鑑識日誌

「トメさん!」コナンが嬉しそうに鑑識のおじさんに声を掛ける。
「おお、ちいさな探偵君か・・・。どうだい、何か見つかったかい?」
トメさんにとっては孫位の年齢の子どもなのだが、トメさんは実に面倒見良くコナンの言葉に耳を傾けてくれる。
「おとーさんがね、トメさんに聞いてきてくれって。あのね・・・」
コナンの少し高いトーンの声にくすぐったさを覚えながらも、トメさんは内緒話に応じてくれた。

「・・・ああ、それなら・・・」
トメさんは鑑識の結果を、コナンに伝える。その表情はあくまで穏やかだ。
「わかった!おとーさんに伝えてくるね!」
小さな後ろ姿を見送りながら、トメさんは一人の少年を思い出していた。


コナンと初めて会ったのは、同じようにその少年の事を思い出していた時だった。

人懐っこい笑みを浮かべて「トメさん、トメさん!」と尋ねてくれる少年は、突然現場に来なくなった。

毛利探偵が来れば、必ずと言っていいほど現場に来ていたのに・・・。

毛利探偵に聞いてみた事はあったが、寂しそうに笑うだけで、答えてはくれなかった。

何かあったのだろうか・・・

自分の言葉を期待してくれる子どもが再び彼の前に姿をあらわしてくれる事を待ちわびながら、トメさんは毎日の仕事をこなしていっていた。

そんな時だった。

コナンが、「おじさん!」と声を掛けてきたのは・・・。

待ちわびていた少年の姿そのもののコナンに、トメさんは一瞬時が溯ったのかと思った。
その少年は今では高校生くらいにはなっているはずなのだから・・・。

「あのね、おとーさんがね、おじさんに聞いてきてくれって!・・・あのね」
子どものお使い・・・といった様子でたどたどしく質問をするコナンを見て、トメさんは錯覚だったかと一瞬喜んだ自分を嘲笑した。
年かな、もう・・・。
「で?小林少年、他に聞きたい事は・・・?」
「あ、うん、それだけ・・・!ありがと!」
ふっと微笑みながら、コナンの後ろ姿を見送っていくと、その先には若い探偵の姿が見えた。
懐かしそうに微笑みながら、そっと会釈する探偵にトメさんも会釈を返した。


「知ってるんですか!?」
その様子を見ていた若い鑑識がトメさんに声を掛けた。
「あの子のお父さんは平成のシャーロックホームズって言われてる名探偵なんですよ!・・・トメさんの知り合いでしたら、サイン貰って欲しいんですけど」
はしゃぐ若い鑑識に、トメさんは懐かしい記憶を辿るように彼らを眺めていた。
「いや・・・人違いだな。・・・だけど・・・昔っから知ってるような感じはある。・・・不思議なもんだな。」

コナンと出会ってから、ふたたびトメさんは明るく笑うようになった・・・。

UP00.6.10

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コナン・・・からは少し離れてしまいましたが、トメさんとのやりとりを書いてみたくて出来たシロモノ。
あ、文中のコナンは江戸川コナンではなくて、工藤コナンですよ?(ややこしい!コナン短編集をご覧ください)作中では江戸川コナンの方は「少年」で統一して分かりやすくしようとしたんですが・・・。