しゃっふるろまんす
「・・・・・・和葉、ホンマにええんか?」
平次が怪訝そうな表情で声をかけた―・・・。
「ええんよ・・・これで・・・・・・」
和葉が、にこっと微笑んでそう言う・・・。
なにがええんよ・・・や。
平次が呆れ半分で、和葉をジトッと見詰め返す。
その視線に気付いたのか、気付いていないのか、和葉はさっきからの笑顔を保ったままだ。
「なんやのん?」
「・・・なんでもあらへん・・・」
今日のこの日もいつの日か、思い出として反芻するのだろうか・・・そう思うほどのシチュエーション・・・沈みかけた夕日に、和葉の顔が、教室が・・・辺りの空気までもが染まっていくような気がした。
「しっかしお前も物好きやなァ・・・わざわざこんな面倒臭ォてかなわん事、立候補する奴おるか?」
和葉は、平次の言葉を聞きながら黒板消しに手を伸ばした―・・・。
「・・・せやけど先輩を送り出す会なんやもん・・・。2年生のアタシらが頑張らんと、先輩かてがっかりするやろ?」
「・・・・・・・それもそうやけど・・・」
和葉と一緒に帰ろうと、待ちくたびれた平次は不平をこぼす。
「大体、今日はテスト終了日やし、午前中に帰宅できたんやないか・・・剣道部も休みやし・・・」
「せやから、先に帰ってええよって言うたやん・・・」
「・・・一人でどっか行ってもつまらんやないか・・・」
3年生への送別会の準備が・・・少し気が早いのだが・・・始まっていた。
今年は2年生全体で演劇の出し物をして、3年生を楽しませてやろうという試みだった。
「よりにもよって舞台監督になるやなんて・・・」
「・・・アタシが自分から言い出した事なんやもん・・・蘭ちゃんたちの劇、途中で終わってしもたから、アタシが勝手にその後の台本作って、蘭ちゃんたちに続き見せて驚かしたろ思て!・・・あ、蘭ちゃんたちにはこの事言うたらあかんよ?」
「せやかて、舞台監督言うたら、監督や副監督と同じくらい忙しいねやろ?」
「・・・当たり前やん。アタシが楽してどないすんのん・・・?舞台監督は裏方やで?」
「・・・せやったら、堂々とええ役やらしてもらったらええのに・・・」
平次のええ役とは、ハート姫の事を指しているらしかった。
「アタシに・・・・・・・・できるわけないやん・・・・・・」
和葉は、苦しそうな笑顔で黒板の役名を見上げた―・・・。
「はぁ?・・・やってみんと分からんやないか・・・」
呆れ顔の平次の言葉に、和葉はちょっと俯いて答えた。
「アタシは・・・蘭ちゃんみたいに素直でもかわいくもないやん・・・あんな・・・お姫様なんて柄やないもん・・・」
黒板には・・・委員の間で出ているキャスティングの候補なので、まだ決定ではないのだが・・・学年の中でもかわいいと特に評判の女子生徒の名前が記されていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
平次はそっと和葉の手から黒板消しを取ると、役名の下に書かれた誰かの名前をきゅっきゅっと消した。
白墨の粉が二人の間に舞っていく・・・。
「ありがと、平次・・・」
ついでに他の役名も消して、平次が残したのはハート姫の役名だけだった。
「・・・あ、全部消してくれてええよ?・・・もうメモとったし・・・」
そう言う和葉を無視して、平次は白墨をとった。
「へ・・・平次?」
平次がカッカッと小気味良い音を立てて、平次らしいいかにも乱暴な字で名前を書き足した。
『ハート姫・・・遠山和葉』
「へ・・・平次・・・?」
「お前にも出来るて・・・俺はそう思うんやけどな・・・」
いつになく優しい眼差しで、平次は和葉にそう語り掛ける・・・。
「・・・王子次第なんとちゃうんか?・・・まァ、口うるそォてかなわん姫になりそうやけどな!」
苦笑して続ける平次に、和葉が笑顔で返す・・・。
「口うるそォて悪かったなァ!王子の分もアタシが喋ったるわ!」
やっと本物の笑顔になってきた・・・。
平次は和葉の表情を見ながら、ほっとして笑みを返した。
「それやったら、俺にも出来るかもしれへんな」
平次は手の中で弄んでいた白墨で、スペード王子の役名と、自分の名前を連ねる・・・。
くすくすとそれを笑いながら見ている和葉に、髪の毛に白墨の白い粉を乗せて平次が尋ねた。
「セリフ・・・なんやったっけ?」
「あ、・・・ああ、ええと『一度ならず二度までも・・・・・・私をお助けになる貴方はいったい誰なのです?あ』」
セリフがふっと途切れた―・・・。
不自然な形で抱きしめられ、和葉は平次の腕の中にいた―・・・。
心臓の音が頭にまで振動してくるように伝わってくる。
「へ・・・・へい・・・・・・・セ・・・セリフ途中やん・・・!!」
「あ、そやったか・・・?悪い悪い!!」
真っ赤になりながら和葉は平次の手を振り払った。
「で?この後は?」
「あ・・・と、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ、忘れてもうたわ・・・」
和葉は、知っていてとぼけた・・・。
このままいくと、あのシーンが出てくる。
これ以上続けるのは心臓が耐えられそうになかった。
「・・・・・・・・・・・・・なんや、つまらん・・・・・・・・・・」
ぼそっと平次が呟いた声は、和葉には届かなかった。
「キャスティング練り直しやな・・・」
「ああ、本番に持ち越してもらおか・・・」
ドアの隙間から様子を伺っていた大勢の野次馬達の声も二人には届いていなかった。
あとがき♪
ははは!遊んじゃいましたっ♪ああ、やっぱしカップリング物は楽しい♪
それにしても、平和は結構書いたと思ったのに、これが(昔話の「いばらひめ」以外では)初めてだったようです(^^;)
掲示板で他の方に言われて気がつきました(笑)
なんでそんな錯覚起こしてたのかなと不思議に思ってましたら、そういえば、いつもチャットで遊んでたんでした・・・(笑)(平次か新一か快斗ですから(笑))
記念すべき初(?)になるのでしょうか・・・これ