一面のひまわりに。
最後にぷすんと音を立てて、ビートルが止まった。
それまでは順調だったのに・・・
「どうしたんでしょう・・・?」
光彦の言葉に皆怪訝な表情で顔を見合わせる。
「おかしいのぅ・・・」
そう言いながら阿笠博士は車を降りた。
開け放たれた車のトランクからは煙が立ち昇っていて・・・
「・・・しばらく足止めされそうね」
灰原がそう呟いた。
「ねえ、そしたら土手の下のひまわり、見に行ってきていい?」
「あ、良いですね、それ!・・・すぐ戻れる所にいますから、行っても良いですか?」
歩美と光彦がそう尋ねると、博士は一緒になって車のエンジンを覗き込んでいるおれをちらっと見た。
「・・・分かったよ。・・・・・・おれも行けばいーんだろ?」
あいつらだけで行かせて、何かあってからじゃ困る。
渋々歩きはじめると、ひまわりの咲く土手に下りた二人が大声で呼んだ。
「コナンくーん、遅いよ〜!」
「置いてっちゃいますよ!」
やれやれ・・・
薬の所為で小さくなるなんて羽目にならなけりゃ、コイツらと知り合う事も無かったんだろうけどよ
止まったビートルが、工藤新一としての姿を止められた自分にほんの少し重なる。
周りを取り囲むひまわりも、新一の姿でなら、これほど見上げるのに苦労するなんて事は無かっただろう。
丁度背丈はおれか・・・おれよりちょっと高いくらいだな
そう思うと、ひまわりにクラスメートの姿が重なる。
今アイツらに会うと・・・こんな感じなのか・・・
真っ直ぐに伸びたひまわりは、下の方にいるおれになんて気付くはずもなく・・・皆同じ様に空を見上げている。
別に悲しくは無かった。
ほんの少し、寂しかっただけで。
「コナン君、何考えてるんですか?」
ひまわりの中から光彦がひょいと顔を出した。
「・・・いや、・・・・・・ビートルが止まらなけりゃこんな事にならなかったのになと」
自分をビートルに置き換えながら、苦笑して返すその言葉に、光彦がにこっと笑った。
「ですよね!止まらなければこんな素敵な光景には出会えなかったかもしれません!」
底抜けに明るい笑顔を見せつけられて、戸惑っていると、「車が故障しなければ、ボク達はこのひまわりの近くになんて来れなかったでしょうしね。」と、そう付け加えた。
まあ、ビートルの故障くらいなら、すぐに直せるからな・・・
ビートルの姿に自分を重ねた事が少しおかしく思えた。
おれはいつ戻れるのか・・・戻れるかどうかすらわかんないんだしな
そう苦笑すると、光彦が不思議そうに覗き込んでいて
「・・・前から思ってはいたんですが、コナン君て時々泣きそうな顔で笑ってますよね・・・何かボクで力になれる事があれば何でも言って下さいよ?ボク達は探偵団の仲間・・・ともだちなんですから!」
「ともだ・・・ち」
「ともだちの力になりたいと思うのは当然の事ですしね!」
そう言ってにっと笑った―・・・
「なあ・・・光彦・・・・・・・もし・・・もしもさ、おれが・・・おれじゃなかったらどうする?」
「はあ?何を言ってるんですか、コナン君はコナン君でしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・そうじゃなくて・・・もし・・・・・・・・そう、宇宙人だとしたら」
一瞬間が空いて
光彦はぶっと豪快に吹き出した。
「なんですか、それえ〜」
いいんだ、分かってる、分かってるって
宇宙人なんて例えを出したおれが悪いんだ・・・
深く溜息を吐いたおれに気がついて、光彦が真顔になった。
「あ・・・あれ?もしかして真剣な話だったんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・真剣にとられても困るんだけどよ・・・」
そうですねぇと言いながら、光彦は両手を空に向かって突き出した。
ひまわりの隙間から見える空に。
「もし、そうだったとしたら・・・宇宙船に乗せて欲しいですね」
予想しなかった答えに今度はこっちが面食らった。
「このひまわりも、もっと高い所から見たらきっともっと綺麗だと思うんですよ」
「・・・・・・やっぱすげーや、オメ―・・・」
「は?何がですか?」
そう言ってきょとんとする・・・今はおれより背が高いコイツに
元の姿に戻ったら
肩車でもして
きっと、それはほんの少しだけれど―・・・空に近づけて
ひまわりを見せてやりたい
そう思った。
あとがき
はい、2001年のカレンダー、7、8月のイラストを元にしたものでっすvvv
・・・それにしてもくぬぎんとこの光彦君て、オアシス的存在(ぶっ)
哀ちゃんにも「月」で同じよーな事してますしねえ(^^;)
・・・・・・・・光彦君、こっそりお気に入りなんですよ^^;(←将来有望と言い切る人(笑))