断崖

う・・・そういえば、名探偵KAITOなのに、今回ご本人が謎解き全然してない(笑)・・・誰もしてないからいっか?(爆)

蘭が展示室に駆けつけた時には既に、そこにあるはずの絵画が姿を消していた。

一番最初に現場に駆けつけたのは真琴だったが、どうやら犯人の姿を見たわけでは無い様子だった。
「・・・・・・!」
悲鳴を聞きつけて、外から走ってきたコナンと白馬にも気付かないほど、蘭は動転していた。

と・・・止めなきゃ!!

弾かれるように駆け出した蘭の後を、コナンは思わず追っていた。・・・とはいっても、大人と子どもの走る速さには差がある。夢中で走る蘭に、コナンが追いつくはずがなかった。

どうして確信が持てたのか、蘭自身にも分からなかったのだが、無我夢中で走り、辿り着いた崖の先には真緒の姿があった。
手に持っているのは、間違いなくキッドの予告の届いた絵だと確信して、蘭は駆け寄りながら真緒に声をかけた。

「真緒ちゃん!!!戻って!!そっちは・・・!!」

「おねえちゃん・・・」
蘭の存在に気付いた真緒は、ほんの少しよそ見をした・・・その瞬間だった。

真緒の身体が、足元が崩れて大きく揺らいだ・・・

「真緒ちゃんっ!!!」

咄嗟に蘭は真緒の腕を掴んだ。ぱらぱらと、崩れた小さな岩の破片が海へと吸い込まれていく。
驚いた真緒は、蘭にぎゅっと抱きついた。
「もう大丈夫よ、もう・・・・・・・」
「おねえちゃ・・・」
蘭は、真緒の手を引いて、中央へと移動した。
「あ・・・・・・・・・・」
さっきまでいた場所に、キラッと光る物を、蘭は見逃さなかった。

それは、真緒から預かったネックレスだった。きっと、さっき真緒が抱きついた時に落としたのだろう・・・。
「ちょっと待っててね、真緒ちゃん!」
蘭がネックレスを拾いあげると、足元の岩が崩れ、ぐらりと視界が揺れた・・・。

「おねえちゃんっ!!?」

真緒の悲鳴にも似た声を聞きながら、蘭はバランスを失って、落下していく感覚をはっきりと味わっていた。

「蘭っ!!!!!」
絶叫と共に差し出されたコナンの手が、蘭の手を間一髪の所で捕らえた。

だが、所詮子どもの力・・・掴む所も何もない断崖で、コナンだけの力で蘭を引き上げる事は不可能だった。
「・・・・・・・く・・・・・・・・・・っ!!!」
肩の骨が、腕の筋肉が、みしみしと音を立てて限界を知らせている・・・。
「コ・・・コナン君、離して・・・・・・・!!」
「は・・・・・なせるわけ・・・・ねーだろ・・・・っ!!」
コナンは子どもの演技すら忘れて、蘭の手を必死に掴んでいた。

ずるずるとコナンの身体が崖っぷちへと引きずり込まれていく・・・。
「・・・・・・・・・・・・・蘭っ・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・新一・・・・・」
コナンの表情に、新一を見て、蘭は決意した。

「ごめんね・・・」

自由に動く片方の手で、蘭はコナンの指を少しずつほどいていった。

「ら・・・蘭っ!!?」
蘭の意図を読んだコナンは、青ざめながらも必死にそれに抵抗した。
だが、子どもの手の大きさが、大人の手に敵うはずもなく・・・小さな指が完全に解かれようとしていた。
「・・・・・・ごめんね・・・・・・・さよなら・・・」
「蘭・・・・・!!!」
悲鳴にも似たコナンの声に応えるかのように、コナンの背後からにゅっと大人の腕が伸びてきた。

「諦めちゃだめですよ!!」
「・・・・・・は・・・・・・白馬!?」
驚きを隠せないコナンに、にっと微笑みかけると、快斗は蘭を掴んだ手に力を入れた。

と同時に、二人の足元も、大きな音と共に動き始めた。
ここも崩れる!!
咄嗟にそう判断した快斗は、片手でコナンの身体を安全圏にまで突き飛ばした。
コナンの身体は後ろに弾かれ、快斗の足元はゆっくりと崩れ、蘭と快斗の身体は、海へと吸い込まれるように落ちていった。

蘭を空中で抱きかかえると、快斗は変装を解いてゆっくりと背中に背負ったハンググライダーを広げた。
「か・・・怪盗キッド!!?」
崖の上で、コナンや真琴の驚いた声が聞こえた。

