藍色の空に。




少しずつ高みを帯びてきた空に、蝉の声がこだまする。

ゆっくりと、ゆっくりと


その季節を名残惜しむかの様に、その声は涸れる事なく―・・・


生命の瞬きにも似た声に、コナンは空を仰いだ―・・・。



消え行く前の優しい光を投げかけつつ、太陽は姿を隠していく。



さっきまで子どもの声で満ち溢れていた公園は、少しずつ静かな時間を取り戻し、休息を得ようとしている様にも見えた。




そろそろ帰らなくちゃ・・・




名残を惜しむかの様に、ブランコを最後に大きくひとこぎすると、小さなその身体の精一杯の力を、ブランコの小さな板に叩きつけ、夜の空気が降りかけた空に舞い上がらせた。



誰もいない公園―・・・


それは昼間の表情とはうって変わって、静寂さに不思議な不安を伴って夜を纏う。


いくらコナンと言えど、やっぱりその不安は拭えずに、夜の闇に目が見えなくなる内に、と・・・ほんの少し、慌てて公園を駆け抜けようとした。



「あ・・・れ?」



公園の出入り口のベンチに、見慣れぬ女の子の姿を見つけて、コナンはふと立ち止まった。



・・・もう辺りを闇が包みかけて、女の子がぽつんと一人でいる時間ではない事を、公園の向こうの街路灯がちかちかと点滅を繰り返して告げている。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




気になった



「・・・・・・・・・・・・」



・・・何が、と聞かれたら答えようが無いのだけれど




ゆっくりと近づいていくと、女の子ははっと顔を上げ―・・・近づいてきた相手が分かると、明らかにがっかりして、さっきと同じ様に俯いた。


「・・・もう真っ暗だよ?」


なるべく怖がらせない様にと、微笑みながら声をかける。

見た所、同い年くらい・・・だろうか。


黒いハイネックのシャツに、白の動きやすい半ズボン。
柔らかそうな肩までの髪が、ほんの僅かな風にふわりとなびいている。


・・・初めて逢う子・・・だ。


「帰らないの?」


コナンの声は明らかに届いているはずなのに、女の子は俯いたまま、何も反応してくれない。

さすがに、柔らかな髪の色に、日本語じゃ通じないのだろうかと不安になってきた。



「もしかして迷子?・・・えと・・・What is wrong with you?」

「・・・違うわ」


突き刺さる様なその口調は、コナンが今まで経験してきた誰の物とも違って・・・戸惑いを覚えるのには十分過ぎた。


「・・・ほっといてくれない?」

「え・・・だって、もう暗いよ?」

「心配いらないわ。私、人を待ってるの」


その口調とは裏腹に、膝の上の両手が、白いズボンの上で震えているのが分かる。

それは、固く固く握り締められて―・・・




一瞬・・・蘭の心配する顔が頭を掠めたけれど・・・




でも




・・・・・・・・・・・・こんな時間に、こんな所に、こんな女の子一人・・・・・・・・



ほっとけないよな・・・




軽く溜息を吐くと、コナンは女の子の隣に座った。





「・・・何?」

トゲを含んだ女の子の視線をモノともせずに、コナンは微笑んだ。


「一緒に待っててあげるよ。」


意外だったのだろう・・・女の子はきょとんとして、ただただコナンの顔を見ている。・・・もう薄暗くて、はっきりとは読み取れないだろうけれど。



「・・・・・・・遅くなるわよ?あの人結構時間にルーズな所あるから。」


「誰?」と訪ねるコナンに、女の子は視線を逸らして「おとうさん・・・」と呟いた。

「ふうん・・・」

こんなに重苦しい雰囲気はこれまでコナンが感じた事の無い種類の物で・・・

二人の間の空気だけがぴりぴりして・・・女の子が警戒しているのが嫌でも伝わってきた―・・・

どうしてなんだろう・・・どうしてこんなに怖がっているんだろう・・・・・・


「・・・何よ」


トゲを含んだ視線がこちらを向く。



あ、ちょうどいいや・・・


今朝新一に教えてもらったばかりの笑顔の種がポケットに入ったままになっている事に気がついて―・・・



うまくいくかな・・・




半分ドキドキしながら、種を手の中に収め・・・3、2、1・・・・・・・と数を数えた。



次の瞬間、不思議そうにしている女の子の目の前にポンと小さな音と共に花が咲いて



女の子は初めて笑顔を見せてくれた。




「・・・貴方いつもこんな事してるの?」

「え・・・違う・・・けど」

「なら、やめておいた方が良いわよ?・・・中途半端な素人手品って、純粋に手品を楽しもうとしている人の夢を壊してしまいかねないから。」


・・・マジックに喜んで笑顔を見せてくれたわけではないのだと気がついて

ほんの少し落胆したコナンに、涼しげに微笑んで、女の子が言った―・・・


「・・・もう暗くなるわ。帰りなさいよ・・・おうちの人、心配するわよ?」



けれど



・・・・・・やっぱり、女の子は女の子だ。


女の子には優しくね


母さんがいつも言ってるし。


「君が一人でいる方がよっぽど心配だから」

そう言うと、ヘンな人ね、と女の子が笑った。









あとがき

これ続き物です^^;
あまり長編にするつもりではないのですが・・・後編に続きます〜


途中でこの子が誰なのか匂わせてしまっているので、大体の方は彼女の検討がつくかと思われますが(^^)ヾ

くぬぎのふとした思いつきで、彼女の存在がぴたりと当てはまったのでv嬉しくなって彼女の登場vvv・・・なので。石は投げないで下さいましね^^;;;