しあわせの風景
「ねえねえ、これはどんな時の写真〜?」
穏やかに午後の一時を過ごしていると、コナンがアルバムを引っ張り出してくる。
こんな光景が日常となってきていた。
照れくさそうに新一もアルバムを覗き込む。
「あぁ・・・こいつは結婚式の時のだな・・・」
「おかあさんかわいいよ、これっ!」
コナンが指したのは、蘭がドレスの裾を気にしながら新一の隣に座った、オープンカーでの写真だった。
滑りやすいオープンカーの背もたれに座らされ、教会へ移動しようと準備していたあの時―・・・。
ドレス姿の蘭は、不安そうに強ばっていて、新一はそんな蘭の背中にそっと手を廻し、支えた。
「大丈夫だよ、ちゃんとオレが支えててやっから・・・」
新一のそれはいつもと変わらない口調で、かなり素っ気無い物だったのだが―・・・
次の瞬間、新一の鼓動は早くなっていた。
「・・・・・・・ありがと、新一・・・」
ホッとした蘭の微笑みを見て・・・。
蘭はすぐに照れて俯いてしまったが、その時の蘭の表情はとても可愛くて・・・
その時を写した一枚で、あの時の蘭の表情や声を鮮明に思い出させてくれる、お気に入りになっていた。
「だろだろっ!?」
新一は真っ赤になりながらコナンの背中をばしばしと叩く―・・・。
かわいそうにコナンはけほけほとむせながら、呼吸を整えた。
「・・・歩美が撮ったんだけど、アイツうめーんだよな、こういうの!」
蘭本人がいないからといって浮かれまくってのろける新一に、コナンは問い掛けた。
「おとうさん達って恋愛結婚だったんだよねえ・・・やっぱり最初に好きになったのっておとうさん?」
「な・・・何を急に・・・」
「プロポーズしたんだよね?それっていつ?どんな風にプロポーズしたの?」
矢継ぎ早の質問にうろたえたのは新一の方だった。
「・・・あ、始まってる」
苦笑しながら、蘭はぱたぱたと洗濯物をとり込んで戻ってきた。
「ら〜んっ、助けてくれよ〜ぉ」
新一は苦笑しつつ蘭に泣き付く。
「昨日は私にしつこく聞いてきてたのよ」
「でもおかあさん教えてくれないしさ、・・・おとうさんに聞いてねって言うからっ!」
「・・・・・らぁんん〜」
新一は情けない声で助けを求める。
「・・・学校の宿題なんだって・・・!自分の両親の結婚へのいきさつを調べてくるっていう・・・」
「・・・って、そんな授業あんのか!?」
「ね、だから、おとうさんが教えて?おかあさん嫌がっちゃって話してくれないんだもんっ」
そんな事を言っても・・・
新一の視線が蘭に救いを求める。
蘭は諦めてと言わんばかりに苦笑している。
「ねぇねぇ、プロポーズの言葉は〜?」
詰め寄るコナンに、新一はたじろぎつつも「・・・・・・・・・・・・・・・忘れた・・・・・・・」と小さな抵抗を示した。
「ねえ、忘れたってホントに?」
コナンが諦めて出かけた後、蘭がにこやかに新一に詰め寄ってきた。
「あんだよ、おめーまでっ」
「・・・・・・・・・忘れちゃった?」
しゅんとした瞳で見つめる蘭に、鼓動が早くなる。
「ば・・・バーロ、忘れるわけねーだろ・・・・・・・・・・」
「じゃあ、もう一回だけ聞かせて・・・・・・・・・?」
蘭の言葉に、新一はにやっと微笑む。
「・・・聞きたい?」
蘭は少しためらいながらも、こくんと頷いた。
こういった時の新一は何か危険な事を考えているのは経験上分かってはいたが、今更後には引けなかった。
おいでおいでと手招きする新一の口元に耳を近づける。
「・・・・・・・・・・・きゃっ!!?」
「よし、捕まえたっ!!!」
ぐいっと蘭を捕まえ、強引に抱き寄せる。
「おめーの方こそ、人に押し付けやがって・・・大体プロポーズのセリフなんてそう何度も言うもんじゃねーだろっ?」
「だあって・・・私ももう一度聞きたかったんだもん・・・新一の口から」
「・・・・・・・・・・・もう一度聞くぜ?・・・・・ホントに聞きてーのか?」
「・・・・うん」
「じゃあこれは?」
「えっ!?あっ!」
蘭は慌てて懐を押えたが、すでにそれは・・・携帯は新一の手の中にあった。
「・・・・・・・・・・どうして気がついたの!?」
「探偵をなめんなよ?・・・どうせコナンに頼まれたんだろーけどよ・・・おめーの考えてる事くれー見抜けねーでどうすんだ?」
新一は携帯に出ると、受話器の向こうのコナンに話し掛ける。
「じゃな!」
それだけ言うと、通話を一方的に切った。
「で、おめーはコナンとオレとどっちが大事なわけ?」
ぽいと携帯を放って、今度は新一が蘭に答を求めて詰め寄る。
「・・・・・・・そ、それは・・・」
「・・・まさかコナンなんて言わねーよな?」
ちょっと拗ねた様な表情に気付いて、蘭は思わずそれを口に出していた。
「もしかして新一、妬いてるの・・・?」
「!!・・・ばっ!バーロ!!妬いてるわけねーじゃねーかっ!!」
・・・言葉とは裏腹にリトマス試験紙よりも分かりやすいその反応を見せる―・・・そんな新一に、蘭はあの日見せたその笑顔を見せていた。
「・・・・・・・・・・・・・・新一には教えてあげないも〜ん・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この〜・・・・・・!」
久々にじゃれあっこが始まる。
「言えってば!オレとコナンのどっちだよ!?」
「嫌ですよ〜だ!教えてあげないっ!」
「どーしても言わねーんだったら・・・!」
新一のくすぐり攻撃が始まった。
「きゃ・・・やだ、やめてってば、新一っ!!」
二人のはしゃぎ様に、呆れ返った様な溜息が聞こえた。溜息の主は・・・
「コッ・・・コナン!!?い、いい・・・いつからそこにいたんだ!!?」
「・・・・・・・・社会科見学。・・・・・・・あ、プロポーズはもういいよ、先生にちゃんと説明して今のを書くから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今のって・・・・・・・ちょっと待て!!!おいこら、コナンっ!!!?」
血の気の引いた新一は、逃げるコナンの後を追って行った。
「・・・コナンの方が一枚上手ね」
そう呟いて苦笑する蘭を残して―・・・
や、どこをどう間違えてこんならぶらぶになったんでしょうっ(><|||)
木村拓哉さんと工藤静香さんの報道を見てて書き出したんですが・・・うわ(笑)
文中の写真はそのお話とは全く関わりありませんが、この間くぬぎの親友の結婚式がありまして、くぬぎが撮った中の一枚にこういう写真があったんですね(^^;)イメージとしてとりあえず参考にしたまでですけど・・・