写真の中の真実

ふああぁあ・・・

コナンはソファにもたれて豪快にあくびをしていた。

蘭と一緒に新一に忘れ物を届けに来たのだが、今回はちょうど事件か何かで席を外している所だったのだ。
仕方なく、二人はしばらく新一の帰りを待つ事にした。

「お父さんが帰って来たら、一緒に晩御飯食べに行こうね!」
との蘭の言葉に、コナンも嬉しそうにうんと頷く。

コナンはちょくちょく事務所に出入しているため、退屈しない様にと新一が持ち込んでいる推理小説をぱらぱらとめくっていた。
そのタイトルは一端にホームズだったが、子どもでも読めるように振り仮名が打ってあるものだった。
そんなコナンを横目に、蘭は事務所の中を懐かしそうに眺めて回っている。

「おかあさん、嬉しそうだね・・・」
「うん・・・懐かしくって・・・。ここにコナンと一緒にいると、高校生の頃に戻った様な・・・変な感じね」

嬉しそうに・・・でも恥ずかしそうに話す蘭に、コナンは興味を持ったらしく、読みかけの推理小説をテーブルに伏せて、身を乗り出した。

「ねえ、おかあさん・・・おとうさんって小さい頃僕そっくりだった?」

「・・・・・・・写真あるわよ?見てみる?」
蘭は、すっと戸棚からアルバムを出して、コナンの前で広げた。

「・・・・ほら、これがおとうさん・・・・・・」
蘭の指の先には、幼い新一の姿があった。

「あれ・・・・・?でもメガネしてないよ?」

幼いコナンには、メガネをしている姿が焼き付いていたらしい。

きょとんと不思議そうに写真を眺めている。

「色々事情があったのよ・・・」
言葉と共にページをめくる。
蘭の姿も新一の姿も、めくる度に少しずつ成長していく。
コナンは興味深そうにそれを眺めていた。

「・・・・・・・・・・・・・あれっ?」

コナンのアルバムをめくる手が止まった。
「これ・・・・・・・・・おとうさん?」
それは、コナンにとって見覚えのある、メガネをかけた新一の・・・江戸川コナンと名乗っていた新一の姿だった。
「・・・・・・・・この隣の人・・・って」
「あ、それは・・・おかあさんなの」
「だって・・・・・・・・・・おかあさんは大きいのに・・・おとうさんは僕くらいだよ!?」
蘭は、自分が思っていたよりコナンの理解が進んでいた事に驚いた。

「・・・・・・・・・・・・・色々事情があってね、おとうさん、この頃とっても危ない目に遭ってたの・・・。」
大きく見開かれたコナンの両目に、自分が映っているのを見て、蘭はふっと微笑んだ。

「それなのにね、姿を変えて・・・おかあさんが危ない目に遭わない様に、いつも命懸けで守ってくれてたの・・・。これはその頃の大切な写真なの」
コナンは再び写真に目を落とした。
「おかあさんは・・・・・・そんな風におとうさんに守ってもらえて嬉しかった?」
「・・・・・・・・・・」
蘭は、コナンの問に、複雑な微笑みを見せ、おとうさんには内緒よ?と前置きしてから、話し始めた。

「もちろん嬉しかったけど、・・・でも嬉しくなかったわね」
「どうして!?」
「・・・・・・ホントはね、おとうさんはずっと隠してたんだけど、おかあさん知ってたのよ・・・。目の前にいる小さな男の子がおとうさんだって事・・・」
「・・・内緒にしてたの?おとうさん・・・」
「そうなの」
「じゃどうしておかあさんはおとうさんだって分かったの?」
「・・・・・・・・・・・分かるわよ、だっておかあさんはおとうさんの事、おとうさんに負けない位大好きだったんだから!」
目の前にいるコナンに、名前を偽っていつも側にいた・・・自分を守ってくれた新一の姿が重なる。
「・・・・・・・・・・ねえ、今も変わらずにおかあさんはおとうさんの事好き?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん、あの頃と今とは全然違うわ・・・・・・・・・・・」
コナンは不安そうに蘭に視線を投げかけた。
「・・・・・あの頃よりも、ずっと・・・ず〜っとおとうさんの事大好きよ・・・?」

「は・・・ははは・・・」
最初は冷たかったドアノブも、今では新一の体温と全く同じくらいの温もりを保っている。

まだしばらく事務所の中には入れそうになかった―・・・。

コナン#案内小説室トップ