灯火
「おまえって子は!!!」
真緒の頬を叩こうと振り上げられた館長の手を止めたのは、蘭だった。
「あなたの心を取り戻そうとしたこの子に、なんの罪があるって言うんですか!?」
「おねえちゃん・・・」
「心は確かに盗めるものじゃないです・・・!でも、そこまで追いつめたあなたに・・・真緒ちゃんの苦しみに気付きもせず、自分の世界にだけ閉じこもってたあなたに、真緒ちゃんを非難する権利なんてどこにもないはずです!」
蘭は、ずっと固く握り締めていたネックレスを、真緒に手渡した。
「ねえ、あの二人、どうなるかな・・・」
帰りの電車の窓を覗きながら、蘭が心配そうにコナンに呟いた。
「大丈夫だよ、きっと・・・館長さん、蘭ねーちゃんの言葉がよっぽど応えたみたいだったし・・・でもかっこよかったよ、蘭ねーちゃん!」
「・・・・・・ううん、・・・コナン君の方がよっぽどかっこよかったよ・・・・・・・・・崖で助けようとしてくれて、ありがと・・・」
「・・・・・・・・・・・・蘭ねーちゃんさ、あの時手を振り解こうとしたでしょ・・・」
「ん・・・?」
コナンの視線がすっと蘭から窓の外の海へと移っていった。
「今度やったら許さないからね・・・・・・・・」
静かな声と雰囲気だったが蘭には痛いほどに伝わった。・・・・・・・・コナンは本気で怒っていた。
どうしてそんなに怒るの?ホントの事、話せないような間柄だって思ってるんでしょう?
蘭は、ぐっと膝の上の手を握り締めた。
痛い・・・・・・
その痛みでほんの少し涙をこらえる―・・・。
「うん、ごめんね・・・コナン君まで落ちちゃうと思ったの・・・でも、ほんとかっこよかったよ・・・・・・・・まるで新一みたいで!!」
ちょっと意地悪かな・・・
そう思いながら、蘭はさりげなく新一の名を出した。
コナンは動揺を必死に隠しながら、なんとか言葉を濁して笑顔を見せる・・・・・・。
新一も十分意地悪だよね・・・・・・
近くて遠い存在を目の前にしながら、蘭は窓の外の海を眺めた。
あ・・・
自然に目が潤んできた・・・。
コナンの目の前で、こんな理由で涙を見せるわけにはいかないのに・・・・・・・・・・・
だが、吹き出した感情は押さえ切れない・・・。
蘭は涙を止めようと、必死に窓の外に神経を集中した。
「ちょっといいかねえ・・・」
老婆がコナンの隣に腰掛けた。
「あんたたち、旅行かい?・・・・・・・兄弟仲がいいんだねえ・・・いい事じゃないか」
人懐っこそうな老婆は、蘭ににこにこと話しかけた。
地元の人だろうか・・・手ぬぐいに半分隠れた顔は、かわいらしい微笑みを携えていた。
第3者が加わった事でほんの少し、二人の間の空気が和らいだ。
「ああ、そうだ・・・いいもの持ってるんだよ・・・・・」
そう呟きながら、老婆はみかんを手提げ袋から取り出すとコナンと蘭の手にそれぞれ一つずつ乗せた。
「ありがとう、おばーちゃん!」
「ありがとうございま・・・・・・」
老婆は、みかんを乗せながら、蘭の手をきゅっと握った。
「?」
ちらっと手ぬぐいの裾から、老婆の目が覗いた。
あ・・・・・・・・・・・
蘭の微妙な表情の変化を読み取ると、老婆は手を放した。
「うちで採れたんだよ・・・口に合うといいんだけどねえ・・・」
しばらくコナンの隣で話をしていた老婆は、ふっと立ち上がると、「ここで降りなきゃね・・・ありがとう、楽しかったよ・・・」と言い残してホームへ降り立った。
蘭は笑顔で老婆を見送ると、貰ったみかんをそっと両手で包んだ。
「ん・・・?」
ふと、みかんの中心に紙切れがぐるぐると巻いて差し込んであるのが指先の感触で伝わってきた。
窓の外の景色をぼんやり眺めているコナンに気付かれないように、細心の注意を払いながら、小さな紙切れを取り出して目を通す・・・。
『世界中敵に回しても、おれだけはおめーの味方だから!絶対負けんなよ!!・・・K』
ぶっきらぼうな文字で、それだけ・・・
なんだか快斗らしくて、蘭はくすくすと笑い出してしまった。その目の端に、さっきとは理由の変わった涙をほんの少し湛えて・・・。
「蘭ねーちゃん?」
その様子を訝し気にコナンが声をかける―・・・。
「ん?」
「・・・どうしたの?なんかすごく嬉しそうだよ?」
窓の外の景色がゆっくりと動きだす―・・・。
列車を見送るかのように、小さな駅のプラットホームで、老婆の衣装が空を舞った。
「なぁんでもないの!」
小さく手を振る快斗に、蘭は目を細めていた。その視線の先に何があるのだろうと、振り返ったコナンが目にした頃には既に快斗の姿は米粒よりも小さくなっていた。
「・・・・・・・・自分の気持ちが弱くなった時、励ましてくれる人を毒にしちゃうのは・・・自分の弱い心なんだよね、きっと」
「・・・・・・・・・・・・?」
そう言うと、蘭は静かに微笑んだ。
「あ〜あ・・・おれってお人好し・・・・・・・」
快斗は青い空を見上げながら、苦笑していた。
蘭本人を眠らせたまま別れた事が気になって、同じ列車に乗り込み、話し掛けるチャンスを伺ってはいたのだ。
あのシーンを放っておけば、勝手に新一から・・・たとえ本人がそれを望んでいなくても、自滅への道を選んでくれそうだったのだが・・・蘭のあの表情を見ては、知らん顔もできなかった。
「・・・・・・ま、あいつが笑っててくれるんならいっか・・・」
妙に清々しい気分で空を仰いだ―・・・。
この同じ空の下でがんばってるあいつがいる・・・・・・
ふっとそんな事を考えて口元が緩んだ。
「負けてらんねーな・・・・・・おれも!」
快斗は青空に向かってぐっと背を伸ばした。
空がほんの少し近くなった気がした―・・・。
結局、蘭ちゃんの気持ちははっきりしない描写のまま終わっちゃいましたね?(^^;)読み取れないですよね、こんなんじゃ・・・(><、)
あああ、なんだか、さらに浮気作品のよーになって・・・(爆)
ううう・・・・・・出直してきまっす(><、)