大きな重圧がかかり、ハンググライダーの骨がぎしぎしと悲鳴をあげている。
「くそ・・・駄目か!!?」
海から崖を登るように吹き上げる風が更なる重圧となって、二人を襲った。強烈な圧力に、ハンググライダーは悲鳴をあげながらも、二人の身体をゆっくりと舞い上がらせた。

「蘭・・・大丈夫か!?」
「うん・・・ありがと」
その微笑みは今まで見たどの笑みよりも優しく輝いていた。
「・・・・・・・・・・?」
「何?」
「あ、いや・・・驚かないんだなと思って・・・おれは白馬に変装してたのに・・・」
戸惑いながらの快斗の疑問に、蘭が笑顔で答える・・・。

「だって・・・気がついてたもの・・・・・・・」

「・・・って、おれの変装に!?・・・なんで!!?いつから!!???」
自分で言うのもなんだが、完璧な変装だったはずだ・・・!!
快斗の驚きは半端ではなかった。

「最初に旅館の玄関で会った時にね、もしかしたらって思ってたの・・・。違うかもしれないし、言い出せないでいたんだけど・・・」
「どうして・・・」
「うまく言えないんだけど・・・・・・あ、快斗君だ・・・って・・・・・・すごく優しい目をしてたから・・・・・・。」
「だから、おめー・・・おれの部屋に来たのか・・・?」
「うん・・・」

こいつなら・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こいつなら、おれがどんな姿をしてても見つけてくれる・・・

快斗は溢れ出す愛おしさに蘭をぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られた。
腕の中のぬくもりは、既に失う事など考えられないものになっていた。

「・・・・・・おめー、なんであんなに苦しそうにしてたんだ?あいつとなんか・・・・・・・」
快斗の言葉を遮るように、バキンと大きな音を立ててハンググライダーの右の翼が折れた。

「うわっ!!!」

片翼が折れたハンググライダーは、羽をもがれるかのように、二人の身体を宙に投げ出した。

「蘭!!!」
咄嗟に蘭を抱きかかえて、快斗が下を見る・・・

・・・・・・・・・・水面まであと20M・・・落ちた所に水面に隠れて岩でもあったらアウトだ・・・。

せめてこいつだけでも無事に・・・

快斗は、蘭の頭を抱えるようにして抱きしめた。
自分の身体で蘭を保護すれば、最悪でも蘭一人は助かる。

急速に近づく海面に、快斗は覚悟を決めた。
大きな水柱をあげながら、二人の身体は海中へと飲み込まれていった。

急激に変化する水圧でひどい耳鳴りを覚えながらも、快斗は蘭の身体をしっかりと抱き抱えていた。
ゆっくりと、水の底から湧き出る流れが、快斗達の身体をそっと支えるように浮き上がらせてくれた。やがて、二人の身体を下へと追いやる力も失せ、快斗と蘭の身体は、ゆっくりと海水に漂っていた。
『蘭・・・大丈夫か?』
快斗は蘭の表情を覗き込んだ。蘭は苦しそうな表情で、ぐったりとしている。

気絶・・・しているのだろうか・・・

どちらにしろ、海面にあがるのが先決だ。

そうだ・・・

寺井の持たせてくれた、小型の酸素ボンベをくわえ、大きく吸い込むと、快斗はそれを今度は蘭にくわえさせて水中で蘭の身体を抱き上げ、まっすぐに水面を目指した。

げほげほとむせかえりながら、水面に顔を覗かせ、快斗はゆっくりと岩陰になっている崖下の洞窟へと進んでいった。

水を吸って、衣装が重い・・・

だが、脱ぎ捨てるわけにはいかなかった。ほんの少しの距離ではあったが、溺死するかと思うほどの状態で、快斗はなんとか蘭を水面から押しやった。

小さな洞窟といった感じのここは、寺井と下見にやってきた時に見つけた場所だ。
「いざという時は、ここで・・・」
そう言う寺井に、快斗は別に今回はおれが仕事をするわけじゃねーのに・・・と苦笑しながら、連絡用の特殊な弾の入った銃を受け取った。

ここなら、工藤がすぐ来る心配もない・・・・・・

実際、ここへ来るには、崖下に広がる岩場を乗り越えてくるか、迷路のように入り組んだ洞穴を突き進んでくるかのどちらかしかない。
おまけに、どう急いでも30分以上はかかる。美術館からだと、下へ降りる時間も合わせて、50分くらいはゆうにかかるはずだ。

