藤新一”を。
「……もし」
哀が口を開く。
「もし、あなたが生きて帰らなかったら、骨だって拾ってあげないわよ…」
哀はそう言って、クス、と笑った。
コナンもゆっくりと微笑む。
「絶対に死なない。だから、俺を信じろ」
哀はしばらく黙ってコナンを見つめていたが、やがて力強く、ゆっくりと頷いた。
著者・後書き
初めましての方もお久しぶりの方も、こんにちは!はすみです(^^)
灰原哀ファンの私としては、哀ちゃんには色々と思い入れがあるので、それだけ哀ちゃん作品も多いです(^^;)
この小説は、組織を倒すまでのエピソードの中のひとつで、発端や終末などもあるんですが、とりあえず書けた順番に、なんて(笑)
実のところ、くぬぎさんのリクエスト小説の埋め合わせで書いたモノなので、出来が悪いところもありありで、「ひ〜;」となっていますが、ご意見などありましたらよろしくお願いしますっ。次回作も頑張りますから見放さないでください(切実<笑)
くぬぎより♪
皆様、はすみねいさまの小説いただいてしまいましたぁ!!!(^▽^)
くぬぎがリクしたあの小説とは別♪・・・・なんて!!はううう!!!はすみねいさまありがとう♪♪♪(^▽^
///)(←らっきー♪なんて喜んでたなんて・・・・・・・言えない言えない(^^;))
は〜・・・はすみねいさまの哀ちゃんへの愛がそこかしこにちりばめられてますね(^▽^///)
詩のような言葉にくぬぎはどっきどき♪(←何を言いたいんだか、くぬぎ(笑))
はすみねいさまの書く女性ってどうしてこう「儚げで綺麗」なんだろー!!!!!
さてさて、一言叫ばせて下さいね(^▽^;)
「きゃ〜〜〜〜〜〜コナン君だあああああああ!!!!!!!!!」(くぬぎ、新一にーちゃんから浮気・・・・・はしてないのか??(笑))
え・・・書けた順番に・・・・・って事は、また続きがいただけるの!!!?煤i^▽^)(過激なおねだり(笑))
うわあああい!!!!!欲しいです〜!!!!!是非下さい!!!!!!(いくらなんでもねだりすぎ・・・(苦笑))
くぬぎ