電話の向こう側


久しぶりに電話をかける。


自分と並び称される、探偵としての存在を認められる相手。

その相手と話をしたくて。


3、4回・・・

・・・おっさんはそばにおらへんのやな・・・

6、7回・・・

工藤のねーちゃんは晩飯作っとる時間やし、手が離せへんのやろな

10回・・・


「はい、お待たせしました、毛利探偵事務所です」

精一杯子どもらしく、舌が回りきらない演技の上のその言葉。

この瞬間はいつも、こっちから電話をかける様になった頃を思い出す。

その声にその舌足らずな話し方がやけに似合っているから、中身が高校2年の男だと知っている身としては、吹き出したくなる衝動に駆られた。

それでも慣れてきた最近は、その演技も留守番電話の録音の声と同じ位に思える様になってきたから不思議である。


「おう、工藤!元気にしとったか!?」

「あんだ、オメーか・・・」

「今大丈夫か?」
「ああ、蘭なら夕飯の支度してるし、おっちゃんは麻雀でいねーからな。側には誰もいねーよ」

相手が自分と分かった瞬間の手のひらを返すかの様な、不機嫌そうなこの声。

これが他の人間なら、どんな状況でも機嫌よく応対するのだろう。

愛想もくそもない

そう腹を立てるより先に、嬉しさがこみあげる―・・・

歯に衣着せない話し振りに嬉しくなるのは別にヘンな趣味があるからではない。

本当の姿を見せていてくれるからなのである。

苛立ちも、焦りも、不機嫌も―・・・


「なんや、つれない奴っちゃなァ!」
「オメーにつられる趣味はねーよ」

さくさくと刺さる素っ気無い言葉。

「何か用か?」
「別に何もあらへん。最近どないしてんのかと思ただけや」
「あっそ。じゃあな」

イライラしているらしい。

いつも以上に口調がささくれだっている。

「まあまあ、そないに慌てて切らへんでもええやろ?この間おもろい事件に出くわしたんや」
「おもしろい事件・・・?」

その言葉に途端に興味を示すのが見てとれる。

しばらく事件の話をした後、電話の相手の機嫌は直っていて。

「またな」の言葉に

「ああ」の声の後に、「サンキュ」とさほど不機嫌でもない、小さな声で呟いた。




携帯のディスプレイを見ると、笑顔の自分が映りこんでいた。


電話の相手は今頃どんな表情をしているのだろう。

沈み行く夕陽に染められかけ、淡く色づいた空を見上げながら、受話器の向こうの相手を想った。











7月14日の日記より、SSです(^^;)
別館にアップするつもりは無かったのですが、許容範囲内ならアップしてもいいかと思い、くぬぎなりに「マシ」だと思えるものをちょこちょこ拾ってます。


・・・このペースだと日記サイトになってしまいかねません(^^;)(←1週間の内に2本SSが入っている人)


新一にーちゃんが、新一にーちゃんとしていられる

コナン君として生活している今の状況で、それは難しいんですよね。

正体ばれかねないですし。

もちろん、正体を知っている相手は、他にもいますよね。

阿笠博士、両親、哀ちゃん・・・

その中でもへーちゃんは良い意味で、「さらけだす」事が出来る上に同じ視点を共有できるんですよね

くぬぎには双子のよーに育った相手がいます(^^)


・・・おとこのゆうじょー。とは形が違うかもしれないですが

彼女に会うと、自分を見失っていたり、大切な何かを思い出したり


ゆうじょーなんて、その相手によって形や色が違うもので。

例えるなら、「光る泥団子」でしょうか?

丹念に丹念に

時間をかけつつ大切にしつつ、手間をかけつつ磨き上げて


それはとてつもない宝物


良い形に作っていきたいなーと思うんです(^▼^)