何かあった時、寺井が海の方から、ヘリで迎えに来てくれる事になっている。
快斗は、連絡用の合図を銃で撃ち、急いで寺井に知らせを出した。

「蘭・・・」
蘭の頬を、ぺちぺちと打ってみる。
「蘭、大丈夫か?」
「か・・・・・・・・・・・・快斗く・・・・・?」
「・・・その様子なら大丈夫だな・・・」
蘭の無事を確認して、快斗は蘭の身体を抱き起こした。
「・・・ちぇっ・・・呼吸がなければ、人工呼吸にかこつけてキスもできたのにな・・・」
苦笑しつつの快斗の言葉に、蘭は頬を赤らめていた。
「え・・・?」
その反応に驚いていたのは快斗の方だった。
「ら・・・蘭・・・?」
「あっ!!・・・ありがとう、助けてくれて・・・コナン君の・・・新一の目の前で姿を晒すなんて、危ない真似させて、ごめんね・・・?」
「・・・いーよ、おめーが無事だったんだし、おめーを死なせたくなかっただけだから・・・おめーには・・・いつも笑ってて欲しいしな」
気持ちを悟られないよう、言葉を選んで笑顔で話しかける快斗に、蘭は俯いて呟いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・快斗君優しいから・・・こういう時にそういう優しさは毒だよ・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・・・・・・・すがりつきたくなっちゃう・・・・・・・」

俯いているから表情は分からなかったが、快斗には抱きかかえた蘭の肩の・・・薄い肩の小さな震えが気持ちを伝えていた。

抱きしめてしまいたい

衝動に我を忘れそうになる。ぐらぐらと気持ちと一緒に、視界が揺れるようなめまいがする。

「・・・・・・・・・・・・・・な〜に弱気になってんだ?・・・・・・・・・おめーの大事な奴はあいつだろ?」
想いとは裏腹な言葉が口をついて出ていた。震える語尾を隠そうと、快斗はにっと微笑む。

本音を笑顔に隠して、快斗は蘭の口元に薬品を含ませたハンカチを当てた。
「・・・・っ・・・・・・」
蘭の身体から力が抜けていくのを確認して、快斗はそっと蘭の身体を抱き上げた。

「さらって逃げちまいてーよ・・・・・・ホントは・・・・・・」

寝顔の蘭に本音を告げる。
初めて会った時と同じ、不安そうな寝顔に、快斗は耳元で囁く・・・今度は、自分のそのままの声で・・・
「・・・おれはおめーの味方だよ・・・安心してろ・・・」
蘭の寝顔が安堵の微笑みへと変わっていった時、バラバラと、ヘリのエンジン音が近づいてきた。

「蘭を離せ!!!」
小さな探偵が、息を切らせながら到着する。
「おやおや・・・お早いお着きで・・・・・・あそこからだとどう頑張っても40分以上はかかったはずなんだけどな・・・」
「もう一度言う!蘭を離せ!!!」
怒りの形相を露わにして、コナンは快斗に麻酔銃の照準を合わせた。
「・・・何を殺気立ってんだ?・・・・・・・・・・そんなに大切なら、ちゃんと本人にそれを伝えておかなきゃ駄目だぜ・・・探偵君?」
快斗の皮肉に、コナンも少し余裕が出てきた。
「・・・・・・・・・・・怪盗が探偵に説教か?随分余裕だな、怪盗キッド・・・!」
「なあに、ただの忠告さ・・・おれも欲しくなったんでね、おめーの一番大切なものを・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・蘭は譲れねー!!!」
ふっと快斗は目の前の小さな探偵を嘲笑った。
「無理矢理連れ去っても心は手に入らない・・・・・・おれが欲しいのは、蘭の心だ。」
快斗もコナンと同じく、トランプ銃の銃口を相手に向ける・・・。

静寂の中に、殺気が満ちていた。
一瞬でも隙を見せれば命取りになる。
だが、お互い一歩も譲る気は毛頭なかった。

「一時休戦だ・・・・・」
殺気を消したのは、快斗が先だった。
「・・・・・・・・・・・・・・蘭に巻き添えくらわせたくねーからな・・・」
そっと腕の中の蘭を地面に横たわらせると、快斗はコナンに背を向けずに、蘭から離れた・・・。
「・・・・・・・・じゃあな、探偵君・・・蘭を盗む時だけは予告状出してやんねーぜ・・・本気で行くからな!!ま、せいぜい気をつけるんだな・・・!」
快斗が海に向かって開いた出口に差し掛かると、パラリとヘリから縄ばしごが降りてきた。
快斗がその縄ばしごを掴むと、ゆっくりとその身体は宙に浮いていった。
取り逃がした悔しさを露わにしながら、コナンはそのヘリを睨み続けた。

進む

な・・・なんか、今回誰も謎解きしてないんだけど・・・(^^;)
宣戦布告してるし(笑)

毎回いいわけしてるけど、こんなくぬぎは新蘭派ですぅ〜(><、)(もはや誰も信じちゃくれまい(笑))