暗闇
足元さえも黒に支配された空間に、彼は一人で佇んでいた―・・・。
すぐにこれは夢だと気がついて、ふっと自嘲的な溜息を漏らした。
「やな雰囲気だな・・・」
暗く沈んだ空気が、快斗の気分まで沈ませてくれる。
こんな時、あいつがいたら・・・
ふと考えた自分の思考に、思わず苦笑いする。
「バカだね、俺も・・・」
そう呟きながら、顔を上げると、そこには求めていた姿が現れた。
「な・・・オメー・・・」
蘭は、悲しそうな微笑みを浮かべて胸を押えながらよろよろと快斗の方へ歩み寄ってきた。
蘭の様子に、快斗も走り寄り、力尽きて倒れそうになったその身体を支えた。
蘭は、快斗の顔を見て、にこっと悲しそうに微笑む。
快斗は、蘭を支えた自分の指が、真っ赤に染まっているのを見て驚愕した。
「怪我してんのか!?」
蘭が何か呟くが、そのかすれ声は、聞き取れない程に小さい。
「しゃ・・・喋るな!」
夢だと分かっていても、快斗は動揺していた。
「今何とかしてやっから!・・・黙ってろ!!」
どうする事も出来ない事は分かっていた。だが、何もしないではいられなかった。
とにかく、蘭を抱きかかえる様に横に寝かせる。
シャツを脱いで破り、それを何重にも蘭の身体に巻いて止血しようとする。
今出来るのはそれくらいの事だった。
気ばかり焦る快斗に、蘭はくすっと微笑んだ。
いつもなら、安心するはずの笑顔が、なぜだか快斗の心を締め付ける。
「・・・・・・快・・・・・・・・」
震えながら蘭が伸ばした手は、快斗の頬に流れる涙を拭うと急に脱力した。
糸の切れた操り人形のように、蘭の身体から、全身から力が抜けたのを感じた。
「・・・・・・・・・・・・・嘘・・・だろ・・・・・・?おい・・・・・・・!」
快斗の腕の中で、蘭は静かに眠っているかの様だった―・・・。
いつもと違う夢の中の雰囲気に、蘭は戸惑っていた。
お化けの類が苦手な蘭にとって、その雰囲気はあまり好ましくないものだった。
「やだ・・・誰か・・・コナン君〜・・・」
暗闇に佇んでいる視界に、ふいに大切な人の姿が写る。
「新一!?」
嬉しくて駆け出す。
新一も、蘭を優しい笑顔で迎える。
ようやく新一の所に辿り着き、蘭は縋る様にそのぬくもりを抱きしめた。
―温かい・・・
その温もりに、涙が溢れる。
「バカ、バカバカバカ!!!どこ行ってたのよ・・・!」
新一は、返事の代わりにきつく抱きしめる。
「・・・・・・・・・・・もうどこにも行かないでね・・・・・・?」
蘭の言葉に、新一がふっと微笑んで何かを言いかけた時だった。
「・・・!」
何かを見つけて、新一の表情が険しくなる。
蘭がその表情の変化に気付いた時、新一は蘭の身体を自分の身体と入れ替える様にくるりと回った。
「え!?」
戸惑う蘭に、崩れる様にして新一の身体が覆い被さる。
「し・・・しんい・・・?」
蘭が新一の背中に廻した手が、鮮血に染まった。
苦痛に歪んだ表情に、蘭が不安を隠しきれず、声を掛ける。
新一はにっといつもの不敵な微笑みを見せるが、その表情に余裕はどこにもなかった。
「や・・・・や・・・・・・・・」
頭を振って、蘭は新一を震える両腕で支える。
新一の身体の温もりを繋ぎ止めようと、蘭は新一の身体を抱きかかえる様にして自分の体温を伝えた―・・・。
「やだ・・・やだよ!新一ぃ!!」
自分の叫び声に、蘭は目を覚ました―・・・。
あとがき
いきなり真っ暗な雰囲気で始まっちゃってます(^^;)
しかも5飛ばしてるし・・・
くぬぎが昔書きかけた小説がベースになってるんですが、今後の展開はKAITOで行きます♪