戸惑いの中

しゃっふるろまんすの続編です〜(^^;)

どうすれば元のさやに収まるんや?

夜中西の名探偵は頭を捻っていたのだが、これといって名案は浮かばなかった。
どうやら、推理方面に長けた頭は、恋愛方面には向いていない様だった。

朝日の眩しさに目が眩む。
「・・・・・・・・・・ま、ええか、深く考えんでも・・・・」

昨日の和葉の様子からしても、いつも通りの二人に戻りたがっているのは間違い無かった。

それよりも、問題は工藤だった。

東の名探偵と同じ名を持つ彼は、平次とはクラスが違ったが、和葉とは以前同じクラスだった事がある。
和葉を間にして何度か顔を合わせた事もあるのだが・・・まさか、和葉に好意を抱いているとは思いも寄らなかった。

「どないしたもんやろ・・・」
柄にもなく溜息を吐きつつ、和葉の家の呼び鈴を押す―・・・。
中から出てきたのは和葉の母親だった。

「あ、平ちゃん・・・!和葉やったらすこし先に出たんよ」
さすが母親と言うべきだろう。和葉と平次の間で何か起きているといった事には気付いていた。
「・・・・・・・・仲直りは難しいんか?」
「俺は元のさやに収まりたい思うてんやけどな、・・・中々思う様に進まへんのや」
平次は苦笑しながら答えた。
「昨夜泣きながら帰ってきたんよ・・・」
「・・・・・・・和葉が?」
「どないしたんかと思うて、部屋の前まで行ったら、中から和葉が泣きながら平ちゃんの名前呼んでんのが聞こえてたんや・・・」
「言うとくけど、それは俺のせいやないで?」
「分かっとるよ。・・・・・・・・平ちゃんは和葉の事心配して後ろの方からこそ〜っと見守って歩いてきてくれとったんは。昨夜だけやない、ここんとこずっとやろ。・・・そやな、アタシが帰りが遅いから心配やて漏らした翌日辺りからか。平ちゃん優しいから、和葉の事放っとかれへんかったんやろ?」
「・・・・・・・・なんで知ってんのや!?」
西の名探偵は、和葉の母親の推理力に驚愕した。
「・・・何でもお見通しや。女は生まれつき女優と探偵の能力は兼ね備えてんのやから。」
くすくすと笑う和葉の母に、平次は苦笑した。
「偶然て事は考えへんかったんかぃ・・・」
だが、平次の言葉は聞こえなかったという様に、和葉の母親は話し続ける。
「平ちゃんやったら、和葉の事安心して任せられるんやけど・・・」
「・・・・・・・・・・・・・それってどないな意味やねん」
平次の返答に、和葉の母親は驚きを交えつつ、まじまじと平次の顔を見た。


考え事をしながら、校門をくぐる・・・。
クラスメートが掛けてくる挨拶にも生返事をしながら、平次の頭の中では和葉の母親の言葉が渦を巻いていた。

「・・・あら、嫌やわ・・・平ちゃん、和葉の事そう思うててくれるよーになったんか?」

そう思うててって・・・他にどないな意味に取れるんや・・・

「おばちゃん、平ちゃん息子に欲しいてずっと昔からそう思うてたんよ!」

息子て・・・

確かに、平次がこういった方面にその言葉を受け取る事は珍しい事・・・いや、初めての事だった。
多分、昨日人の告白シーンを目の当たりにしてしまったから・・・だろう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・和葉と?」

ぽつり、呟いた言葉に一人焦る。

「和葉がどうかしたんか?」
目の前に突然現れたのは工藤だった。
「・・・・・・・・・・・いや、何でもあらへんけどな」
よりによってコイツか・・・
平次は眉間に皺を寄せつつ微笑み返す。

「ちょっと用があんねん・・・今日の放課後、体育館でキャスティング決めるんやけどな、そのテストがあんねん。」
「出ろて言うんやないやろな・・・」
「や、その逆や。・・・キャスト決めるん手伝って欲しいねん。」
「ちょぉ待てや、俺は部外者やないか、なんでまた・・・」
あからさまにムッとする平次に、工藤は爽やかな笑みを浮かべてもっともらしい事を並べ立てる。
「探偵なんて仕事してるんや、人間は俺らより倍以上見て来てるはずやろ?・・・それを俺らの為に生かして欲しいねん」
「・・・・・・それやったら和葉が俺に頼みに来ればええやないか・・・」
「和葉は今他の仕事で忙しいねや。」
平次は直感で、自分を引っ張り出すというのは工藤の独断だと見抜いた。
和葉が・・・今の状況で平次をこんな形で引っ張り出すとはとても思えない。

・・・・・・・・・・・・こいつ、俺をハメる気ぃやな・・・

裏に何かある・・・罠だとは分かっていた。

だが・・・・・・

「何時からや?」

そう口から出ていた。



体育館の中は、大勢の同級生でごったがえしていた。
中には平次の顔見知りもごろごろしている。
「よぉ、お前も出るんか?」
と声を掛けてくる奴もいた。
「誰が出るんや・・・!俺は頼まれたから来たんや!」
その度に不機嫌丸出しでそう言い放つ。

やっと舞台の前に設置した机に辿り着き、平次は置いてあったキャスティングと希望者の名前の書いてあるプリントを手にした。

「じゃあ始めるで・・・まずは主役のハート姫からや・・!テストが絡みのシーンやから、スペード王子と一緒に行くで!」

平次はちらっとプリントに目を落とす。
ハート姫の欄にはただ一人、和葉の名前・・・そして、スペード王子の欄にも、ただ一人、工藤の名前があった。

舞台のソデから、和葉が出てきた。
案の定、平次に頼んだのは工藤の独断だったらしく、和葉は躊躇いながら舞台の中央へと進んで行く。
ちょうど平次の目の前で、和葉が立ち止まる。
「スペード王子は後から出ます・・・ではよろしくお願いします」

「アホくさ・・・もう決まった様なもんやないか・・・」

悪態を吐きつつ、平次はパイプ椅子にもたれかかった。

「ん・・・・・・・・?」

平次の目に、舞台の天井から何かの光が見えた。

「なんや、あれ・・・」
光った辺りを眺めつつ、身体を起こす・・・。
少しして、カツンと小さな音を立てて、平次の目の前に小さなネジが落ちてきた。

「・・・・・・・・なんや、ネジ・・・?」

ぐらりと照明器具が揺れたのが見えた。

「!?」

瞬間、平次の身体は弾かれる様に机を踏み台にして、舞台へ上がっていた。
「な、へ・・・!?」
戸惑う和葉を抱える様にして舞台の奥に飛び込んだ瞬間、大きな音を立ててライトが落ちていた。・・・それはちょうど、今の今迄和葉が立っていた場所だった。
「あ・・・・・・・・?」
「大丈夫か、和葉・・・!」
腕の中の和葉は、何が起こったのか分からないといった状況で、平次にしがみついていた。
「誰も怪我した奴はおらんな?」
平次の問いかけに、静寂がかき消され、辺りは騒然となっていた。

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・・・これってもしかしなくても逆コナン状態?(−−;)