コナン

コナン君にはもう会えないの・・・?

蘭が悲しそうに呟いたあの時から、何年もの月日が流れていた。

その時の表情を思い浮かべるたび、新一の心は痛んだ・・・。

新一でありたい。新一として蘭に会いたい・・・そればかり願っていたあの頃、コナンとして蘭に素直な言葉を掛けてやれたあの頃・・・。
コナンの姿だったら・・・
こんな風に自分が思うようになる時が来るとは思わなかった・・・。

新一は深い溜め息を吐くと、心ここにあらずで捜査の資料をめくった。

こんな事で頭がいっぱいになるのは、昨夜の蘭とのケンカのせいだろう・・・。

原因は、蘭が最近体調が悪いらしく、ボーッとしている事が多くて、熱を測ってやろうとした時にちょっとしたケンカになったのだ。ささいな事だったのだが、素直に言葉が出てこなくて、かえって怒らせてしまったのである。

「・・・コナンだったら、蘭ねーちゃんが心配なんだとか、蘭ねーちゃんにはいつも笑ってて欲しいなんて言えたんだろうな・・・」
くそ・・・
悔やまれるのは自分の素直じゃない言葉だった・・・。

新一は、蘭の置き忘れていった指輪を手の中で弄ぶ。

蘭のぬくもりはもう既に失われていた。

冷たい指輪に、自分の薬指から抜き取った指輪を重ねる。
小さな蘭の指輪に、それより少し大きな自分の指輪がすっぽりと入る。

指輪の方が素直・・・だよな・・・

でも・・・

あの蘭の捨てゼリフはむっときたのだ。

「・・・コナン君だったら、そんな事言わないわよ・・・!コナン君はもっと優しいもん!・・・新一のばか!」

新一だって、コナンの姿でなくても、蘭に優しく接したいのである。それに、新一=コナンだからこそ、許せないセリフでもあった。
蘭の心の中での位置があやふやになってきたような気がして、不安になった。・・・その思いを皮肉として蘭にぶつけてしまったのである。
「コナンが優しい・・・?そんなの俺が一番良く知ってるよ・・・」
指輪がぶつかりあってカツンと音を立てる。

「・・・コナンが恋敵かよ・・・」

分かっていた。

素直になればいいのだ。

コナンだって、新一の人格の一つなのである。

新一は手の中の二つの指輪を握り締めるとファイルを閉じた。

新一が椅子に大きくもたれかかると、書斎の入り口が逆さに映った・・・。
と、同時に蘭の姿も・・・

「・・・・・・蘭・・・」
「た・・・ただいま・・・」

頬を紅潮させて、蘭は話し始める。
「あ、あの・・・ね・・・病院・・・行ってきたの・・・。心配かけてごめんね・・・?」

蘭が先に新一の言葉に素直に従った事に、まず驚いた。新一も、最近では驚く程、素直な言葉が出てきた。

「・・・やっぱり体調悪かったのか・・・?」
「う・・・うん・・・」
蘭は決まり悪そうにたたずんでいる。
新一は、椅子から立ち上がると蘭の所へと歩み寄った。

「あ、あの・・・さ・・・、ごめん・・・素直に言えなくて・・・。蘭が・・・心配だって・・・」
「ううん、わたしこそ・・・」

久しぶりに蘭に優しい言葉をかけた気がした。耳まで赤くなって、新一は蘭をそっと抱きしめる。

「・・・風邪でもこじらすと大変なんだぜ・・・?・・・蘭にはいつも・・・俺の側で笑ってて欲しいんだ・・・」
「・・・・・・」

新一の言葉に、蘭は大粒の涙をぽろぽろとこぼした。

慌てたのは新一だ。

「ど・・・どうしたんだ!?・・・・・・まさか、なんか悪い病気だったとか・・・」
蘭は大粒の涙をこぼしながら、必死に頭を振る。
「・・・そうなのか!?」
「ちが・・・」
「・・・ま、まさか・・・ガン・・・とか・・・」
新一は真っ青になって必死に問い詰める。蘭の両腕をつかむ手に、無意識に力が入る。
「・・・痛いよ、新一・・・・・・!」
蘭の声も届かないといった様子で、新一は蘭を問いただす。
「新一・・・!」


「・・・・・・!」


蘭の唇に覆われて、新一の言葉が止まった・・・。
と同時に思考回路も・・・


「・・・・・・・・・っ・・・」


真っ赤になって蘭が唇を離す。

新一の思考回路は止まったままだ。

「・・・・・・・・・蘭・・・?」


「あ・・・あのね、落ち着いて聞いて欲しいの・・・」

真っ白だった新一の頭に、やっぱり悪い病気だといった不安が、水にたらしたインクのように広がっていく。

「わたしが今日行った病院ね、・・・産婦人科なの・・・」
「え・・・!?」

新一の頭が再び真っ白になる。

「・・・・・・・・・・・・・・・微熱がずっと続いてたのはそのせいなの・・・」
真っ赤になって俯く蘭を、新一は震える手でもう一度抱きしめた。
「・・・・・・パパになるのよ・・・新一・・・」
「・・・ほんとに・・・?」
「うん・・・」
恥ずかしそうに、だが嬉しそうに蘭はそう言った。

「やった・・・!!やった!!!蘭!サンキュ!!」

新一は喜びを腕に込めて、強く蘭を抱きしめた。
「や・・・痛いっ、痛いよ新一!」
「あ、悪ぃ・・・」
慌てて新一はほんの少し身体を離す・・・。

蘭の身体の中の新しい命・・・はこの辺りだろうか・・・。

優しい眼差しで見つめているのに気付いていないのは本人だけだった。

「・・・蘭・・・・・・」

今度は新一から優しく唇を重ねた。


二人は書斎で、再び指輪の交換をした。

新しい命の誕生を祝いつつ・・・

UP 00.4.21.

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どっひゃ〜!!あるネタを書こうと思って書き始めたんですが、そのネタになる前に前振りがいるよな・・・と思い直して書き上げたシロモノ・・・。な、なんでこんなラブラブものになっちゃったのだろう・・・煤i−−;)
とあるHPの小説を見ていて、「あ、くぬぎとおんなじ発想してる人がいる・・・」と思い、あまりの嬉しさに書く気になったんですが、前振りが逆コナンよりピンクバージョンになってしまった・・・(汗)こ・・・、これは大変だ・・・(−−|||)くぬぎ、変な所でうわぁ!なトラウマが増えてくよな気がします(笑)
こいつも一日で書き上げたのでぼろぼろかも・・・(^^;)